異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第134話お母さん! ゴーレム幼女が暴走してます!

■ ■ ■


「ハンヌ様!」


ゴーレム幼女によって破壊された塔から飛来する岩石から自身のあるじを守ろうと鈴音はバルコニーにいたハンヌの腕を掴み、部屋に引き入れる。


「い、一体なにが!?」


「わ、分かりません!」


何が起こっているのか分からない恐怖はその部屋にいた執事やメイド、ハンヌの側近でもある半袖丸にも伝染。
部屋の中は塔から零れた土煙が微かに舞い、咳き込む者もいた。


「あれれ~? なーんか、見た事ある奴がいるなー」


飛来する岩石を気にすることなく、赤毛の魔法少女はバルコニーの手すりに自身の豊満な胸を乗せ、国の中央を浮遊するゴーレム幼女を見やる。


「ちょっと、様子が変ね」


銀色の髪の魔法少女達は以前、自身と死闘を繰り広げたゴーレム幼女の様子がおかしい事を瞬時に察知し、困ったように頬に手をつく。


「___イキャアアアアア!!!」


「___!?」


突然、鼓膜を裂くような恐ろしい音がし、ミーレとレミーを除く部屋にいた者達は一斉に腰を落とす。


「あれ? みんな、どうしたのさ?」


キョトンとした顔でしゃがみ込んでしまった者達に声を掛けるミーレ。


「み、耳が... ...」


「でっかくなっちゃった!? アハハ! ___いてっ!」


空気を読まずにふざけているミーレの頭に鉄槌をお見舞いするレミー。
彼女は今の状況がふざけている場合ではないと察していた。


「”威圧”の影響だ。放っておけば治る。ただ、厄介な事になったねえ... ...」


「いったあああ... ...。何が?」


「何がじゃないだろ? あんたは本当にお気楽というか... ...。どう考えても、あのゴーレム、精神支配されているじゃない」


レミーの推測は当たっていた。
ゴーレム幼女は何者かの影響で精神攻撃を受け、自我がまるでない。
破壊衝動で動く自立型ロボットのように彼女は国を壊すまで止まる事はないのだろう。


「精神支配... ...。ハンヌってやつの仕業? そいつは花島が倒したんじゃないの?」


ミーレはレミーに質問を投げかける。


「そう聞いている。別の個体の仕業かえ?」


何百年と生きており、世界中の本という本を読んで来たレミーには分からない事の方が少ない。
ただ、そんな博識な彼女からしてみても魔女を操る者の正体や物質というものが分からず終い。
レミーが質問してくるなんて何百年ぶりだろうか?
ミーレは事態の重さをようやく理解し始めた。


「まあ! 考えてもなんちゃらない! ようはゴーレムをブッ倒せばいいんだよね!?」


前向きな言葉と共にミーレは拳をレミーの前に突き出す。
レミーはそんな妹を鼻で笑い。


「ふっ。たまにはあんたのバカが救いになるわね」


「あー! バカって言うの禁止って言ったじゃん!」


「そうだったかえ? 何百年前に約束した事だったっけね?」


「むきいいい! 覚えてるなら言わないでよ!」


他愛もないやり取りをした後、ミーレとレミーは深呼吸をし、国の中央に浮かぶ強者を睨む。


「あたしはこいつらと下の住人達を一旦安全な場所に転移させる」


「OK! 詠唱の間は指一本この塔に触れさせないよ!」


ミーレの足は小刻みに震えていた。
ミーレはこの世界では最強の生命体である”魔女”である。
弱肉強食の世界でTOPの種族であり、あらゆる生物の頂点に君臨する存在。
ただ、そんな彼女にも天敵は存在する。


___それは同種である魔女である。


魔女はそれをお互いに認識しており、種族間での争いを避ける。
事実、ミーレやレミーはこの数百年において操られていた時を除き、一度も戦闘を行っていない。
その数百年ぶりの戦闘が対魔女というのには些かブランクがあり過ぎた。


「... ...ミーレ」


レミーはそんな妹のただならぬ気配を感じてか、声を掛けるが。


「くう~! 燃えてきた!」


ミーレは久しぶりの戦闘に興奮を隠しきれずに口から大量のヨダレを流し、まるで、飢えた野犬のように対象を見やる。


「やれやれ。あんた、無理するな。あたしが合流するまで待つんだよ」


「アハハ! どうかな~?」


ミーレは右手に伝説の魔具の一つである”八首の多頭龍の便所の棒”を出現させ、ゴーレム幼女の元まで自身を転移させる。


「... ...死ぬんじゃないよ」


虚ろな瞳でミーレを見送った後、レミーは足元に大きな六芒星を出現させ、片膝をついて詠唱を始めた。

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