○○系女子の扱いには苦労する

黄緑 碧

1話―3「無理な相談」

「……」

 何かさっきから円芭のやつ無言だな。
 スマホを操作しているからか?
 にしても、ホント黙ってると可愛いな。

「この先この学校が持つか不安だな」
「いや、あれじゃ持たんだろ」

 あんな校長が学校なんて運営出来ないだろ。
 この高校も時間の問題かもしれない。

「ん? 何の話?」

 ポテトを摘まんでいたら、前方から声が聞こえてきた。
 そこへ顔をあげると、三六五日見知った人物が首をかしげていた。
 何を隠そうその人物は、俺の妹 練本ねりもと 妃奈子ひなこ
 手にはお盆を持っている。
 たまたま偶然ハンバーガー屋に来たようだ。
 一人で来るとは凄い。
 このような店に俺は一人で入れない。

「妃奈子、腹へったのか」
「うん!」

 大きく頷いて妃奈子は、俺の左側の席に腰を下ろした。
 良いって言ってないんだけど。
 まぁ、ダメじゃないけどさ。
 近いんだよな、座る位置が。
 何でわざわざイスを近づけてくるっ。

「なぁ、もう少し離れられないか?」
「無理」

 そう端的に短く答え妃奈子は、ポテトを口にした。
 正直端から見れば、一個違いの兄妹が密着しそうなほどの至近距離に座っていてもカップルかな? というくらいで、気にも止めないと思う。
 何せ周りには俺らが兄妹だということはバレていないわけだし。

「……」

 って、円芭!
 そっぽ向いてポテト食べてないで、お前からも注意してくれ。
 そのように念を円芭に送るが、まさか届くわけもなく……。

「塩加減が絶妙だよなっ」
「ホントここの店員さんは神だね」
「他のところは薄味だもんな」
「いや、薄味どころか味しないじゃん」
「それはいい過ぎだろ」

 いくらなんでも味がしないっていうのは賛同できない。
 こいつの舌がおかしいのか俺の舌がおかしくなってるのかは定かではないが。

「いい過ぎじゃないもん。そんなに疑うなら今度一緒に行こう?」
「いや、いいよ。めんどくさい」
「行こう行こうよ~!」

 ぐわんぐわん。
 うわ~! 世界が揺れるっ。
 妃奈子が俺の腕を掴み、揺さぶってきた。

「分かった分かったっ。行くから止めてくれ」
「絶対だよ?」
「絶対行くよ」
「やった!」

 そう言って妃奈子は、手を俺のポテトに――

「ちょっ、お前どさくさに紛れてポテト盗むな」

 さりげなさ過ぎてビックリしたわっ。
 つか、自分のあるのに何で俺の食べるんだよ。
 小さいサイズなんだから止めてほしい。

「盗んでないよ?」

 開き直りやがった。
 どう見ても盗ったじゃないか。

「勝手に食べたろ」
「いやいや、シェアしたの。盗んでない」

 何を言ってるんだ、こいつはっ。
 俺はそんな風に育てた覚えはないぞ……。
 というか、シェアってお互いが合意してないとシェアって言わなくね?

「物は言い様じゃない、それ」
「とか言うお前もどさくさに紛れて俺のポテト取るなよ。ハイエナかっての!」
「……」
「……」
「……」
「……」

 しかも、何かこの女子二人俺を間に挟んでアイコンタクトでバトルしてるしっ。
 俺のポテト、バトルの景品じゃないんですけど。

(なぁ、祐)
(どうした、小声で?)

 バチバチに交錯している二人の静かなる意思を感じながら、こちらへわずかに身を乗り出し小さな声で話しかけてきた諒に応える。

(凄い目立ってるぞ)
(知ってる)

 何を今さら。
 もう大分前から目立ってたわ。
 この際開き直るんだよ。

(どうにかしろよっ)
(それは、無理な相談だ)
(相談なんかしてねぇよ。さっきから俺らの回りだけ誰も座らないんだよっ)
(う~ん、そう言われても)

 確かに諒が言うように、俺達の周りの席には一人も座っていない。
 まぁ、俺も軽く小腹が空いたからと思ってワック寄って隣の席の連中が声を上げない戦いをしていたら近くに座らないだろう。
 何せ旨いものも旨く無くなるからな。
 ……。
 もうめんどくさいからポテト二人にあげちゃおう。

