異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。
第128話お母さん! 第五回戦は3ON3!⑩
タイムを取ったのはフリースローの前。
当然、試合は俺達のフリースローから再開される。
そして、フリースローが終わった後には反対のコートまで再び移動し、もう一度、俺達のオフェンスから始められる事が出来る。
フリースローも得られて、攻撃権も与えられる事に加え、一点ビハインドのハンヌ陣営にとっては苦しい展開だ。
しかし、何故か向こうには焦りの色はなく、むしろ、この試合には絶対に勝てる。
という自信すら伺える。
「随分と結束力があるみたいね。仲良しこよしはいいわよね~」
野次のつもりなのか鈴音が嫌な女を演じる。
特にそんな事言われても俺はイラッとしないんだけど。
「鈴音。仲間はいいわ。時には窮屈だけど苦しい時に分かち合える」
天音は落ち着いた目で鈴音を見やる。
従順な犬であった天音に説法を聞かされた事が癪に障ったのか、脇に居たトムの腹を小突いた。
「... ...ふう」
先ずは心を落ち着かせる為に深呼吸。
このフリースローは誰がどう見ても超大事。
絶対に外す事は許されない。
... ...でも、俺、こんな時、いつも外すんだよなあ。
またゴールが小さくなったらどうしよう。
指のかかりが悪くてシュートを外したらどうしよう。
そもそも、真っ直ぐ打てない可能性もある。
色々と考えたら足が震えた。
「花島! とりあえず、頑張ろう!」
ホワイトからはまるで天使のように微笑み、弱気な俺を応援してくれる。
恐らく、ホワイトの身長が俺よりも小さかったら俺はヴァ二アルではなく、ホワイトと結婚していたかもしれない。
「お、おう! 任せておけ!」
膝を曲げ、ボールを胸の前に持っていき、頭の上にボールを掲げる。
風はなく、眩しすぎる光も、俺を非難するような野次もない。
この素晴らしい状況はゴールを決めろと神から言われている気がした。
直径23.2cmの革製のボールを紙飛行機を飛ばすように優しく押し出す。
遅くもなく、早くもなく、ボールは空を泳ぐ魚のように宙を舞っている。
「入れ!!!」
ボールにもちろん意思はない。
声を掛けたところで意味がないのは重々分かっている。
ただ、自然と気持ちが声になってしまった。
そして、魚が網に入るように革製のボールはゴールネットを通過した。
____わあああ!!!
トン!
とボールがオール下のフロアに跳ね返る音と同時に歓声が上がる。
糸が切れた操り人形のように緊張の糸が取れた俺はその場に尻餅をついてしまった。
「... ...良かった」
まだ終わってもいないのに涙が出てしまいそうになる。
「花島!」
「花島! やったな!」
ホワイトや天音が俺の腕を掴んで立ち上がらせる。
いや... ...。
もう少し休みたいんだけど... ...。
立ち上がった際にベンチにいたシルフと目が合った。
シルフは俺がフリースローを決めたからと言って、特に表情を変えていない。
むしろ、早く立ち上がらない俺にイライラしていらっしゃる。
今度、あいつに言ってやろう。
俺は褒めて伸びるタイプだぞ____と。
審判からボールを貰い、俺達のオフェンスから試合を再開する。
得点板には15:17の2で割り切れない数字が並ぶ。
向こうが魔法を使う事が出来るのは残り二回。
こちらも同じく二回。
第三ピリオドの時間も残り少ない。
ボールをキープし続け、第三ピリオドを終わらせる作戦だってある。
そうだ... ...。
ここは体力を温存するためにも攻めではなく、守りの姿勢を取ってはどうだろうか?
俺は恐らく、大金を掴んだら貯金をするタイプだ。
堅実という言葉がピッタリである。
ただ、その堅実さというのは見透かされ、足元にジッと潜んでいた蛇に気付かなくなる。
そして、その蛇が喉元まで到達した時に初めてその存在に気付くのだ。
「___花島!」
確かに天音からパスを受け、両の手でボールをガッチリと掴んだ。
しかし、今、そのボールは俺の頭上を舞っており、そのボールを奪取しようと大きな翼竜のような影に俺の身体は飲まれてしまう。
「ミーレ!!!」
影の正体である鈴音は空中でボールをキャッチし、コートに足が着く前にミーレにパスを出す。
パスを受けたミーレは足元を確認することなく、ボールをゴールに向けて放った。
____パスッ!
ボールが宙に置いてからゴールネットを通過するまで僅か5秒ほどだっただろうか。
後ろを振り返るとゴールネットを通過していたボールがコートの上で跳ねていた。
ミーレがシュートした位置を見ると2Pシュートラインの少し後ろ。
当然、今の得点は文句なしの2点であった。
「___くっ!」
唇を強く噛む。
真剣勝負での恐れや逃げは強者にとっては絶好の攻め時である。
弱気になってはいけないと頭では分かっていたにも関わらず、それを自ら提示してしまった... ...。
自身の不甲斐なさに気持ち悪さすら覚える。
「花島! まだ、負けた訳じゃない! 勝つんでしょ!?」
「... ...ホワイト」
情けない... ...。
俺はホワイトに何度助けられれば良いのだ。
こんな事を続けていれば自分を変えられない。
自分を変える為には自分が動かなければ始まらない。
先ずは目的に向かって闘志を見せろ。
虚言でもいい。
無理な事でもいい。
考えろ。
自分が何になりたいのか、そして、自分を震い立たせろ。
声に出せ、気持ちを! 目標を!
