異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。
第176話お母さん! 異世界の成り立ち
図書館の奥にあるロイスという神様が描かれた扉を開けると、沢山の本が棚に並ぶ空間が広がっていた。
円柱状にくり抜かれた天井はステンドグラスのような色鮮やかなガラスで作られ、天窓のように光を室内に注ぐ役割をしている。
壁に沿うように設けられた本棚には隙間なく本が収まり、30mほど上にある本はどうやって取るのだろうか?
と疑問に思った。
「あれ? そういや、ホワイト達は?」
図書館内部には複数のレプティリアンがおり、中央部に設けられたテーブルや椅子に座り本を読んだり、棚の前に立ち、本を物色している。
死角がないこの空間でレプティリアンよりも大きな二人が見当たらないはずはないのだが......。
「三人は今、下にいるわ」
「下?」
「こっちよ」
すまし顔を見せながら、レプティリアンの脇を通って本棚の前に立つレイス。
本でも読むのか?
いや、それよりもホワイト達の所に連れて行け!
心の中でレイスのマイペースさに文句を言うと、レイスは赤く古ぼけた本を手に取る。
すると、赤い本の脇にあった緑色の本が赤い本があった場所に自動で移動し、その行動を契機にパズルのように移動する沢山の本。
本は機械の力で動かされているのか、ガシャガシャと甲高い金属音を図書館内に響かせる。
「さ、行きましょう」
全ての本が動きを止めると、地下に続く階段のようなものが現れた。
どうやら、この下にホワイト達がいるらしい。
不安を抱きながらもレイスの背中を追った。
◇ ◇ ◇
「では、再来の日は近いのですね!」
「あぁ! これから、レプティリアンの時代が始まる!」
「この日を待ちわびていた!」
薄暗い廊下を下っていくと先にある部屋から複数のレプティリアンの鼻息を荒くした声が聞こえた。
恐らく、男性の声なのか、レプティリアン達は気持ちが高揚しているようだ。
「じゃあ、開けるわね」
「おう」
堅牢な扉の前で足を止め、レイスは扉を開く。
扉の先は大学の教室のようになっており、横長の椅子とテーブルに座る複数のレプティリアン達。
そして、壇上の上に立つホワイトの兄の姿。
ここは一体?
頭の中でクエスチョンマークを浮かべていると、俺を発見したホワイトが横から声を掛けてきた。
「花島、どうしたのその格好?」
「ん? レイスに着せられたんだよ。人間の姿を見られたらマズイって」
「へ、へえ。それはそれで目立つよ」
「だよね。俺だってこんなタイツ身に着けたくないわ」
ホワイトと他愛ない会話をしていると、近くにいたレプティリアン数名に睨まれ、それを見たレイスは「二人とも、こっちに座って」と後ろの方の空いた椅子に座るように促した。
無表情のレプティリアンに怒られるのは怖いし、俺はホワイトと一緒にレイスの座っている椅子の隣に腰掛ける。
「しかし、これは一体何だ? まるで、ホワイトの兄が教師みたいだな」
壇上の上でボソボソとホワイトの兄は何かを喋っているようだが、声が小さく、何を話しているのかサッパリだ。
それを察し、事情を知っているホワイトは兄が喋っている内容をかいつまんで俺に教えてくれた。
「どうやら、ロイス様についてレプティリアン達に講義しているみたい」
「それは何となく分かる。山で見つけたロイス様の痕跡ってやつについて話しているんだろ?」
「うん。そうだね」
「ロイス様の存在が公になったら世界がひっくり返るんだろ? なんか、ホワイトは落ち着いてるな」
「まぁね。ウチのお兄ちゃんの能力でロイス様がいたという事実を知る事は出来た。でも、それを公に実証する事は難しいからねー」
「まぁ、数十万年前の痕跡だしな。裏山を掘れば神様の化石が出て来る訳じゃないしな」
ただ、一つ、妙なのはレプティリアン達はホワイトの兄貴の話を疑いなく前傾姿勢で聞いている事。
こんなにも大勢のレプティリアンがいるのだ。
一人くらいはホワイトの兄貴の話を疑問に持つ者がいても良いはずなのだが......。
疑問を抱きながらも、俺はその後、小一時間ほどのホワイトの兄の講義を黙って聞いた。
◇ ◇ ◇
______レイス家______
ホワイトの兄貴の講義が終わり、俺とホワイト、ホワイトの兄貴はレイスの家に招かれ夕食を一緒に摂る事にした。
テーブルの上には木の実や魚を蒸したような料理が並び、肉類はない。
魚を口にすると、少し泥臭さが残っており、塩などで味付けした形跡はなく、お世辞にも美味しいとは言えない料理だった。
「この魚美味しいね」
お腹が空いていたのか、ホワイトは笑顔で出された料理を頬張る。
「それはこの洞窟の奥にある地底湖で取れたものよ。外の世界にはいない種類なの」
「へー。初めて食べたよ」
ホワイトの美味しそうに食べる様子を見て、レイスもどこか嬉しそうだった。
俺はそんなレイスに聞けなかった質問を幾つか行う。
「レイス達はいつからこの洞窟に住んでいるんだ? あんな立派な建物を作る技術があるんだから、洞窟の外に出ても暮していけるだろう?」
「暮らしているのは数万年前というのは何となくだけど分かっているわ。確かに、洞窟の外でも私達は暮していけるけど、ロイス様が再びこの地に降りた際にお出迎えしなくてはいけないから離れる事は出来ない」
あー。
そういや、図書館に行く前にそんな話してたな。
「離れる事は出来ないか。でも、レイスは離れたい願望はあるんだろ? 俺が旅人と言ったら憧れるって言ってたじゃないか」
「ええ。憧れる事には憧れる。ただ、それは夢物語なの。夢を見るのは悪い事じゃないでしょ?」
レイスは憂いた表情で俺を見やる。
「ああ、悪い事じゃないよ。そういや、バラックは普通に外の世界に出ていたけど、一時的に外出するのは良いのか?」
「ええ。評議会の許可を得ればね。ただ、48時間以内に戻るとか、色々と制限はあるけどね」
「ほう。その制限を破るとどうなる?」
「さあ。破った人を見た事がないから分からないわ」
破った人を見た事がない?
