賢者への軌跡~ゼロの騎士とはもう呼ばせない~(旧題:追放された重装騎士、実は魔力量ゼロの賢者だった~そのゼロは無限大~)
第075話 魔王の行方
デミウルゴス神歴八四六年――七月某日。
静まり返った廊下に、ヒールが織りなす不規則な足音が鳴り響く。
オフェリア――アドヴァンスド四家、パオレッティ家当主――は、急に立ち止まり、ようやく歩みを再開したと思ったら、再び止まるを幾度となく繰り返した。
まるで何か考え事をしているかのように。
パオレッティ家の主城である竜牙城。そこは、飾り気が全く無く荒々しい石造りの城で、その廊下には絨毯等の敷物や調度品の類は皆無だった。
それは、パオレッティ家の先代が倹約家だっただけではなく、竜人族が故にドラゴン形態になることを考慮してのことであった。
廊下の天井高は、一〇メートルあり、その幅は二〇メートルにも及ぶ。
魔導ランプで暖かく照らされたその廊下を、薄っすらと白い肌が透けて見えるレース生地の漆黒のドレス姿のオフェリアが歩いていた。
意匠を凝らした金糸で飾られ、大きく開かれ胸元がやけに強調された色っぽい仕立てで、まるで、「夜の蝶」のような装いだった。
聖女オフィーリアに扮していたときは、純白の祭服で彼女の雪のような白い肌と幼い顔立ちが相まって、儚げで清楚な雰囲気を纏っていたが、漆黒のドレスにその磁器のような純白の肌は、オフェリアの冷徹さを際立たせていた。
アドヴァンスド四家の当主であるオフェリアは、ヒューマンでいうところの侯爵の地位にあたるのだが、その装いは相応しくないようにも思える。
尤も、煌びやかな宝石等のアクセサリーで装飾を施していれば、その地位に相応しく見えなくもないが、数点控えめに身につけられている指輪や首飾りは魔法石が嵌め込まれた魔道具であり、その色がくすんでいるせいで装飾品とは呼び難い。
戦闘を好む魔人は戦闘の邪魔になるといって、過度な装飾品を身に付けたがらない。
その上、戦闘でどうせボロボロになるならと、魔人は露出が多い服装を好む。
その良い例は、オフェリアの数歩後ろをついて歩くクロニカだろう。
彼女は、肩からバスト、背中の露出が多い水色のオフショルビキニ姿で、紺色のパレオを腰に巻いているだけだった。
まるでこれから海水浴に行くような装いで、浜辺ではないこの場所では完全に場違いな恰好であったが、それが魔人の中ではふつうの服装である。
そもそも、力が全ての魔族にとって、着飾ることに何ら意味は無い。
考え事をしながらようやく目的地までやって来て、
「さて、どうしたものかしら……」
と、立ち止まり呟くオフェリア。
ハデス家の誘いに乗るか否か……オフェリアは未だ悩んでいるのだった。
目の前には巨大な白銀の扉が行く手を塞いでおり、オフェリアは視線を上げた。
その扉には、かつて魔人が居た世界での世界大戦の一幕をモチーフに彫刻が施されており、ブラックドラゴンが鉄の塊の箱を踏み潰し、その中の人間を食い殺している場面だった。
その扉は、竜牙城が建立された当時の物で、千年近く経過した今も劣化した様子は見られない。
むしろ、ブラックドラゴンの瞳を模してはめ込まれた魔鉱石が、魔導ランプの光を反射して鈍い紅の輝きを放ち、畏怖の念を感じさせるほどにその扉の存在は圧倒的だった。
その輝きに惹かれるようにオフェリアは、軍議の間の重厚なその扉に描かれた勇ましいドラゴンを見つめる。
その扉の向こうには、一族の主要人物が集まっていることだろう。
当然、その扉に描かれた本人も。
衛士であるリザードマンは、オフェリアの呼吸を間違えないように身体を震わせながら息を呑みタイミングを窺っていたが、オフェリアはそんなことには気付きもせず、俯いて再びあのことへ思いを巡らす。
◆◆◆◆
デミウルゴス神歴八四六年――七月一七日。
