異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。
第149話お母さん! ゴーレム幼女の過去⑧
______ユピス国______
戦争を控えた東の大国は緊張が入り交じった重々しい空気となっている。
普段なら賑わっている酒場や数々の出店も今日ばかりはどこも営業していない。
メイン通りや城を囲む家々に明かりはなく、無数の松明の火が城の中にある庭に集まり、上空から見ると一つの大きな炎に見えなくもない。
城の中には厳選された兵士や魔術師が数千名。
城を囲む高い壁の外には数万の兵が待機しており、彼等は神妙な面持ちで来る大戦の狼煙が上がるのを待っているようだ。
「いや~。しかし、三国の兵が一度に集まると偉観ですな~」
「しかし、本当にこれだけの兵を瞬時にリトアニア王国まで移動させる事など本当に可能なのかね?」
眼下に見下ろす無数の兵を横目にナイデス王やヤハスーハ三世は疑念の目で黒いローブに身を包んだ10歳ほどの年齢のオッドアイの幼女を見やる。
「del piello」
話すよりも行動で示した方が早いと思ったのか、ブラックは小声で呪文を唱え、二人は瞬時にその場から姿を消した。
「ちょっと! ブラックさん! お二人をどこにやったんですか!?」
「んー? あそこー」
ブラックが指差した方向にはまん丸い月と夜空しかない。
テテスは意味が分からずにもう一度聞こうとすると。
「うわあああ!!!」
「うわあああ!!!」
と月から何かが降って来るのが見え。
「ブラックさん!」
落ちてくる二人を何とかするように頼もうと思い、後ろを振り返るとそこには既に震えながら抱き合うナイデス王とヤハスーハ三世の姿があった。
「これで分かったでしょー?」
ブラックがニコニコとしながら、二人に問う。
二人は怯え切ってしまったのか、首振り人形のように首をカクカクと縦に動かしながら、目を真っ赤にした。
「うっははは! 素晴らしい! これが魔女を殺す魔女の力か!」
エルデステリオは満足気に手を叩き笑う。
ブラックを警戒してか、”大剣ブラス”の欠片を加工した指輪をお守りのように身につけている。
「そんなに力使ってないんだけどー。まあ、いいわー」
相手の強さを測るほどの強さもない人間を小動物のように見るブラックはニコニコとした表情を崩さない。
これから戦場に向かうというのにも関わらず、緊張感がないブラックに対して、テテスやエプロンは不安を抱いていた。
「エルデステリオ様。準備が整いました」
「うむ」
兵から声を掛けられたエルデステリオは満足気な表情で月明かりの照らすバルコニーに設置された特設台の上に立った。
揺れる松明の数だけ人の命がある。
自身の一声で動かす事に興奮したのかエルデステリオの気持ちは高ぶり、心音を上げさせた。
「皆も知っている通り、ユピス、アイデル、ナイデスの三国は長きにわたり戦争を行っていた! その時の凄惨な日常を知る者もこの中にはいるだろう! 我らは不戦の約定を結び! この数十年、一度も争いをせずに暮らしてきた! 未だに国民感情としてはお互いに分かり合えない点もあるだろう!」
塔の上に掲げられた三国の国旗が風に揺られてなびくのをテテスはジッと見つめる。
彼女の両親は戦争によってこの世を去った。
リトアニアを侵略する事により、自分のような孤児が出ることも予見している。
だが、今の平和を守る為にはやらなくてはいけない事だと自分を律した。
「だが! 今! 海の先にある小国が力を付け! 辺りの国々を滅ぼしている! 奴らは残忍でかつ、卑劣で女や子供も皆殺しにする! 貴様らにも家族がいるだろう!? 今は昔の感情を引きずる時ではない! 生まれた地や国籍も違うが! 守りたいものは同じだ! 今こそ我らは結束する時である!!!」
地鳴りのような声と共に兵士達は松明を夜空に掲げる。