それほど、レプティリアンは信心深いという事か?
セバスの能力”テレパシー”を使い、俺が触れた人物なら心の中を読む事が出来る。
先程から俺はレイスが言った事にウソがないか探っていたが、彼女の心の針は一切ぶれる事なく、真実を口にしている。
念の為、食事をする前にホワイトの兄貴に毒味をさせたが、食事の中に毒物などが入っている痕跡もない。
ここに来た時はレプティリアンという種族を信用していいものかと思ったが、どうやら、俺の杞憂で終わりそうだ。
「そういえば、バラック戻るの遅いね」
ホワイトはデザートの木の実を口に入れながら、バラックの居所をレイスに尋ねる。
「ええ。評議会にあなた達を連れて来た経緯などを説明しているから」
レイスは俺とホワイトに目配せをし。
「俺とホワイトが来たらまずかったのか?」
「うーん。ホワイトさんは先生の妹さんだから良いとして、問題は花島君ね。あなたは人間だもの」
「バラックに聞いたけど、人間はレプティリアンに嫌われているらしいな。過去になんかトラブルでもあったのか?」
「トラブルはないわ。経典に書かれている内容で人間を毛嫌いしているレプティリアンが多いの」
「どういった内容が書かれているんだ?」
「えっとね......」
レイスが内容を俺に教えてくれようとすると、普段はおとなしいホワイトが横から口を挟んできた。
「生物の根源は人間にあるって事が関係する?」
「え、ええ。よく知っているわね」
「私、学生時代に宗教を調べた事があって、少し興味があるの」
ホワイトの目はいつになく輝いており、レイスが説明すると言ってくれたのに、ホワイトは知識をひけらかすように経典の内容を教えてくれた。
「神様______ロイス様はこの世界を作った後に人間を一人作ったの」
「へえー」
俺は適当に相槌をし、ホワイトの高揚した気持ちが収まるのをジッと待つ事にした。
「優しい神様は一人では寂しいだろうと思い、人間をもう一人作った。それが男と女って訳ね」
「なるほど」
「で、二人じゃ寂しいだろうと思い、ロイス様は人間に生殖機能を持たせて、子供を産めるようにした。それから、どんどん人間という種は数を増やし、この世界は人間達の楽園になった」
なんか、SFみたいな話だな。
「人間を沢山作った神様は疲れて、少し眠る事にしたの。で、自分が寝ている間に何か起きるといけないから自分の力を少し持った生物を生み出し、世界を守るように命じた。それが、魔力を持った魔女や魔術師という存在」
「なに!? 魔女って神様の分身みたいなもんなの!?」
「そうだよ。魔法は神様の持つ力だとされていて、それを使える魔女は神様の分身とされているの」
ほー。
それを聞くと、ミーレやレミー、ゴーレム幼女の凄みが分かるな。
「そして、自身の分身に後を託した神様は眠りについた。自身が目覚めた時にどんな素晴らしい世界が出来ているか楽しみにしながらね」
「で、神様が目覚めた後の世界は一体どうだったんだ?」
最初はホワイトが興奮気味だった事もあり、『早く、話終わらないかな』と思っていたが、思いのほか、興味のそそる内容で俺はホワイトの話を聞き入っていた。
「神様が目を覚ますと世界は大きく変わっていた。人間達は大きく数を減らし、魔女が人間を統治する世界になっていたの」
まあ、力のある種が幅を利かせるのは当たり前か。
神様なんだからそれくらい気付けよ。
「それを見た神様は心を痛め、絶対的な力を持つ存在を作ってはいけないとそう心に誓い、魔女や魔法に対抗出来る力を持った存在を新たに作り、そして、その存在が大きな力を持たないように人間に”能力”という力を与え、この世界に秩序を作り、争いが無くなった事を確認すると神様は再びどこかに行ってしまった」
「魔女と人間の間にもう一つの生物______魔女にとっての天敵を作った訳か」