死の砂漠谷で勇者パーティーを襲撃したあと、オフェリアは魔王城を目指した。
ワイバーンの背に乗り、半日ほどでその場所に到着したのだが、そこにあるべき魔王城と防壁が跡形も無く消え去っていた。
そこにあったのは、魔王城の周辺に集まった魔人たちが生活のために建てた建物のみで、まるで廃墟のように人影が全くなかった。
「魔王様が討たれた……の?」
オフェリアの質問に答えられる者はいなかった。
その代わり、ワイバーンが一鳴きしただけだった。
様子を調べるために、そのワイバーンと共に魔都の中心部に降り立つ。
「魔都内で戦闘が行われた訳では無いのね」
ワイバーンの背に跨りながら、オフェリアは周囲を観察する。
そこは、色々な職種のギルド建物や庁舎等の主要な建物が集まる場所であった。
この世界では珍しいコンクリートで補強された五、六階の建物が魔王城に正面が来るように綺麗な円を描くように建てられていた。
その建物に破壊痕は無く、魔人や魔獣の死体が散乱していることも無かった。
魔王城があった場所も攻撃を受けた訳ではなく、石畳が敷き詰められた中心部は広々とした空間となっており、魔王城が建っていた場所だけが、整地された広場のようになっていた。
ワイバーンが翼を羽ばたかせたことで起きた風で、そこに土埃が舞う。
千年近くにも渡り魔族の象徴となっていた魔王城が消滅し、共に栄華を極めた魔都は、すっかり往時の面影はない。
魔力反応が無いため、本当に無人なのだろう。
オフェリアは、ワイバーンから降りて自分の足で歩いて調査を開始する。
ただ、あてもなく彷徨うように歩いていたら、オフェリアはいつしか外壁があった場所まで来ていた。
「やはり城壁の外で応戦したようね」
目の前の光景を目にし満足そうに微笑んだが、一転ぴたりと笑い止み、不機嫌そうに眉根を顰めた。
「でも……それにしても少なすぎる……」
そこには、魔獣の骸が半円状に並べられたように折り重なって放置されていたが、その数が数千程度で、魔人のものはなかった。
「やはり、おかしいわね……」
この状況から察するに、城壁に取り付いた魔獣が防衛魔法か何かで殲滅されたのだろう。
しかし、それだけだった。
「ガブリエルの作戦は、大量の魔獣で押し切って魔力を削り、弱ったところを一気に攻め込むものだろう、と魔王様は言っていたわね。でも、それにしては魔獣の死骸が少なすぎるし、それ以前に魔王様が反撃したのなら、こんなもんじゃ済まされる訳ないわ」
オフェリアは、コバルトブルーの双眸を閉じ、こめかみの辺りを両手で揉むようにして、「うーん」と考え込む。
そして白銀の髪をかき上げて、そのまま頭を抱えるようにしてしゃがみ込んでしまった。
野戦を繰り広げた形跡は見られず、魔都に住む魔族や周辺を気にして場所を変えたとも考えられない。
魔都は、魔王城ができたのちに、庇護を求めた魔人や知性の高い魔獣たちが勝手に居座り、農地を開拓してできた魔族の都である。
魔王ドランマルヌスは、「好きにするがいい」と言っただけで、別段そこの住人を気に掛けることはなかった。
魔王城へ続く街道沿いに広がる田園は、魔獣の大軍により踏み荒らされ、かなり酷い状況になっており、気にする以前の問題だった。
そこでオフェリアは、思考の焦点を別のことに当てる。
魔王城周辺には数万の魔族が住み、都市と化していた。
その者たちの殆どはノーヴィス――ヒューマンたちがいうところの下級魔族――であったが、魔王様に固い忠誠を誓っていた。
魔獣相手ならそれだけで戦力は、十分だったはず……
しかし、戦った形跡どころか、その数万の魔族たちの影も形も今は無い。
「生き残りでもいれば話を聞けたんだけど……さしずめ、魔王様が討たれて逃げたといったところかしら?」
