異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

207話お母さん! 母と魔女⑩

少女に会うと突然言いだしたブラック。
俺は後をついて行き、少女に会った廊下まで戻って来た。


「で、どこにいるの~?」


「いや、知らん。向こうから歩いて来て、あっちに行った」


俺は廊下の先を指さす。
壁掛けの燭台に火を付けるというRPG風イベントが少女の出現により達成出来なかったので、廊下の先は薄暗く、先がよく見えなかった。


「ふ~ん」


鼻で息を吐くように適当に返事をしながら、ブラックは廊下に並ぶ木製ドアをおもむろに開けて行く。


「花島は、夢を見た事があるかしら~?」


「急に何だよ」


「雑談よ~。雑談」


「そりゃ、あるよ」


「良いわね~。羨ましいわ~」


「羨ましい? ブラックは夢を見た事がないのか?」


「えぇ。無いわ~。魔力を持つ者は夢を見る事が無いのよ~」


「そうなのか? なんで?」


「私たちは、基本的に人間と見た目が変わらないわ~。でも、根本的な構造はまるで違うのよ~。見た目は似ているけど、全く別の生き物ってことね~。夢を見る事が出来るのは人間の特権なのよ~」


特権ね。
あまり得した事はないけどな。


「ブラックは夢を見たいと思うのか?」


「見れるものなら見てみたいわね~」


ブラックは数千年もの間、魔女として弱肉強食のピラミッドの上位に君臨してきた。
恐らく、人間が考えうる出来事の大半を経験してきたのだろう。
そんな彼女はどんな夢を見たいのだろうか?
単純に興味を持ち、ブラックに質問をしようと口を開くと。


「______痛いよ。暗いよ......」


廊下の先から聞こえる少女のすすり泣く声。
俺とブラックは同時に暗闇の先に視線を向けた。


「......行きましょ~」


「......あ、あぁ」


ブラックの影を踏むように、声のした方向に歩くブラックの後を追った。

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