「そうだね。ただ、魔女の数は激減し、魔女に対抗出来ていた存在も必要が無くなったのか姿を消した。その代わりに人間から派生したエルフや巨人族、ゴーレム族なんかの種族がどんどん増えて行ったって訳。まあ、童話のような内容だけどね」
ホワイトが説明を終えると、レイスはホワイトに称賛の言葉を送る。
「素晴らしいわ。外の方なのにそこまで理解出来ているなんて!」
「い、いや、そんな事ないよ」
あまり褒められた事がないのか、ホワイトは照れくさそうに頬を赤くした。
「何となくだがロイス様という存在の重要性が分かった。ただ、レイス達が人間を毛嫌いする理由は何だ?」
今の話だと毛嫌いする点なんて無いように感じたのだが。
レイスは飲み物を口に含めた後、ホワイトの話を補足するようにして理由を説明してくれた。
「人間という種族はロイス様から寵愛を受け、この世に生まれた。天敵が出現すればそれに対抗するための力も与えられ、種を繁栄させた。だが、今の人間はどう? 自身を生み出してくれたロイス様を敬うどころか、存在すら知らない者達もいる。それが私達には許せないのよ」
表情から感じ取る事は出来ないが、口調からレイスが怒っているのは感じられた。
これだけロイス様を敬愛している事を踏まえると言い分は分からん事もない。
ただ、それは世界がロイス様によって生み出されたという前提の話だ。
他の宗教では世界の始まりはまた別のものだろう。
自分達の宗教観を強要してはいかんよ。
まあ、そんな発言をしたら針の筵になるから黙っているけど。
「ふあ~。眠くなっちゃった」
大あくびをしながら、ホワイトは眠たそうに目を擦る。
そういや、ここに来て、どれくらいの時間が経ったのだろうか?
洞窟内部だから時間の感覚が読めんな。
「あ! そういや、ホワイトの兄貴! この成分調べろ!」
「あ、あ!? ど、どうして!」
「シルフの元彼みたいな髭面のオッサンの素性を知りたくてよ! そいつ、魔法の他に変な力使うんだ!」
「へ、変な力?」
「ああ。何か、『黒き龍』『大地を支配する』とか中二病っぽい発言をしてよ.......」
ウル覚えの呪文を口にした瞬間、レイスは持っていたコップを床に落とし、床には白い液体がばらまかれた。
「ご、ごめんなさい。手が滑って......」
「大丈夫? そういえば、ごめんね。急に来たのに夕食まで頂いちゃって、レイスも疲れているよね?」
ホワイトはレイスの肩にソッと触れ、レイスを気遣う言葉を掛ける。
それを受けたレイスも「え、ええ。少し疲れているのかも」と言い、床を拭いた後に自室に戻ってしまった。
「ちょっと、初対面なのに甘えすぎたかもな」
「うん。そうだね。明日の朝ご飯くらいは私が作ろうかな」
「お、俺は掃除でもする」
レイスには世話になった。
何か礼くらいした方がいいな。
「で、ホワイトの兄貴よ。真面目な話、シルフが危険な目に遭うかもしれない。嫌かもしれないが、こいつが何者か調べてくれ。頼む」
ホワイトの兄貴の目を見て、頭を下げるとホワイトの兄貴は俺の手に握られたオッサンの陰毛を口に入れ、モグモグと食べ始めた。
「生物との対話は時間がかかる。こ、一晩はかかるからな」
「ホワイトの兄貴......」
若干、「うっわ! 本当に陰毛食ったよ!」と引いてしまったが流石にその気持ちは心にしまい、俺とホワイトはそれぞれ用意された部屋に行き、寝る事にした。
◇ ◇ ◇
______客間______
「しかし、疲れたな」
歳を重ねてから独り言というものが本当に増えた。
まだ、アラサーなのに、1日に10回くらい独り言を言っている気がする。
「ふう~」「よっこらせ」等の言葉を入れると40回は絶対言ってる。
こりゃ、50歳になったら独り言言っているだけで一日終わるんじゃないかとマジで心配だ。
異世界に来て、ハンヌと戦ったり、ゴーレム幼女がいなくなったり、シルフがオッサンにメロメロだったり、気が休まる日が一日もない。
もっと、異世界ってチート能力で無双する!
