異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第121話お母さん! 第五回戦は3ON3!③

___ピー!!!


「はあはあ... ...」


「花島! ベンチに戻ろう!」


「あ? あ、ああ... ...」


得点の掲示板には9:2の数字が並べられている。
俺は天音に声を掛けられるまで第一ピリオドが終了したことを気付かなかった。
それだけ、疲弊していたのだろう。


ベンチに戻るとシルフが水を用意しており、仏頂面で差し出してきた。


「ん! 時間無いんだから早く飲んで、作戦会議を始めるわよ」


「え? あ、そうだな」


これは飴と鞭で言う、飴を貰ったのだろうか?
いつになくシルフが優しくしてくれたので裏があるのではないか?
と勘ぐりながら、水に口を付ける。


「ん!? この味は... ...」


血液が循環し、高鳴りをみせていた心臓がさらに強く鼓動する。
疲弊していた身体には力がみなぎり、マイナス気味だった感情も高揚し、とても気分が良く、身体が軽く感じる。


「シルフまさか... ...」


シルフは不敵な笑みを浮かべ、脇にいたヴァ二アルの手を取り、矢面に出す。


「ええ。ヴァ二アルの体液を水の中に混ぜたわ」


「ちょっと! シルフ! 内緒にしてって言ったじゃない!」


やはりそうか... ...。
魔力を吸収するサキュバスであるヴァ二アルの体液は若干の魔力が含まれている。
魔女などの魔力が元々、強い存在からしてみれば感知出来ないほどの魔力量だが、普通の人間や魔力を持たない種族からしてみれば莫大なエネルギーだ。


以前、ホワイトシーフ王国の人間に飲ませ、復興作業を行わせた時は通常時の5倍ほどの作業量をしてみせた。
つまり、強大な魔力を取り込めば力の弱い存在は死んでしまうが、ヴァ二アルの体液として中和された魔力であれば逆に身体機能などを大幅に上昇させることが出来る。
簡単に言うと、天然のドーピング剤みたいなもん。


「あらら。おっきくなっちゃった」
「これは... ...! まるで若い時みないに盛って... ...。いや! 力がみなぎります!」


性欲の強い天音は更に性欲が上がったようだ。
天音は見た目は元々、三十代に見えなかったのでそこまで姿形は変わらなかった。
若干、肌艶が良くなったかな?
って程度。


ホワイトは身体が今よりも大きくなったのだが、前にヴァ二アルの体液を飲んだ時よりも顕著な変化はない。
これは憶測だが、飲むたびに効果の幅が小さくなるのではないか?
だとすると、ヴァ二アルの体液には回数制限があり、最終的には効果が0になってしまう恐れがある。
これは魅力的な秘薬だが、使いどころを考えなくてはいけないな... ...。


それにしても、ヴァ二アルの体液を初めて飲んだが、リポEみたいで癖になる味だな。
これはこれで中々美味い。
俺がゴクゴクと喉を鳴らしながら与えられた水を飲み干した頃、作戦会議をしていたシルフは驚いて声を上げる。


「ちょっと! 花島! あなた聞いて... ...。え? 誰!?」


シルフが俺を見て息を吞む。


「あ? 何? 早く作戦会議しようぜ」


「いやいや! 作戦会議どころじゃないよ!」
「トムみたいだ... ...」
「アハハ! 変な顔~!」


あ?
何だこいつら、こんな緊迫した状況下でなにをふざけているんだ?
もっと、真面目にやれよ!


俺が全員にイライラとしているとヴァ二アルが手鏡のようなものを手に取り、差し出してきた。


「これ何?」


「鏡! 早く自分の顔見てよ!」


「顔... ...?」


ヴァ二アルから鏡を受け取る。
見たってどうせ、いつも通りの素敵なお顔が写るだけだぞ。


「___!? なんじゃこりゃあああああ!!!!」


背中が180度折りたたむ事が出来る生命体だったら俺の頭は今頃、地面に背面反りの状態でついていただろう。







          

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