「二人で分ければ?」
「いいの?」

 いいの? ってそうしないともっとアイコンタクトバトル過熱するじゃないかっ。
 俺の提案に確認してくる妃奈子にイライラしながら

「だって欲しいんだろ?」

 というと、

「当たり!」

 笑顔で妃奈子がそう言った。

「べ、別に足らないからとかそんなんじゃないから」
「分かった分かった」
「はい、円芭ちゃんの分」
「ありがとう」
「今日は何てラッキーな日なんだろっ」

 満面の笑みでポテトを食べる妃奈子に微笑ましい気持ちになる。
 とりあえず一件落着か。
 ピリピリした雰囲気は無くなった。
 最初から全部あげてれば良かったわ。
 つか、誰にありがとうって言ってんだよ、円芭。

「ジュースも頂戴、祐君」
「いいぞ」

「「えっ……!?」」

「どうした?」

 妹にジュースも欲しいと言われたので渡したら、なぜか二人が驚きの声を上げた。
 二人の声に周りの客がこちらへ視線を向けている。
 今日一番注目されてる気がするんですけど!

 ……ホント止めてほしい。
 そうでなくても変なやつらっていう印象が強いのに、余計変なマジでヤバいやつらだと思われてしまう。
 いや、もうなっているに違いない。

「どうした、そんな大きな声出して」
「あ、当たり前でしょっ」
「は?」

 皆目検討もつかんな。
 大きな声を上げる理由が分からない。
 兄妹で間接キスなんて気にしないし。
 ……これか?

「か、間接キスのことだよっ」

 やっぱり間接キスのことだった。
 別に兄妹で間接キスしたからって何にもならないんだけどな。
 つか、円芭がご立腹なのは百歩譲って分からなくもないが、何で諒まで怒っているのか。
 ……は!?
 も、もしかしてこいつそういう系の人なのか。

「え~、そのことで怒ってたの」
「そ、そのことって一緒のストロー使うのは衛生上良くないんだよ?」
「衛生面なんて気にしてたらポテトのシェア出来ないはずだけど」
「……ぐっ……」

 唇を噛み、悔しそうな顔をする円芭。
 妃奈子の言葉の中に図星箇所があったらしい。
 確かに、さっき円芭は俺のポテトをかっさらっていった。
 衛生面を気にするならそういったことも出来ないはずだ。

「……帰る」

 これ以上反論できないと踏んだのか、円芭は唇を噛み締め自分で食ったゴミを律儀に捨てて店を出ていった。

「別に帰ることないのにね、祐君」
「いや、多分逆の立場だったら俺も帰るわ」
「そう?」
「俺は、帰らないぞ」

 突然諒が俺達の会話の間に入ってきた。
 一人取り残されていたのが嫌だったのか?

「住吉君には訊いてないよ」
「……」

 妃奈子のストレートな言葉にガクッと頭を垂れ、ジュースを口にする諒。
 そんなに見て分かるほど落ち込むことないだろ。
 フォローしたいがフォロー出来るような言葉が思い付かない。

「祐君あまり炭酸ばかり飲むの良くないよ?」
「今日久しぶりに飲んだんだよ」
「ならいいけど」
「おい、妃奈子。自然な流れで腕を絡めるなっ」
「いいじゃん。減るもんじゃないし」
「そりゃ、物理的には減らないだろうけど……」

 間接的にはもう結構前から何かを失ってる。
 次ここに来るときは、持ち帰りにしよ。
 こんな学生の多いところで兄妹で腕を組んでいたら、どうせその内この町で有名になるだろうし。

「俺も帰るわ」
「ちょ、諒!」

 呼び止めるも時すでに遅し。
 この場の雰囲気に耐えられなくなったか諒が足早に去っていった。
 離れていく諒の背中を見送る。
 頼みの綱は一つもなくなった。
 こんなことなら諒を正面に座らせるんじゃなかった。


 ☆☆☆


 何とか言い訳をして、妹をその気にさせ自宅へ帰還。
 にしても、ツンツン女子も対応に困るが、デレすぎる女子も困る。
 デレるのに場所を選ばないんだもん。

「えへへ~」

 まぁ、今も腕を組まれているんだけど……。
 親が共働きで助かった。
 こんな状況を見られたら間違った認識をされてしまう。

 つか、妃奈子もいい加減ベッタリする年ではない。
 本人は全く気にする素振り見せないし。
 先が思いやられるな……。
 このままだと二十歳越えてもやってきそうだ。

「着替えたいんだけど」
「じゃあ、部屋行こう」
「いや、離れろよ」

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