みたいな簡単なものだと思ったけど、現実はチートなんかなく、現実世界よりも大変だ。
母親の事も心配だし、本当に現実世界に戻りたくなってきた。
シルフとオッサンの件が無事に解決したら、現実世界に帰る方法も真剣に考えよう......。
ベッドに横になると強烈な睡魔が襲い、俺は静かに目を閉じた。
◇ ◇ ◇
「メーデー!  メーデー!  こちら、エンデバー号!  時空嵐に巻き込まれた!  現在位置不明!  プランデルタに移行する!」
「くそ!  失敗した!  英雄になれると思ったのによ!」
「嫌だ!!!  死にたくない!!!」
何か乗り物の中だろうか?
数名の男性が乗り物のなかで叫んでいる。
中には天を仰ぎ神に祈る者、現状を切り抜けようと分電盤のようなものを祈っている者など行動は様々。
俺はその光景を俯瞰した視点でボーっと映画を見るように眺めていた。
「......人?」
外国人だろうか?
白人で金髪の映画俳優のような端正な顔立ちをした人間と目が合い、俺は現実の世界に引き戻された。
◇ ◇ ◇
「......変な夢だったな」
俺はベッドから上体を起こし、そう呟いた。
何だか妙にリアルというか、白人と目が合った瞬間がまだ脳裏にこびり付いている感じ。
夢はちょこちょこ見る方だがこんなに気味の悪い夢を見たのは久しぶりだ。
確か、夢の中で『エンデバー号』だとか言っていたな。
ゴーレム幼女の深層の中でシルヴィアが精神思念体とやらから聞き取ったワードの中に『エンデバー号』というものがあった。
シルヴィアから『エンデバー号』という言葉を聞いた時、何となくだが思うところがあった。
もしかして、俺がこの世界に来た事と何か関係があるのか?
そういや、俺は気付いたら雪山に居て......。
あれ?
そういや、あの雪山の場所って何処だったっけ?
______トントン。
「ん? 誰だ?」
先程見た夢と俺がこの世界に来た経緯を思い返していると、自室のドアを小さく叩く音がした。
「私だよ。花島、入っていいかな?」
「何だ。ホワイトか。どうぞ」
ゆっくりと開かれるドア。
ホワイトは何故か薄いピンク色のネグリジェのような露出度の高い格好で俺の目の前に現れた。
「______なっ!?」
俺が赤面しながら目を見開き、たじろいでいるにも関わらず、ホワイトは俺の元まで近づき、大きく柔らかな自身の胸まで俺を手繰り寄せた。
「......花島」
「うぐごおお! 息が!」
ホワイトの胸に俺の上半身はスッポリと収まり、風呂上りなのかホワイトの身体からは良い匂いがし、頭の中がクラクラしてきた。
普段、ぼさぼさの無造作ヘアにも関わらず、何故かポニーテール姿になっていて女っぽいホワイトに下半身が熱くなる。
息苦しさから足をバタつかせていると、足がホワイトの割れた腹筋に当たり、ホワイトはビクンと身体を強張らせた。
ホワイトの身体が反応したことで、胸の谷間から顔面だけは抜け出せ、谷間からホワイトの顔を見上げると、頬を赤らめ、恍惚の表情を浮かべたエロいホワイトがそこにはいた。
「ほ、ホワイト! 落ち着け! と、とりあえず、離してくれ!」
「......嫌」
「え、ええ......。どうしたんだよ?」
「花島。前に俺を好きになれって言ったよね。あの時は私、良く分からなかったけどちょっと嬉しかったよ。まだ花島の事、好きか分からないけど、何か花島の事無性に抱きしめたくなって......」
胸の中でも分かるくらいにホワイトの高鳴る心音が聞こえ、ホワイトが高揚している事は明らかだった。
普段は大人しいホワイトがこんなにも大胆になるなんて......。
今までホワイトを異性として見た事はなかったが、ホワイトは巨人という事を考慮しても筋肉質だが大分良い身体付をしている。
顔もシルフやヴァ二アルほどの美人ではないが、素朴で可愛らしい顔だ。
巨人族にも発情期のような期間が存在するのだろう。
ホワイトもその気だし、一回の間違いくらいを冒しても二人とも笑ってその後を過ごせるはずだ。
「ホワイト......」
「花島......」
完全に俺とホワイトの間には二人の時間が流れていた。
そういや、この世界に来て、可愛い子に囲まれていたにも関わらず、お預け状態を喰らっていた。
折角、異世界に来たのだから人外とSEXしたってバチは当たらないさ。
覚悟を決め、ホワイトと目を合わせる。
「......あれ? 黄色い目」
確か、ホワイトの黒目の部分は文字通り黒かったはず。
しかし、今、対峙しているホワイトの黒目の部分は爬虫類の瞳のように黄色かった。
それを見た瞬間、俺はハッと息を呑んだ。
「______お前! まさか!」
「______花島!」
自室の扉が蹴破られ、兄貴と共に俺の前に現れたホワイト。
ホワイトの服や髪型は普段通りで色気の欠片もないものだった。
「ホワイトが二人!?」
現状を把握出来ない中、近付いて来たホワイトが、俺の身体を抱きしめるホワイトに触れると魔法が解けるようにセクシーな姿をしたホワイトは消え、目の前にはレプティリアンの女性が現れた。
円柱状にくり抜かれた天井はステンドグラスのような色鮮やかなガラスで作られ、天窓のように光を室内に注ぐ役割をしている。
壁に沿うように設けられた本棚には隙間なく本が収まり、30mほど上にある本はどうやって取るのだろうか?