赤、青、緑のそれぞれの国のマークが入った甲冑を身に付けている兵士達には迷いはなかった。
三国の民や兵は守りたいものの為に結託し、同盟国という枠を越え、一つの大国となろうとしている。
そこには宗教も国籍も肌の色も関係がなく、隣り合った者同士、健闘を誓った。
「あらあら。これから、暗黒の時代が始まるとも知らずに舞い上がっちゃて。可愛いわー」
長年生きた彼女は分かっていた。
エルデステリオは大義名分を掲げ、バラバラだった国民を一つにしたが、それは自身が大国の長として君臨する為のもの。
国民をまとめあげたエルデステリオは戦争が終わった後、アイデル、ナイデスの二国を吸収し、ユピス共和国を築き、そこの国王として君臨し、長年における絶対王政にて国を統治しようとしている事も、その圧政政治により多くの国民が苦しむ未来もブラックは予測していたのだった。
「ブラックさん? 何か言いました?」
テテスはブラックに問う。
「これから、あなた、頑張らないとねー」
「え? ああ、はい。戦争ですからね」
「そうじゃなくて... ...」
ブラックは近い未来、テテスがその絶対王政を終わらせるカギとなる人物だということを見抜いており、声を掛けたがテテスにはそれが伝わっていなかった。
「ブラック! そろそろ!」
エプロンはリトアニアにまで兵を転移させるように指示。
「まあ、戦いが終わったらゆっくり話しましょうー」
「... ...?」
ブラックは事前に張り巡らしてた魔法陣を展開し、ボソボソと呪文を唱える。
緑色に発光した大地で月の光はおおわれ、城の中庭には幻想的な空間が広がり。
「おお! 美しい!」
尊い命を包み込む緑色の発光する絨毯に感嘆の声を上げるエルデステリオ。
彼は戦争を楽しんでいた。
自身の一声で自国の民の命が失われるにも関わらず... ...。
「del piello!」
ブラックが呪文を天に仰ぐように叫ぶと、中庭にいる数千の兵と外にいた数万の兵は一瞬で姿を消した。
戦争を控えた東の大国は緊張が入り交じった重々しい空気となっている。
普段なら賑わっている酒場や数々の出店も今日ばかりはどこも営業していない。
メイン通りや城を囲む家々に明かりはなく、無数の松明の火が城の中にある庭に集まり、上空から見ると一つの大きな炎に見えなくもない。
城の中には厳選された兵士や魔術師が数千名。
城を囲む高い壁の外には数万の兵が待機しており、彼等は神妙な面持ちで来る大戦の狼煙が上がるのを待っているようだ。
「いや~。しかし、三国の兵が一度に集まると偉観ですな~」
「しかし、本当にこれだけの兵を瞬時にリトアニア王国まで移動させる事など本当に可能なのかね?」
眼下に見下ろす無数の兵を横目にナイデス王やヤハスーハ三世は疑念の目で黒いローブに身を包んだ10歳ほどの年齢のオッドアイの幼女を見やる。
「del piello」
話すよりも行動で示した方が早いと思ったのか、ブラックは小声で呪文を唱え、二人は瞬時にその場から姿を消した。
「ちょっと! ブラックさん! お二人をどこにやったんですか!?」
「んー? あそこー」
ブラックが指差した方向にはまん丸い月と夜空しかない。
テテスは意味が分からずにもう一度聞こうとすると。
「うわあああ!!!」
「うわあああ!!!」
と月から何かが降って来るのが見え。
「ブラックさん!」
落ちてくる二人を何とかするように頼もうと思い、後ろを振り返るとそこには既に震えながら抱き合うナイデス王とヤハスーハ三世の姿があった。
「これで分かったでしょー?」
ブラックがニコニコとしながら、二人に問う。
二人は怯え切ってしまったのか、首振り人形のように首をカクカクと縦に動かしながら、目を真っ赤にした。
「うっははは! 素晴らしい! これが魔女を殺す魔女の力か!」
エルデステリオは満足気に手を叩き笑う。
