異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第64話お母さん! 魔法少女達の過去⑤

「おい! お前! リズが困っているだろ! 早く帰れ!」
「そうだ! 早く帰ってママのオッパイでもしゃぶってな!」


隠れていろと言われていたにも関わらず、ミーレとレミーが家の奥から飛出し、兵士に罵声を浴びせ家から出ていくように促す。
それにしてもこいつらの口の悪さは生まれつきなんだな... ...。


「リズ。いつからここは保育園になったんだ?」


「ふん。勝手に上がり込んで来るから野良猫のように餌をやってるだけだよ」


「へえ~。中々、なついてる野良猫だこと」


兵士は不敵な笑みを浮かべながらミーレとレミーを見やる。


「おい! お前! いくら私の事が可愛いからってそんなに見るな!」
「そうだ! そうだ!」


ミーレとレミーは屈強そうな兵士に臆するなく虚勢を張る。


「おい。あんた、こいつらに手を出したら分かってるだろうね」


リズは兵士の不穏な雰囲気を肌で感じたのか釘をさすように兵士に忠告。
それを受けてか兵士は今までにないようにひょうきんな態度で。


「ハハハ。まあまあ、俺は国王から言われてお前を勧誘しに来ただけだぜ? それにこう見えても俺は国で一番の兵士。妻も子供もいる。そんな俺がこんな幼い子をどうこうする訳ないだろう?」


「さあ、どうだかね。男って生き物は立派な肩書を持っている奴ほど信用出来ないね。何も持たないダメダメな奴の方がまだマシさ」

リズの発言は的を射ていたのか、兵士は顔をしかめ。


「そうかい。まあ、また来るよ」


「もう来なくていいよ。国王______ロベルトにも言っておきな。あんたのような男の世話をするのはもう御免だよって」


「ったく。痴話喧嘩に付き合わされるのも疲れるわ」


玄関の扉がギイーと音を立て閉まり、兵士の男は深い闇に包まれた森に戻っていく。
彼は恐らく、相当な手練れに違いない。
扉を閉め、しばらく経ってからリズは今まで張っていた緊張の糸を解くように「ふう~」と大きなため息をついた。


「ごめんなさい。リズ。出て来るなって言われていたのに... ...」
「リズが心配でね... ...。ごめんね」


二人はダムが決壊するように瞳から大量の涙を流し、リズは黙って抱きしめる。


「あたしの言う事なんて聞きやしないんだから... ...」


俺が見ている場所からはリズの背中しか見えなかったが、ミーレとレミーを抱きしめる姿は親子のように思えた。
そして、再び、頭の中で若いリズの声が響き。


『ここからが話の本題。私の判断がミーレやレミーの全てを奪ってしまったんだ... ...』


リズの声は震えており、このシーンをまたぐように俺の視界は再びブラックアウト。

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