「___絶対に勝つぞ!!!」
          
当然、試合は俺達のフリースローから再開される。
そして、フリースローが終わった後には反対のコートまで再び移動し、もう一度、俺達のオフェンスから始められる事が出来る。
フリースローも得られて、攻撃権も与えられる事に加え、一点ビハインドのハンヌ陣営にとっては苦しい展開だ。
しかし、何故か向こうには焦りの色はなく、むしろ、この試合には絶対に勝てる。
という自信すら伺える。
「随分と結束力があるみたいね。仲良しこよしはいいわよね~」
野次のつもりなのか鈴音が嫌な女を演じる。
特にそんな事言われても俺はイラッとしないんだけど。
「鈴音。仲間はいいわ。時には窮屈だけど苦しい時に分かち合える」
天音は落ち着いた目で鈴音を見やる。
従順な犬であった天音に説法を聞かされた事が癪に障ったのか、脇に居たトムの腹を小突いた。
「... ...ふう」
先ずは心を落ち着かせる為に深呼吸。
このフリースローは誰がどう見ても超大事。
絶対に外す事は許されない。
... ...でも、俺、こんな時、いつも外すんだよなあ。
またゴールが小さくなったらどうしよう。
指のかかりが悪くてシュートを外したらどうしよう。
そもそも、真っ直ぐ打てない可能性もある。
色々と考えたら足が震えた。
「花島! とりあえず、頑張ろう!」
ホワイトからはまるで天使のように微笑み、弱気な俺を応援してくれる。
恐らく、ホワイトの身長が俺よりも小さかったら俺はヴァ二アルではなく、ホワイトと結婚していたかもしれない。
「お、おう! 任せておけ!」
膝を曲げ、ボールを胸の前に持っていき、頭の上にボールを掲げる。
風はなく、眩しすぎる光も、俺を非難するような野次もない。
この素晴らしい状況はゴールを決めろと神から言われている気がした。
直径23.2cmの革製のボールを紙飛行機を飛ばすように優しく押し出す。
遅くもなく、早くもなく、ボールは空を泳ぐ魚のように宙を舞っている。
「入れ!!!」
ボールにもちろん意思はない。
声を掛けたところで意味がないのは重々分かっている。
ただ、自然と気持ちが声になってしまった。
そして、魚が網に入るように革製のボールはゴールネットを通過した。
____わあああ!!!
トン!
とボールがオール下のフロアに跳ね返る音と同時に歓声が上がる。
糸が切れた操り人形のように緊張の糸が取れた俺はその場に尻餅をついてしまった。
「... ...良かった」
まだ終わってもいないのに涙が出てしまいそうになる。
「花島!」
「花島! やったな!」
ホワイトや天音が俺の腕を掴んで立ち上がらせる。
いや... ...。
もう少し休みたいんだけど... ...。
立ち上がった際にベンチにいたシルフと目が合った。
シルフは俺がフリースローを決めたからと言って、特に表情を変えていない。
むしろ、早く立ち上がらない俺にイライラしていらっしゃる。
今度、あいつに言ってやろう。
俺は褒めて伸びるタイプだぞ____と。
審判からボールを貰い、俺達のオフェンスから試合を再開する。
得点板には15:17の2で割り切れない数字が並ぶ。
向こうが魔法を使う事が出来るのは残り二回。
こちらも同じく二回。
第三ピリオドの時間も残り少ない。
ボールをキープし続け、第三ピリオドを終わらせる作戦だってある。
そうだ... ...。
ここは体力を温存するためにも攻めではなく、守りの姿勢を取ってはどうだろうか?
俺は恐らく、大金を掴んだら貯金をするタイプだ。
堅実という言葉がピッタリである。
ただ、その堅実さというのは見透かされ、足元にジッと潜んでいた蛇に気付かなくなる。
そして、その蛇が喉元まで到達した時に初めてその存在に気付くのだ。
「___花島!」
確かに天音からパスを受け、両の手でボールをガッチリと掴んだ。
しかし、今、そのボールは俺の頭上を舞っており、そのボールを奪取しようと大きな翼竜のような影に俺の身体は飲まれてしまう。
「ミーレ!!!」
影の正体である鈴音は空中でボールをキャッチし、コートに足が着く前にミーレにパスを出す。
パスを受けたミーレは足元を確認することなく、ボールをゴールに向けて放った。
____パスッ!
ボールが宙に置いてからゴールネットを通過するまで僅か5秒ほどだっただろうか。
後ろを振り返るとゴールネットを通過していたボールがコートの上で跳ねていた。
ミーレがシュートした位置を見ると2Pシュートラインの少し後ろ。
当然、今の得点は文句なしの2点であった。
「___くっ!」
唇を強く噛む。
真剣勝負での恐れや逃げは強者にとっては絶好の攻め時である。
弱気になってはいけないと頭では分かっていたにも関わらず、それを自ら提示してしまった... ...。
自身の不甲斐なさに気持ち悪さすら覚える。
「花島! まだ、負けた訳じゃない! 勝つんでしょ!?」
「... ...ホワイト」
情けない... ...。
俺はホワイトに何度助けられれば良いのだ。
こんな事を続けていれば自分を変えられない。
自分を変える為には自分が動かなければ始まらない。
先ずは目的に向かって闘志を見せろ。
虚言でもいい。
無理な事でもいい。
考えろ。
自分が何になりたいのか、そして、自分を震い立たせろ。
声に出せ、気持ちを! 目標を!
「___絶対に勝つぞ!!!」
          
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