と疑問に思った。
「あれ? そういや、ホワイト達は?」
図書館内部には複数のレプティリアンがおり、中央部に設けられたテーブルや椅子に座り本を読んだり、棚の前に立ち、本を物色している。
死角がないこの空間でレプティリアンよりも大きな二人が見当たらないはずはないのだが......。
「三人は今、下にいるわ」
「下?」
「こっちよ」
すまし顔を見せながら、レプティリアンの脇を通って本棚の前に立つレイス。
本でも読むのか?
いや、それよりもホワイト達の所に連れて行け!
心の中でレイスのマイペースさに文句を言うと、レイスは赤く古ぼけた本を手に取る。
すると、赤い本の脇にあった緑色の本が赤い本があった場所に自動で移動し、その行動を契機にパズルのように移動する沢山の本。
本は機械の力で動かされているのか、ガシャガシャと甲高い金属音を図書館内に響かせる。
「さ、行きましょう」
全ての本が動きを止めると、地下に続く階段のようなものが現れた。
どうやら、この下にホワイト達がいるらしい。
不安を抱きながらもレイスの背中を追った。
◇ ◇ ◇
「では、再来の日は近いのですね!」
「あぁ! これから、レプティリアンの時代が始まる!」
「この日を待ちわびていた!」
薄暗い廊下を下っていくと先にある部屋から複数のレプティリアンの鼻息を荒くした声が聞こえた。
恐らく、男性の声なのか、レプティリアン達は気持ちが高揚しているようだ。
「じゃあ、開けるわね」
「おう」
堅牢な扉の前で足を止め、レイスは扉を開く。
扉の先は大学の教室のようになっており、横長の椅子とテーブルに座る複数のレプティリアン達。
そして、壇上の上に立つホワイトの兄の姿。
ここは一体?
頭の中でクエスチョンマークを浮かべていると、俺を発見したホワイトが横から声を掛けてきた。
「花島、どうしたのその格好?」
「ん? レイスに着せられたんだよ。人間の姿を見られたらマズイって」
「へ、へえ。それはそれで目立つよ」
「だよね。俺だってこんなタイツ身に着けたくないわ」
ホワイトと他愛ない会話をしていると、近くにいたレプティリアン数名に睨まれ、それを見たレイスは「二人とも、こっちに座って」と後ろの方の空いた椅子に座るように促した。
無表情のレプティリアンに怒られるのは怖いし、俺はホワイトと一緒にレイスの座っている椅子の隣に腰掛ける。
「しかし、これは一体何だ? まるで、ホワイトの兄が教師みたいだな」
壇上の上でボソボソとホワイトの兄は何かを喋っているようだが、声が小さく、何を話しているのかサッパリだ。
それを察し、事情を知っているホワイトは兄が喋っている内容をかいつまんで俺に教えてくれた。
「どうやら、ロイス様についてレプティリアン達に講義しているみたい」
「それは何となく分かる。山で見つけたロイス様の痕跡ってやつについて話しているんだろ?」
「うん。そうだね」
「ロイス様の存在が公になったら世界がひっくり返るんだろ? なんか、ホワイトは落ち着いてるな」
「まぁね。ウチのお兄ちゃんの能力でロイス様がいたという事実を知る事は出来た。でも、それを公に実証する事は難しいからねー」
「まぁ、数十万年前の痕跡だしな。裏山を掘れば神様の化石が出て来る訳じゃないしな」
ただ、一つ、妙なのはレプティリアン達はホワイトの兄貴の話を疑いなく前傾姿勢で聞いている事。
こんなにも大勢のレプティリアンがいるのだ。
一人くらいはホワイトの兄貴の話を疑問に持つ者がいても良いはずなのだが......。
疑問を抱きながらも、俺はその後、小一時間ほどのホワイトの兄の講義を黙って聞いた。
◇ ◇ ◇
______レイス家______
ホワイトの兄貴の講義が終わり、俺とホワイト、ホワイトの兄貴はレイスの家に招かれ夕食を一緒に摂る事にした。
テーブルの上には木の実や魚を蒸したような料理が並び、肉類はない。
魚を口にすると、少し泥臭さが残っており、塩などで味付けした形跡はなく、お世辞にも美味しいとは言えない料理だった。
「この魚美味しいね」
お腹が空いていたのか、ホワイトは笑顔で出された料理を頬張る。
「それはこの洞窟の奥にある地底湖で取れたものよ。外の世界にはいない種類なの」
「へー。初めて食べたよ」
ホワイトの美味しそうに食べる様子を見て、レイスもどこか嬉しそうだった。
俺はそんなレイスに聞けなかった質問を幾つか行う。
「レイス達はいつからこの洞窟に住んでいるんだ? あんな立派な建物を作る技術があるんだから、洞窟の外に出ても暮していけるだろう?」
「暮らしているのは数万年前というのは何となくだけど分かっているわ。確かに、洞窟の外でも私達は暮していけるけど、ロイス様が再びこの地に降りた際にお出迎えしなくてはいけないから離れる事は出来ない」
あー。
そういや、図書館に行く前にそんな話してたな。
「離れる事は出来ないか。でも、レイスは離れたい願望はあるんだろ? 俺が旅人と言ったら憧れるって言ってたじゃないか」
「ええ。憧れる事には憧れる。ただ、それは夢物語なの。夢を見るのは悪い事じゃないでしょ?」
レイスは憂いた表情で俺を見やる。
「ああ、悪い事じゃないよ。そういや、バラックは普通に外の世界に出ていたけど、一時的に外出するのは良いのか?」
「ええ。評議会の許可を得ればね。ただ、48時間以内に戻るとか、色々と制限はあるけどね」
「ほう。その制限を破るとどうなる?」
「さあ。破った人を見た事がないから分からないわ」
破った人を見た事がない?
