○○系女子の扱いには苦労する

黄緑 碧

4話―4「コーヒータイム」

 真っ白な布を目に焼きつけ、ゴールデンウィークが終了した。
 ゴールデンウィーク明け二日目。
 宮城先輩がメールを送ってきた。

 どうも買い物に付き合ってほしいらしい。
 何か最近買い物に付き合わされるの多いな。
 指定された待ち合わせ場所に帰りのホームルームのあと向かう。
 一体今度は何を選ばされるのだろうか。

「ごめ~ん。祐く~ん」
「んっ!?」

 聞き覚えのある人物に迷惑な声量で呼ばれたので、自転車を止めて振り返る。
 やっぱり思った通り宮城先輩だった。

「……はぁ……はぁ……」
「……」

 大声で人の名前言うなと注意したいところだが、高田先輩ほどポジティブな人ではない。
 今日のところは、目をつぶっておこう。
 思い詰められても困るからな。

「ホームルームが長引いちゃってさ。先に行って待ってようかと思ってたんだけど」
「俺の方が後輩なんですから。先輩が先に待ってることないですよ」
「優しいね、祐君は」
「普通ですよ」
「そんなことないっ」
「あ、ありがとうございます?」

 何これ、褒められてんの?
 怒られてんの?
 流れで礼は言ったけどさ。

「うん! じゃあ、行こう」
「は、はい」

 怒っていなかったらしい。
 腕時計をチラ見し、宮城先輩が時間がヤバくなったのか慌てた様子で自転車にまたがり発車した。
 俺もそのあとに続く。

「と、ところで、どこに行くんですか?」
「ホームセンター」
「え、ここから二十分くらいかかりますけどっ」
「じゃあ、近くにしよ」

 俺の指摘を受け、急遽予定を変更して宮城先輩は最寄りのデパートに舵を切った。
 恐らくコピー用紙の値段がホームセンターの方がデパートより安かったのだろうが、わざわざコピー用紙を買うためだけに二十分以上の長旅をするのはおかしい。
 あと、それ以前にこのあと部活あるし。

「にしても、何でコピー用紙先輩が買うことになってるんですか?」

 普通こういった消耗品などは経費で落とすと思うんだけど。
 もしくは、顧問の実費とか。
 まぁ、前者の方が現実的だな。

「大丈夫だよ、祐君。領収書切るから」
「そ、そうなんですか」
「うんっ」

 本人がこの様子なので、こちらが気にすることはないのだろうけど。
 つか、あの顧問が生徒にお金を払わせるとは思わなかった。

「行くよ、祐君」
「は、はい」

 毎度お馴染みになりつつあるデパートに到着して、早々宮城先輩が駆け足で中に入る。
 な、何でこんなにはしゃいでるんだ。
 いつもと違う宮城先輩に困惑しながら先輩のあとに続く。
 自動ドアをくぐり店内。
 一階の文房具屋でコピー用紙を五個買った。

「重いです……」

 コピー用紙ってこんな重かったっけ?

「ごめんね。お礼に喫茶店で奢るから」
「いいですよ、そんな」
「ダメッ。奢りますっ」
「……はい」

 どんだけ奢りたいんだよ。
 奢りの強要なんて初めてされたわ。
 宮城先輩に引っ張られ、やって来た喫茶店が超高そうなんですけどっ。
 店の中を覗いてみたが、シャンデリアがあり全体的に店が黒っぽい。

「た、高そうなんですけどっ」
「大丈夫。オッケーもらってるから」

 カランコロン。
 そう言い終えるよりも先に宮城先輩は喫茶店のドアを開けてしまった。
 いかにも喫茶店ぽいドアの音が何とも言えない。

「それにしたって大丈夫ですか?」
「大丈夫。心配しすぎだよ祐君」
「すみません……」

 マジなトーンをされたので、一回引くことにした。
 にしても、こんな喫茶店が田舎のデパートにあるとは思いもしなかったな。

「とりあえずコーヒー頼もうか」
「そうですね」
「コーヒーがお二つですね?」
「は、はい」

 どうやらこの店員俺らの会話を聞いていたらしい。
 呼んでもいないのにやって来た店員は、注文表らしきものにメモを取りながら店奥へと入っていった。
 ずいぶんこの店の雰囲気と合わない店員だな。

「今日は、ありがとう」
「いえいえ」

 というか、また学校に戻らなきゃいけないから、例を言われるのは早いんですけど。

「私一人だったら、大変だったよ」
「ちょっとこれは重すぎますからね」
「そうなの……」
「お待たせしました。コーヒーお二つです」

 さっきの場違い店員がコーヒーを持ってきた。
 提供するのに時間かかりすぎじゃね?
 注文聞くのが早かったから、てっきりすぐ出てくると思ってたわ。

「ありがとうございます」
「今日はもう時間ないからここでお開きね」
「もうそんな時間ですか?」
「うん、ほら」

 宮城先輩が見せてくれたスマホには、十六時三十分と表記してあった。
 確かに今、学校に戻ってもすぐ帰ることになってしまう時間である。

「でも、これどうやって持っていくんですか?」
「……」

 俺の問いにコップを傾け、固まる宮城先輩。
 どうやら考えていなかったようだ。

「最後まで持っていきますよ」
「ありがとっ」

 こうして俺達は、ゆっくり一息ついた後学校に戻った。

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