立ち上がったオフェリアは、魔獣の死骸を迂回し、街道に沿って歩きはじめた。
住む家が無事であっても、生活の基盤であった農地は荒らされ、死の砂漠谷からほど近い立地のため、ヒューマンたちが攻め込んできたら真っ先に被害を受けるのはこの地だった。
今までであれば、『魔王』がいたため、そんなことを気にすることは無かったが、その頼みの綱であるドランマルヌスの姿どころか魔王城もろとも姿が無かった。
「しかし……どこへ?」
粗方予想が付くものの、やはり魔都の住人たちの行方が気になる。
反旗を翻したのは、ハデス家の当主ガブリエル。
本当にガブリエルがドランマルヌスを討ったのであれば、それを目の当たりにした魔族たちが、ガブリエルを新たな魔王と定め、付き従った可能性は低くない。
推測にすぎないが、強い者こそが正義と考える魔族にとって、その可能性が一番高く、納得のいく理由だった。
ガブリエルは、オフェリアと同じアドヴァンスド魔人であり、トップフォーの一角を担っている強者だ。
何と言っても、ヴァンパイアの特徴である不死身じみたタフネスさと、研ぎ澄まされた頭脳を持ち合せている。
何事にも適当であったドランマルヌスより、余程魔王らしい人物だ。
「大した忠誠心だこと……フフフ」
オフェリアは、ドランマルヌスの力に、ただ恐れて忠誠を誓っていたにすぎない魔族たちを嘲笑う。
決定的な証拠がない中、ここでいくら考えても仕方がないと結論付けたオフェリアは、次の目的地をガブリエルの居城に定めた。
「しかし、面倒だわ……」
一先ず目的地が決まったものの、ガブリエルの領地は、死の砂漠谷にほど近い魔王城から大分離れた魔族領の東の果てにある。
「辺りを調べながら飛んで二日と言ったところかしら」
オフェリアが本気を出せば、一日もあれば十分だった。
それでも、謎ばかりが残り、この状況を飲み込めない彼女は、その途中で魔都の住人を探しだし、魔王城攻防戦の様子を聞き出すつもりだった。
静まり返った廊下に、ヒールが織りなす不規則な足音が鳴り響く。
オフェリア――アドヴァンスド四家、パオレッティ家当主――は、急に立ち止まり、ようやく歩みを再開したと思ったら、再び止まるを幾度となく繰り返した。
まるで何か考え事をしているかのように。
パオレッティ家の主城である竜牙城。そこは、飾り気が全く無く荒々しい石造りの城で、その廊下には絨毯等の敷物や調度品の類は皆無だった。
それは、パオレッティ家の先代が倹約家だっただけではなく、竜人族が故にドラゴン形態になることを考慮してのことであった。
廊下の天井高は、一〇メートルあり、その幅は二〇メートルにも及ぶ。
魔導ランプで暖かく照らされたその廊下を、薄っすらと白い肌が透けて見えるレース生地の漆黒のドレス姿のオフェリアが歩いていた。
意匠を凝らした金糸で飾られ、大きく開かれ胸元がやけに強調された色っぽい仕立てで、まるで、「夜の蝶」のような装いだった。
聖女オフィーリアに扮していたときは、純白の祭服で彼女の雪のような白い肌と幼い顔立ちが相まって、儚げで清楚な雰囲気を纏っていたが、漆黒のドレスにその磁器のような純白の肌は、オフェリアの冷徹さを際立たせていた。
アドヴァンスド四家の当主であるオフェリアは、ヒューマンでいうところの侯爵の地位にあたるのだが、その装いは相応しくないようにも思える。
尤も、煌びやかな宝石等のアクセサリーで装飾を施していれば、その地位に相応しく見えなくもないが、数点控えめに身につけられている指輪や首飾りは魔法石が嵌め込まれた魔道具であり、その色がくすんでいるせいで装飾品とは呼び難い。
戦闘を好む魔人は戦闘の邪魔になるといって、過度な装飾品を身に付けたがらない。
その上、戦闘でどうせボロボロになるならと、魔人は露出が多い服装を好む。