それほど、レプティリアンは信心深いという事か?
セバスの能力”テレパシー”を使い、俺が触れた人物なら心の中を読む事が出来る。
先程から俺はレイスが言った事にウソがないか探っていたが、彼女の心の針は一切ぶれる事なく、真実を口にしている。
念の為、食事をする前にホワイトの兄貴に毒味をさせたが、食事の中に毒物などが入っている痕跡もない。
ここに来た時はレプティリアンという種族を信用していいものかと思ったが、どうやら、俺の杞憂で終わりそうだ。
「そういえば、バラック戻るの遅いね」
ホワイトはデザートの木の実を口に入れながら、バラックの居所をレイスに尋ねる。
「ええ。評議会にあなた達を連れて来た経緯などを説明しているから」
レイスは俺とホワイトに目配せをし。
「俺とホワイトが来たらまずかったのか?」
「うーん。ホワイトさんは先生の妹さんだから良いとして、問題は花島君ね。あなたは人間だもの」
「バラックに聞いたけど、人間はレプティリアンに嫌われているらしいな。過去になんかトラブルでもあったのか?」
「トラブルはないわ。経典に書かれている内容で人間を毛嫌いしているレプティリアンが多いの」
「どういった内容が書かれているんだ?」
「えっとね......」
レイスが内容を俺に教えてくれようとすると、普段はおとなしいホワイトが横から口を挟んできた。
「生物の根源は人間にあるって事が関係する?」
「え、ええ。よく知っているわね」
「私、学生時代に宗教を調べた事があって、少し興味があるの」
ホワイトの目はいつになく輝いており、レイスが説明すると言ってくれたのに、ホワイトは知識をひけらかすように経典の内容を教えてくれた。
「神様______ロイス様はこの世界を作った後に人間を一人作ったの」
「へえー」
俺は適当に相槌をし、ホワイトの高揚した気持ちが収まるのをジッと待つ事にした。
「優しい神様は一人では寂しいだろうと思い、人間をもう一人作った。それが男と女って訳ね」
「なるほど」
「で、二人じゃ寂しいだろうと思い、ロイス様は人間に生殖機能を持たせて、子供を産めるようにした。それから、どんどん人間という種は数を増やし、この世界は人間達の楽園になった」
なんか、SFみたいな話だな。
「人間を沢山作った神様は疲れて、少し眠る事にしたの。で、自分が寝ている間に何か起きるといけないから自分の力を少し持った生物を生み出し、世界を守るように命じた。それが、魔力を持った魔女や魔術師という存在」
「なに!? 魔女って神様の分身みたいなもんなの!?」
「そうだよ。魔法は神様の持つ力だとされていて、それを使える魔女は神様の分身とされているの」
ほー。
それを聞くと、ミーレやレミー、ゴーレム幼女の凄みが分かるな。
「そして、自身の分身に後を託した神様は眠りについた。自身が目覚めた時にどんな素晴らしい世界が出来ているか楽しみにしながらね」
「で、神様が目覚めた後の世界は一体どうだったんだ?」
最初はホワイトが興奮気味だった事もあり、『早く、話終わらないかな』と思っていたが、思いのほか、興味のそそる内容で俺はホワイトの話を聞き入っていた。
「神様が目を覚ますと世界は大きく変わっていた。人間達は大きく数を減らし、魔女が人間を統治する世界になっていたの」
まあ、力のある種が幅を利かせるのは当たり前か。
神様なんだからそれくらい気付けよ。
「それを見た神様は心を痛め、絶対的な力を持つ存在を作ってはいけないとそう心に誓い、魔女や魔法に対抗出来る力を持った存在を新たに作り、そして、その存在が大きな力を持たないように人間に”能力”という力を与え、この世界に秩序を作り、争いが無くなった事を確認すると神様は再びどこかに行ってしまった」
「魔女と人間の間にもう一つの生物______魔女にとっての天敵を作った訳か」
「そうだね。ただ、魔女の数は激減し、魔女に対抗出来ていた存在も必要が無くなったのか姿を消した。その代わりに人間から派生したエルフや巨人族、ゴーレム族なんかの種族がどんどん増えて行ったって訳。まあ、童話のような内容だけどね」
ホワイトが説明を終えると、レイスはホワイトに称賛の言葉を送る。
「素晴らしいわ。外の方なのにそこまで理解出来ているなんて!」
