○○系女子の扱いには苦労する

黄緑 碧

第1章6話―1「お見通し」

 昼はなんとかバレずに済んだ。
 つか、なんであんなに見張られなきゃいけないんだよ。
 ま、まさか諒の奴ホントに円芭のこと好きなのか?
 だとしたら、何がなんでも嫌いもしくは普通になってもらわないと。
 他意はないけど。

 今日は月曜日で部活が無い曜日なので、帰りのホームルームの後俺は駐輪場でスマホを片手に自転車に股がって待機している。
 今朝円芭と共に登校したから帰りも一緒に下校するのかと思って待っていたわけだが、十分以上経っても連絡がこない。
 これは、来ない説濃厚そうだな。

 次々走り去っていく生徒を見ながらため息をつく。
 さすがに、あの円芭じゃ帰りも一緒ってことはないか。
 期待した自分が恥ずかしい。
 スマホをしまい、ペダルに足を乗せる。

「あ、祐君今帰るところ?」

 まさにペダルに力を込めようとしたところで、妃奈子の声が後方から聞こえてきた。
 お前じゃないよ、来てほしかったのは……。
 世の中うまくいかないな。

「妃奈子もか?」
「うん。今からデパート行こうよ」
「いいぞ」

 というわけで、もどかしさを胸に抱きつつ妃奈子と自転車を走らせデパート。
 いつものように……て、最近来すぎじゃね?
 確か一ヶ月も感覚空いてないと思う。

「最近このデパート来すぎだよね、あたし達」

 どうやら兄妹仲良く同じことを考えていたらしい。
 妃奈子が苦笑いを浮かべている。

「そうだな」
「記念になにか買おうよ」
「遠慮しとく」

 こいつの将来の彼氏は大変そうだな。
 記念を細かく設けて、少しでも忘れたらキレるとかありそうだし。
 兄妹で助かったわ。

「なに買おうか、祐君」
「お、おい。人の話聞いてたかっ」

 兄妹でもダメだった!
 変なところお袋に似ないでほしい。
 お袋も今の妃奈子のような強要をすることがある。
 変な話宮城先輩のような性格の妹が良かったな……。

「聞く気ないでーす」
「堂々と言うなよっ」

 俺の腕を掴み、先を歩く妃奈子の背中にツッコミを入れる。
 聞く耳を持たないことを宣言するか?

「折角の記念だし、お互いに選んで買うのはどう?」
「ホントに話聞いてくんないんですね……」
「そんなのどうでもいいから。やる? やらない?」
「中間の選択肢をください。選択肢“どちらでもよい”を」
「二択で」
「……分かった。やるよっ」

 拒否権なしかよ。
 つか、二択どころか一択じゃねぇか!

「さすが祐君っ」

 なにが、「さすが」だよ。
 貴様が言わしたんだろうが。
 ホントこういうところ直した方がいいと思う。

「じゃあ、今から十五分で決めてね」
「そんな短くて良いのか?」
「兄妹に渡すんだから、ざっと選んでいいよ」
「選ぶなら時間かけたいんだけど」
「大丈夫。祐君が選んでくれたものならなんでも良いから」
「なんでもいいが一番困るんだけど」

 いつもなんでもいいは無しって言ってるわりに、自分は言うんだからな……。
 というか、十五分じゃ決めきれないけど。

「じゃあ、アクセサリーがいい。可愛いやつ」
「分かった」

 ヤバい、要望聞いたら余計難しくなったっ。
 そうだ!
 ここは少し強引にいこう。

 俺は、そう決めて妃奈子の服を掴む。
 一緒に見てしまえばこっちのもんよ!

「な、なに?」
「一緒に選ぼうぜ」
「それじゃ、意味ないじゃん」
「好きなやつ買ってあげるから」
「しょうがないな。高いの買お」
「こらこらっ」
「じょうだんだよ。あと、離してくれない?」
「ダメだ。どうせ逃げるだろ」
「……にげないよ」 
「いや、そんな棒読みで言われても信じられない」
「もう……。ホントのホントにホントで逃げないから」

 ため息をつき、俺をしっかり見据えてくる妃奈子。
 これは、ふざけてないときの瞳だ。

「分かっ――スタッ!「えっ……」

 手を離した瞬間の出来事だった。
 走り出した妃奈子を呆然と見つめる。
 裏切られたわ……。

「いやいや、追いかけてこようかっ」

 と思ったら、戻ってきた。
 しかも、眉にシワを寄せている。
 周りの視線が痛い。
 端から見たら、俺達変な二人組だよな。

「あんな瞬間的に逃げられたらビックリするって」
「……はぁ。もういいよ。とにかく可愛いの買って」
「呆れないでくれよ。ちょっと高いの買ってやるから」
「なら、許すけどさ」

 しまった。
 自分でハードル上げちゃったよ。
 ここは少し、元から金額の上限が低いお店を狙おう。 

 右手側には、宝石店・高級バック専門店等。
 左手側には、雑貨店・洋服店等。

 迷わず二択だな。
 そう左手側!
 それでいてあまり目立たない物を買える店と言ったら一つ。

「ここにしよ」

 というわけで、妃奈子に確認を取らず雑貨店に立ち入ることにした。

「やっぱりそうきたか」
「どういう意味だ」
「いや、周りのお店からしてここに入るだろうなって思ってたの」

 お見通しだった!

「高校生の金事情じゃ限度があるんだよ」
「大丈夫。全然なんでもいいから」

 何か言い方が逆に取れるんだよな。
 高いの買ってって言ってる風に聞こえる。

「じゃあ、選んでくるねっ」
「あ、ああ」

 そう言って妃奈子が離れていった。
 こんなことなら駐輪場で円芭のこと待たなければ良かった。
 そうすればこんなめんどくさいことしないで済んだのに。

「なにかお探しですか?」

 後悔していると、店員さんが声をかけてきた。
 どうやら怪しい人物と思われたらしい。
 まぁ、確かに何も商品を手に取らずぼけーとしていたら、普通声かけるだろう。

「はい」
「どういったシーンにお渡しですか?」
「あ、大丈夫です。自分で選びます」
「そうですか」
「わざわざありがとうございます」
「いえ、お構い無く」

 一礼して去っていく店員さん。
 ふぅ、なんとか変な誤解は解けたと見て大丈夫そうだ。
 完全にあの店員さん誰かに渡すと思ってるな。
 まぁ、あってるんだけどさ。
 妃奈子に渡すから。

 うーん、にしてもどれにしたらいいものか。
 正直アドバイスを受けたかったが、自分で選んだ方がいい気がしたので教えを受けなかった。
 というのも、俺の行動を影から妃奈子が見てるような感じがするからである。
 心なしかどこからか視線を感じる。

「「……」」

 振り向いてみる。

「あっ……」
「凄いね、祐。よく気づいたね」
「いやいやいや、普通気づくでしょ」
「祐君は普通じゃないよ。そういうところ鈍いし」

 ひどい言われようである。
 それを聞いていた店員さんが、気を利かせて去っていった。

「そんなわけだから一緒に選ぼ?」
「別に構わないぞ」
「最初から一緒に行動しておけば良かった」
「自分から別々に動くって言ったんだろ」
「祐君がそこまで決めれない人だとは思わなかったのっ」
「す、すまん」

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