その良い例は、オフェリアの数歩後ろをついて歩くクロニカだろう。
彼女は、肩からバスト、背中の露出が多い水色のオフショルビキニ姿で、紺色のパレオを腰に巻いているだけだった。
まるでこれから海水浴に行くような装いで、浜辺ではないこの場所では完全に場違いな恰好であったが、それが魔人の中ではふつうの服装である。
そもそも、力が全ての魔族にとって、着飾ることに何ら意味は無い。
考え事をしながらようやく目的地までやって来て、
「さて、どうしたものかしら……」
と、立ち止まり呟くオフェリア。
ハデス家の誘いに乗るか否か……オフェリアは未だ悩んでいるのだった。
目の前には巨大な白銀の扉が行く手を塞いでおり、オフェリアは視線を上げた。
その扉には、かつて魔人が居た世界での世界大戦の一幕をモチーフに彫刻が施されており、ブラックドラゴンが鉄の塊の箱を踏み潰し、その中の人間を食い殺している場面だった。
その扉は、竜牙城が建立された当時の物で、千年近く経過した今も劣化した様子は見られない。
むしろ、ブラックドラゴンの瞳を模してはめ込まれた魔鉱石が、魔導ランプの光を反射して鈍い紅の輝きを放ち、畏怖の念を感じさせるほどにその扉の存在は圧倒的だった。
その輝きに惹かれるようにオフェリアは、軍議の間の重厚なその扉に描かれた勇ましいドラゴンを見つめる。
その扉の向こうには、一族の主要人物が集まっていることだろう。
当然、その扉に描かれた本人も。
衛士であるリザードマンは、オフェリアの呼吸を間違えないように身体を震わせながら息を呑みタイミングを窺っていたが、オフェリアはそんなことには気付きもせず、俯いて再びあのことへ思いを巡らす。
◆◆◆◆
デミウルゴス神歴八四六年――七月一七日。
死の砂漠谷で勇者パーティーを襲撃したあと、オフェリアは魔王城を目指した。
ワイバーンの背に乗り、半日ほどでその場所に到着したのだが、そこにあるべき魔王城と防壁が跡形も無く消え去っていた。
そこにあったのは、魔王城の周辺に集まった魔人たちが生活のために建てた建物のみで、まるで廃墟のように人影が全くなかった。
「魔王様が討たれた……の?」
オフェリアの質問に答えられる者はいなかった。
その代わり、ワイバーンが一鳴きしただけだった。
様子を調べるために、そのワイバーンと共に魔都の中心部に降り立つ。
「魔都内で戦闘が行われた訳では無いのね」
ワイバーンの背に跨りながら、オフェリアは周囲を観察する。
そこは、色々な職種のギルド建物や庁舎等の主要な建物が集まる場所であった。
この世界では珍しいコンクリートで補強された五、六階の建物が魔王城に正面が来るように綺麗な円を描くように建てられていた。
その建物に破壊痕は無く、魔人や魔獣の死体が散乱していることも無かった。
魔王城があった場所も攻撃を受けた訳ではなく、石畳が敷き詰められた中心部は広々とした空間となっており、魔王城が建っていた場所だけが、整地された広場のようになっていた。
ワイバーンが翼を羽ばたかせたことで起きた風で、そこに土埃が舞う。
千年近くにも渡り魔族の象徴となっていた魔王城が消滅し、共に栄華を極めた魔都は、すっかり往時の面影はない。
魔力反応が無いため、本当に無人なのだろう。
オフェリアは、ワイバーンから降りて自分の足で歩いて調査を開始する。
ただ、あてもなく彷徨うように歩いていたら、オフェリアはいつしか外壁があった場所まで来ていた。
「やはり城壁の外で応戦したようね」
目の前の光景を目にし満足そうに微笑んだが、一転ぴたりと笑い止み、不機嫌そうに眉根を顰めた。
「でも……それにしても少なすぎる……」
そこには、魔獣の骸が半円状に並べられたように折り重なって放置されていたが、その数が数千程度で、魔人のものはなかった。
「やはり、おかしいわね……」