ブラックを警戒してか、”大剣ブラス”の欠片を加工した指輪をお守りのように身につけている。
「そんなに力使ってないんだけどー。まあ、いいわー」
相手の強さを測るほどの強さもない人間を小動物のように見るブラックはニコニコとした表情を崩さない。
これから戦場に向かうというのにも関わらず、緊張感がないブラックに対して、テテスやエプロンは不安を抱いていた。
「エルデステリオ様。準備が整いました」
「うむ」
兵から声を掛けられたエルデステリオは満足気な表情で月明かりの照らすバルコニーに設置された特設台の上に立った。
揺れる松明の数だけ人の命がある。
自身の一声で動かす事に興奮したのかエルデステリオの気持ちは高ぶり、心音を上げさせた。
「皆も知っている通り、ユピス、アイデル、ナイデスの三国は長きにわたり戦争を行っていた! その時の凄惨な日常を知る者もこの中にはいるだろう! 我らは不戦の約定を結び! この数十年、一度も争いをせずに暮らしてきた! 未だに国民感情としてはお互いに分かり合えない点もあるだろう!」
塔の上に掲げられた三国の国旗が風に揺られてなびくのをテテスはジッと見つめる。
彼女の両親は戦争によってこの世を去った。
リトアニアを侵略する事により、自分のような孤児が出ることも予見している。
だが、今の平和を守る為にはやらなくてはいけない事だと自分を律した。
「だが! 今! 海の先にある小国が力を付け! 辺りの国々を滅ぼしている! 奴らは残忍でかつ、卑劣で女や子供も皆殺しにする! 貴様らにも家族がいるだろう!? 今は昔の感情を引きずる時ではない! 生まれた地や国籍も違うが! 守りたいものは同じだ! 今こそ我らは結束する時である!!!」
地鳴りのような声と共に兵士達は松明を夜空に掲げる。
赤、青、緑のそれぞれの国のマークが入った甲冑を身に付けている兵士達には迷いはなかった。
三国の民や兵は守りたいものの為に結託し、同盟国という枠を越え、一つの大国となろうとしている。
そこには宗教も国籍も肌の色も関係がなく、隣り合った者同士、健闘を誓った。
「あらあら。これから、暗黒の時代が始まるとも知らずに舞い上がっちゃて。可愛いわー」
長年生きた彼女は分かっていた。
エルデステリオは大義名分を掲げ、バラバラだった国民を一つにしたが、それは自身が大国の長として君臨する為のもの。
国民をまとめあげたエルデステリオは戦争が終わった後、アイデル、ナイデスの二国を吸収し、ユピス共和国を築き、そこの国王として君臨し、長年における絶対王政にて国を統治しようとしている事も、その圧政政治により多くの国民が苦しむ未来もブラックは予測していたのだった。
「ブラックさん? 何か言いました?」
テテスはブラックに問う。
「これから、あなた、頑張らないとねー」
「え? ああ、はい。戦争ですからね」
「そうじゃなくて... ...」
ブラックは近い未来、テテスがその絶対王政を終わらせるカギとなる人物だということを見抜いており、声を掛けたがテテスにはそれが伝わっていなかった。
「ブラック! そろそろ!」
エプロンはリトアニアにまで兵を転移させるように指示。
「まあ、戦いが終わったらゆっくり話しましょうー」
「... ...?」
ブラックは事前に張り巡らしてた魔法陣を展開し、ボソボソと呪文を唱える。
緑色に発光した大地で月の光はおおわれ、城の中庭には幻想的な空間が広がり。
「おお! 美しい!」
尊い命を包み込む緑色の発光する絨毯に感嘆の声を上げるエルデステリオ。
彼は戦争を楽しんでいた。
自身の一声で自国の民の命が失われるにも関わらず... ...。
「del piello!」
ブラックが呪文を天に仰ぐように叫ぶと、中庭にいる数千の兵と外にいた数万の兵は一瞬で姿を消した。
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