異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第160話お母さん! ゴーレムの娘とオッサン

______マンティコア瞳内部______


◇ ◇ ◇
■ ■ ■


シルヴィアの胸に埋め込まれたマンティコアの瞳に触れると目の前にいたはずのシルヴィアとクックは霧のように姿を消した。
そして、変わりに目の前に現れたのは見慣れた白いドレスのような服を身に纏ったゴーレム幼女の姿だった。
煌びやかな金色の髪、宝石のような大きな瞳、頬を摺り寄せたくなるほどに柔らかな肌のゴーレム幼女。
まさかもう一度、会えるとは思わず、腰の高さほどの天使を抱きしめた。


「ご、ゴーレム幼______ぐっはっ!!!」


腹に響く鈍痛。
何故かゴーレム幼女の右ストレートがみぞおちを直撃。


「お、お前、何を... ...」


「感傷に浸るふりして私の身体に触れるのは止めるみそ。何度言ったら分かるんだこの変態」


くっ!
こいつ、確実に学習している!
確かにゴーレム幼女に会えるという嬉しさもあったが、その中には微かに女体に触れられるという下心も混在していた。


「まあ、こんなやり取りをするのもあと少しかみそ... ...」


ゴーレム幼女は今まで見たことがないようなしおらしい表情。
その一言でゴーレム幼女は事の成り行きを把握しており、自身がどう行動すればいいのかも全て理解しているのだと悟った。


「______お前はそれでいいのかよ」


突いて出た言葉はゴーレム幼女を引き留めるような言葉だった。
俺は、ゴーレム幼女を説得するためにここまで連れて来られた。
本来ならばゴーレム幼女を迷わすような発言は控えるべきだが、生物界の頂点に君臨していたゴーレム幼女の老衰した百獣の王のような姿を見たら言葉を止める事が出来なかった。


「もう、決めたみそ。自分の引き際くらい自分で決める。花島、お前が私の出した答えに口を挟むなみそ」


「自分で決めた!? 嘘付け! お前、ずっと泣いてたろ! 助けてくれって俺に言ってただろ!」


「言ってないみそ! お前の耳は腐っているみそ! 私は強いみそ! 泣くわけなんかがないみそ!」


ゴーレム幼女は先程とは打って変わってポコポコと弱々しく俺の腹を叩く。
目の周りは赤く腫れ、涙は枯れてしまったようだ。
運命に抗おうにも抗えず、どうして良いのかも分からない様子のゴーレム幼女が愛おしくて、俺は再びそっと小さな身体を抱きしめた。


「やめろ! 花島! やめるみそ!」


「... ...辛い時はちゃんと言え」


「だから言っているみそ! 辛くない! これが私の運命だみそ!」


「... ...」


「変態! クズ! アホ! 離せみそ!」


「... ...」


「... ...だからやめろって言っているみそ」


細くなった声を吐息のように吐き出し、小さな手でギュッと服の袖を握り、感情を押し殺す。
ゴーレム幼女の心臓が鳴る音を耳にし、俺とゴーレム幼女はしばらく無言のまま抱き合った。

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