この状況から察するに、城壁に取り付いた魔獣が防衛魔法か何かで殲滅されたのだろう。
しかし、それだけだった。
「ガブリエルの作戦は、大量の魔獣で押し切って魔力を削り、弱ったところを一気に攻め込むものだろう、と魔王様は言っていたわね。でも、それにしては魔獣の死骸が少なすぎるし、それ以前に魔王様が反撃したのなら、こんなもんじゃ済まされる訳ないわ」
オフェリアは、コバルトブルーの双眸を閉じ、こめかみの辺りを両手で揉むようにして、「うーん」と考え込む。
そして白銀の髪をかき上げて、そのまま頭を抱えるようにしてしゃがみ込んでしまった。
野戦を繰り広げた形跡は見られず、魔都に住む魔族や周辺を気にして場所を変えたとも考えられない。
魔都は、魔王城ができたのちに、庇護を求めた魔人や知性の高い魔獣たちが勝手に居座り、農地を開拓してできた魔族の都である。
魔王ドランマルヌスは、「好きにするがいい」と言っただけで、別段そこの住人を気に掛けることはなかった。
魔王城へ続く街道沿いに広がる田園は、魔獣の大軍により踏み荒らされ、かなり酷い状況になっており、気にする以前の問題だった。
そこでオフェリアは、思考の焦点を別のことに当てる。
魔王城周辺には数万の魔族が住み、都市と化していた。
その者たちの殆どはノーヴィス――ヒューマンたちがいうところの下級魔族――であったが、魔王様に固い忠誠を誓っていた。
魔獣相手ならそれだけで戦力は、十分だったはず……
しかし、戦った形跡どころか、その数万の魔族たちの影も形も今は無い。
「生き残りでもいれば話を聞けたんだけど……さしずめ、魔王様が討たれて逃げたといったところかしら?」
立ち上がったオフェリアは、魔獣の死骸を迂回し、街道に沿って歩きはじめた。
住む家が無事であっても、生活の基盤であった農地は荒らされ、死の砂漠谷からほど近い立地のため、ヒューマンたちが攻め込んできたら真っ先に被害を受けるのはこの地だった。
今までであれば、『魔王』がいたため、そんなことを気にすることは無かったが、その頼みの綱であるドランマルヌスの姿どころか魔王城もろとも姿が無かった。
「しかし……どこへ?」
粗方予想が付くものの、やはり魔都の住人たちの行方が気になる。
反旗を翻したのは、ハデス家の当主ガブリエル。
本当にガブリエルがドランマルヌスを討ったのであれば、それを目の当たりにした魔族たちが、ガブリエルを新たな魔王と定め、付き従った可能性は低くない。
推測にすぎないが、強い者こそが正義と考える魔族にとって、その可能性が一番高く、納得のいく理由だった。
ガブリエルは、オフェリアと同じアドヴァンスド魔人であり、トップフォーの一角を担っている強者だ。
何と言っても、ヴァンパイアの特徴である不死身じみたタフネスさと、研ぎ澄まされた頭脳を持ち合せている。
何事にも適当であったドランマルヌスより、余程魔王らしい人物だ。
「大した忠誠心だこと……フフフ」
オフェリアは、ドランマルヌスの力に、ただ恐れて忠誠を誓っていたにすぎない魔族たちを嘲笑う。
決定的な証拠がない中、ここでいくら考えても仕方がないと結論付けたオフェリアは、次の目的地をガブリエルの居城に定めた。
「しかし、面倒だわ……」
一先ず目的地が決まったものの、ガブリエルの領地は、死の砂漠谷にほど近い魔王城から大分離れた魔族領の東の果てにある。
「辺りを調べながら飛んで二日と言ったところかしら」
オフェリアが本気を出せば、一日もあれば十分だった。
それでも、謎ばかりが残り、この状況を飲み込めない彼女は、その途中で魔都の住人を探しだし、魔王城攻防戦の様子を聞き出すつもりだった。
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