異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第171話お母さん! スコッツデール先生!

______ホワイト家______


「着いたぞ」


「あれ? ここって、私の家だよね?」


ホワイトシーフ王国を離れ、数キロ離れたホワイトの家まで辿り着いた。


「ああ。入るぞ」


「いや、花島に言われなくても入るよ。私の家なんだから」


それもそうだ。
頭の中でホワイトのツッコミに納得していると扉が開き、中からホワイトの兄貴が小奇麗な格好で出て来た。
前回会った時は引きこもり中で無精ひげを生やし、死んだ魚のような目をしていたのだが、目の前のホワイトの兄貴は韓流アイドルのような透明感があり、生気を感じられた。


「ん? ホ、ホワイト。か、帰ってたのか」


「うん... ...。それよりも、お兄ちゃんどうしたの? 家から出るなんて珍しいね」


感情の起伏が小さなホワイトが珍しく驚いている。
それ程、実兄の行動が理解しがたいものだったのだろう。


「ま、前に花島とかいう奴とう、裏山に行ったろ? それで、せ、戦闘の痕跡を見付けたろ?」


ああ。
マンドラゴラを取りに行った時に上級者魔導士が戦闘を行ったとか、何とか言ってたやつか。
ホワイトの兄貴は舐めたり、喰ったりするとその物質についての細かな情報を収集する事が出来るんだよね。


「そ、それで、俺、気になってそこから裏山にちょくちょく行ってここで何がお、起きたのかし、調べてた」


「で、何か分かったの?」


「う、うん。それが______」


ホワイトの兄貴が調査の結果を口にしようとした時、森の奥から大きなトカゲのような生物が地鳴り音と共に現れ、後ろに引かれていた煌びやか装飾で四輪が付いた箱の中から人型トカゲが現れ。


「スコッツデール先生! お迎えに上がりましたああああ!!!」


と喉を鳴らしながら、ホワイトの兄貴の前に背筋をピンと伸ばして直立。


「スコッツデール先生?」


ホワイトが困惑した様子で兄貴を見ると、ホワイトの兄貴は恥ずかしそうに「と、とりあえず、一緒に来てくれ」と人型トカゲが乗って来た馬車に乗車をした。


◇ ◇ ◇


揺れる馬車の中、ホワイトとホワイトの兄貴が会話をしようとしているが、人型トカゲがお喋りで中々、二人が会話が出来ない様子だった。


「いやあああ!!! スコッツデール先生の妹様ですか! スコッツデール先生同様、大きく、そして、美しいお方だ!」


「あ、ありがとうございます」


人型トカゲはホワイトやホワイトの兄貴よりも小さく、俺よりも大きい。
恐らく、身長は190cm前後で緑色のうろこ状の皮膚とワニのように突き出た口が特徴的。
そして、何よりも人型トカゲは顔に似合わず早口でめっちゃ喋る。
甲高い声は美味しんぼに出て来る課長を連想させた。


「あの! それで、ご結婚はされているのでしょうか!?」


「い、いや、結婚なんてそんな... ...」


ホワイトの心拍数が上がり、発汗してきた。
恥ずかしがっているのだろうか?
まあ、何にせよ、人型トカゲのターンは終わり。
今度からは俺のターンだ。


「ホワイトは俺の嫁だ。手出しするなよ」


「______うわあ! 胸から人が産まれた! 巨人族は胸から子を産むのですか!?」


馬車に乗る前、足を乗せるところが高過ぎてもたもたしていると、ホワイトが俺をヒョイと持ち上げ、自身の胸の谷間の中に押し込めた。
人型トカゲは俺をホワイトの赤ちゃんだと勘違いし、口をパクパクしながら目を丸くして驚いた。


「花島の嫁はヴァ二アルちゃんじゃない」


自身の胸に目線を落とし、ホワイトは嫁発言をサラリとかわす。
なかなか、ホワイトルートは難しいな。
と思っていると、ホワイトの兄貴が自身の妹の胸の谷間を凝視し。


「は、花島。い、いたのか」


ホワイトの兄貴は恐らく、俺が小さ過ぎて、ホワイトと一緒に来た事さえ気付かなかったのだろう。
まあ、俺と目が合わなかったからそうだと思ったけどね。


「よう! 久しぶりだな。ヒキニート生活はやめたのかよ!」


俺とホワイトの兄貴は仲が良くない。
嫌いというよりも、馬が合わない。
皮肉っぽい発言をしたのでホワイトの兄貴は俺に不快感を表すだろう。


「ああ。お前のおかげでな」


「... ...何だよ。急にどうした?」


ホワイトの兄貴は口角を上げ、不器用そうに笑う。
イライラした様子のホワイトの兄貴を見たかったのに、何か調子が狂うな。


「それで、お兄ちゃん。この状況は一体何なの? それに、この人は誰?」


「そ、それは... ...」


モゴモゴと口を動かすホワイトの兄貴を横目に、小型恐竜のように喉を鳴らして人型トカゲが会話に入る。


「申し遅れました! 私は”レプティリアン”のバラックと申します。以後、お見知りおきを」


揺れる車内で90度頭を下げ、こちらに頭の頂点を見せる彼は”レプティリアン”と言った。
確か、宇宙人のような存在だったはず... ...。
ファンタジー世界だから、てっきり、リザードマンっていう種族だと思ったが違うのな。


「バラックね。私はホワイト。で、こっちの人間が花島」
「おう! よろしくな!」


「... ...人間?」


バラックは小さな鼻腔を器用に動かしながら、首を傾げる。
何だよ。
どうせ、また、鼻の化物とか言うんだろ?
いつものお決まりのパターンかと冷ややかな目でバラックを見るが「鼻の化物かと思いました」というワードは出る事はなかった。
俺に気を遣ったのか?
こいつ、意外に良い奴かもしれん。


「で、バラック。状況を説明してくれないかな? お兄ちゃんは何で先生って呼ばれているの?」


「それは、この世界の歴史を覆すような世紀の大発見をされたからですよ! この事が世界に公表されればスコッツデール先生も一気に有名になります! 億万長者です!」


自身のことのように喜ぶバラックはそれはそれは奇妙な光景だった。
世紀の瞬間に立ち会える事を光栄に思っている?
俺にはバラックが何か隠しているようにしか見えなかった。


「で、その世紀の大発見って?」


「それはですね______」


バラックが世紀の大発見を口にしようとしたタイミングで、馬車が急停止。


「な、何ですか?!」


と慌てたバラックが扉を開け、辺りを確認すると数人の黒マントの集団に馬車が取り囲まれていた。
黒マントの集団は右手にナタのような刃物を持ち、大小異なる色とりどりの魔石を指輪や首飾りなどに加工し、身に付けている。


「ひい、ふう、み... ...。五人くらいか。ホワイト、余裕だよな?」


「え? うん。花島も援護くらいしてよ」


「ああ。分かってるよ」


「ちょっと! お二人方! 何をしているのですか!?」


俺とホワイトが馬車から降りて行くのをバラックは止めようとする。


「何って? 戦うんだよ」


「た、戦う!?」


「まあ、見てろって」


ホワイトは拳をバキバキと鳴らしながら、黒マントの集団を見下げ。


「あの。武器をしまって下さい。怪我します... ...」


ホワイトの発言が合図になり、黒マントの集団が一斉にホワイトに飛びかかった。

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