「い、いや、そんな事ないよ」
あまり褒められた事がないのか、ホワイトは照れくさそうに頬を赤くした。
「何となくだがロイス様という存在の重要性が分かった。ただ、レイス達が人間を毛嫌いする理由は何だ?」
今の話だと毛嫌いする点なんて無いように感じたのだが。
レイスは飲み物を口に含めた後、ホワイトの話を補足するようにして理由を説明してくれた。
「人間という種族はロイス様から寵愛を受け、この世に生まれた。天敵が出現すればそれに対抗するための力も与えられ、種を繁栄させた。だが、今の人間はどう? 自身を生み出してくれたロイス様を敬うどころか、存在すら知らない者達もいる。それが私達には許せないのよ」
表情から感じ取る事は出来ないが、口調からレイスが怒っているのは感じられた。
これだけロイス様を敬愛している事を踏まえると言い分は分からん事もない。
ただ、それは世界がロイス様によって生み出されたという前提の話だ。
他の宗教では世界の始まりはまた別のものだろう。
自分達の宗教観を強要してはいかんよ。
まあ、そんな発言をしたら針の筵になるから黙っているけど。
「ふあ~。眠くなっちゃった」
大あくびをしながら、ホワイトは眠たそうに目を擦る。
そういや、ここに来て、どれくらいの時間が経ったのだろうか?
洞窟内部だから時間の感覚が読めんな。
「あ! そういや、ホワイトの兄貴! この成分調べろ!」
「あ、あ!? ど、どうして!」
「シルフの元彼みたいな髭面のオッサンの素性を知りたくてよ! そいつ、魔法の他に変な力使うんだ!」
「へ、変な力?」
「ああ。何か、『黒き龍』『大地を支配する』とか中二病っぽい発言をしてよ.......」
ウル覚えの呪文を口にした瞬間、レイスは持っていたコップを床に落とし、床には白い液体がばらまかれた。
「ご、ごめんなさい。手が滑って......」
「大丈夫? そういえば、ごめんね。急に来たのに夕食まで頂いちゃって、レイスも疲れているよね?」
ホワイトはレイスの肩にソッと触れ、レイスを気遣う言葉を掛ける。
それを受けたレイスも「え、ええ。少し疲れているのかも」と言い、床を拭いた後に自室に戻ってしまった。
「ちょっと、初対面なのに甘えすぎたかもな」
「うん。そうだね。明日の朝ご飯くらいは私が作ろうかな」
「お、俺は掃除でもする」
レイスには世話になった。
何か礼くらいした方がいいな。
「で、ホワイトの兄貴よ。真面目な話、シルフが危険な目に遭うかもしれない。嫌かもしれないが、こいつが何者か調べてくれ。頼む」
ホワイトの兄貴の目を見て、頭を下げるとホワイトの兄貴は俺の手に握られたオッサンの陰毛を口に入れ、モグモグと食べ始めた。
「生物との対話は時間がかかる。こ、一晩はかかるからな」
「ホワイトの兄貴......」
若干、「うっわ! 本当に陰毛食ったよ!」と引いてしまったが流石にその気持ちは心にしまい、俺とホワイトはそれぞれ用意された部屋に行き、寝る事にした。
◇ ◇ ◇
______客間______
「しかし、疲れたな」
歳を重ねてから独り言というものが本当に増えた。
まだ、アラサーなのに、1日に10回くらい独り言を言っている気がする。
「ふう~」「よっこらせ」等の言葉を入れると40回は絶対言ってる。
こりゃ、50歳になったら独り言言っているだけで一日終わるんじゃないかとマジで心配だ。
異世界に来て、ハンヌと戦ったり、ゴーレム幼女がいなくなったり、シルフがオッサンにメロメロだったり、気が休まる日が一日もない。
もっと、異世界ってチート能力で無双する!
みたいな簡単なものだと思ったけど、現実はチートなんかなく、現実世界よりも大変だ。
母親の事も心配だし、本当に現実世界に戻りたくなってきた。
シルフとオッサンの件が無事に解決したら、現実世界に帰る方法も真剣に考えよう......。
ベッドに横になると強烈な睡魔が襲い、俺は静かに目を閉じた。
◇ ◇ ◇
「メーデー!  メーデー!  こちら、エンデバー号!  時空嵐に巻き込まれた!  現在位置不明!  プランデルタに移行する!」
「くそ!  失敗した!  英雄になれると思ったのによ!」
「嫌だ!!!  死にたくない!!!」
何か乗り物の中だろうか?
数名の男性が乗り物のなかで叫んでいる。
中には天を仰ぎ神に祈る者、現状を切り抜けようと分電盤のようなものを祈っている者など行動は様々。
俺はその光景を俯瞰した視点でボーっと映画を見るように眺めていた。
「......人?」
外国人だろうか?
白人で金髪の映画俳優のような端正な顔立ちをした人間と目が合い、俺は現実の世界に引き戻された。
◇ ◇ ◇
「......変な夢だったな」
俺はベッドから上体を起こし、そう呟いた。
何だか妙にリアルというか、白人と目が合った瞬間がまだ脳裏にこびり付いている感じ。
夢はちょこちょこ見る方だがこんなに気味の悪い夢を見たのは久しぶりだ。
確か、夢の中で『エンデバー号』だとか言っていたな。
ゴーレム幼女の深層の中でシルヴィアが精神思念体とやらから聞き取ったワードの中に『エンデバー号』というものがあった。
シルヴィアから『エンデバー号』という言葉を聞いた時、何となくだが思うところがあった。
もしかして、俺がこの世界に来た事と何か関係があるのか?
そういや、俺は気付いたら雪山に居て......。
あれ?
そういや、あの雪山の場所って何処だったっけ?
______トントン。
「ん? 誰だ?」
先程見た夢と俺がこの世界に来た経緯を思い返していると、自室のドアを小さく叩く音がした。
「私だよ。花島、入っていいかな?」
「何だ。ホワイトか。どうぞ」
ゆっくりと開かれるドア。
ホワイトは何故か薄いピンク色のネグリジェのような露出度の高い格好で俺の目の前に現れた。
「______なっ!?」
俺が赤面しながら目を見開き、たじろいでいるにも関わらず、ホワイトは俺の元まで近づき、大きく柔らかな自身の胸まで俺を手繰り寄せた。
「......花島」
「うぐごおお! 息が!」
ホワイトの胸に俺の上半身はスッポリと収まり、風呂上りなのかホワイトの身体からは良い匂いがし、頭の中がクラクラしてきた。
普段、ぼさぼさの無造作ヘアにも関わらず、何故かポニーテール姿になっていて女っぽいホワイトに下半身が熱くなる。
息苦しさから足をバタつかせていると、足がホワイトの割れた腹筋に当たり、ホワイトはビクンと身体を強張らせた。
ホワイトの身体が反応したことで、胸の谷間から顔面だけは抜け出せ、谷間からホワイトの顔を見上げると、頬を赤らめ、恍惚の表情を浮かべたエロいホワイトがそこにはいた。
「ほ、ホワイト! 落ち着け! と、とりあえず、離してくれ!」
「......嫌」
「え、ええ......。どうしたんだよ?」
「花島。前に俺を好きになれって言ったよね。あの時は私、良く分からなかったけどちょっと嬉しかったよ。まだ花島の事、好きか分からないけど、何か花島の事無性に抱きしめたくなって......」
胸の中でも分かるくらいにホワイトの高鳴る心音が聞こえ、ホワイトが高揚している事は明らかだった。
普段は大人しいホワイトがこんなにも大胆になるなんて......。
今までホワイトを異性として見た事はなかったが、ホワイトは巨人という事を考慮しても筋肉質だが大分良い身体付をしている。
顔もシルフやヴァ二アルほどの美人ではないが、素朴で可愛らしい顔だ。
巨人族にも発情期のような期間が存在するのだろう。
ホワイトもその気だし、一回の間違いくらいを冒しても二人とも笑ってその後を過ごせるはずだ。
「ホワイト......」
「花島......」
完全に俺とホワイトの間には二人の時間が流れていた。
そういや、この世界に来て、可愛い子に囲まれていたにも関わらず、お預け状態を喰らっていた。
折角、異世界に来たのだから人外とSEXしたってバチは当たらないさ。
覚悟を決め、ホワイトと目を合わせる。
「......あれ? 黄色い目」
確か、ホワイトの黒目の部分は文字通り黒かったはず。
しかし、今、対峙しているホワイトの黒目の部分は爬虫類の瞳のように黄色かった。
それを見た瞬間、俺はハッと息を呑んだ。
「______お前! まさか!」
「______花島!」
自室の扉が蹴破られ、兄貴と共に俺の前に現れたホワイト。
ホワイトの服や髪型は普段通りで色気の欠片もないものだった。
「ホワイトが二人!?」
現状を把握出来ない中、近付いて来たホワイトが、俺の身体を抱きしめるホワイトに触れると魔法が解けるようにセクシーな姿をしたホワイトは消え、目の前にはレプティリアンの女性が現れた。
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