異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第50話お母さん! シルフのエロを止めます!

眠っているシルフを二階に残し、今のうちに状況を把握しておかなければならない。
何故、シルフは千鳥足になってロレツが回らず、淫乱なメス豚へと成り下がってしまったのか。
何故、ホワイトの母親の態度が豹変して、俺に敵意を見せてきたのか。
そして、何故、大丈夫おじさんは外にいたのに平然と俺の隣に座っているのかだ。


大丈夫おじさんを見ると、擦れるような小さな声で。


「... ...大丈夫」


いやいや、何が大丈夫だか分からないよ。
それに、声ちっさ。
ホワイトとホワイトの兄貴は大丈夫おじさんに目を配る様子もない。
もしかして、俺にしか見えていないのか??


「大変な事になったね。シルフもお父さん、お母さんも... ...」


「お・俺のせいじゃないか・らな!!」


「お兄ちゃんがマンドラゴラなんて投げるからでしょ!!」


「ん? ホワイト、マンドラゴラってあの引っこ抜くと「ぎゃー!!!」って声出して叫ぶ大根みたいなやつか?」


マンドラゴラが分からない人はYAHOO知恵袋で調べるか、ハニー・ポッターを見てくれ。


「そうそう。大根ってのは分からないけど」


「ま・マンドラゴラのエキスを飲むと、よ・酔っぱらった感じになるんだ。お・俺はたまに無性に不安になって寝れない時に少しだけ、ま・マンドラゴラを飲む」


なるほど。マンドラゴラは酒の代用品って訳か。
エキスが白い液体って... ...。
そこをツッコミ入れると変な空気になりそうだから止めよう。


シルフは投げられたマンドラゴラのエキスが、偶然、口に入ってしまったようだ。
あの、酒乱っぷりを見て、一緒に酒は飲みたくない。
では、ホワイトの母親の態度が急変した理由は??


ホワイトに尋ねると「横にマンドラゴラが転がっていたから、恐らく、マンドラゴラを飲んだのだろう」との事。

マンドラゴラこえー。
みんな、酒乱になるじゃないか。
よくこんな物飲むなこいつら。
と巨人の一家を軽蔑した。


「でも、不思議ね... ...。マンドラゴラを飲んでも、こんなに錯乱状態になる事はないのだけれど」


「う・うん。た・確かに。少しほろ酔い気分になるだけだ。お・お母さんはそれに、いつも、マンドラゴラ飲んでいたから、こ・こんなになるはずないんだけど... ...」


「何か理由があるんじゃないのか??」


「理由?? うーん」


ホワイトは腕を組みながら、考える。
組んだ上に大きな胸が丁度よく乗っかる。
ホワイトの兄を見ると、すね毛をコロコロとチネリ、毛玉のようなものを作っている。
大丈夫おじさんを見ると、腕に出来たカサブタが気になるのか、カサブタを取ろうとしている。


へえ~。
みんな自由だな。
俺はこの自由さに憧れた。
緊迫したこの状況に飲まれないハートを持つ三人。
嫌いじゃない。
こういう奴ら嫌いじゃないよ。


でも、待ってても妙案が出なさそうなので俺が口火を切る。


「そういえば、マンドラゴラはどこから取って来たんだ??」


「う・裏山... ...」


「じゃあ、その場所に行ってみるのがいいんじゃないか?」


「そうね。そしたら、何か掴めるかもしれないわね」


「お・俺は眠いから、お・お前らで行って来いよ」


「はあ!? お兄ちゃんがマンドラゴラなんて持って来たからこうなったんでしょ!?」


「まあまあ、兄弟喧嘩は世紀末が来てからやってくれ。今は、二人が酔っぱらった理由を見付けるのが重要だろ?」


俺はドヤ顔で巨人の二人と大丈夫おじさんにクール系主人公のように語った。
まあ、こいつらより、年上だし俺が仕切るのは当然だね。
大丈夫おじさんを見ると小さな声で「大丈夫」と言ってるし。


「は・はあ!? な・なんで、お・お前に指図されなきゃ、い・いけないんだよ!」


「え!? 仕切っちゃダメなの!?」


「な・なんか腹立つ! お・お前の顔!」


「顔は関係ないだろ! お前だって、いちいち、どもってるんじゃないよ! そんな、デッケエ体してんのに情けない!」


「な・情けないのは、お・俺も分かってるよ!!!」


怒りにまかせ、腕を振り下ろし、近くにあった木で出来たテーブルをホワイトの兄はたやすく破壊した。
こわっ... ...。こんなの当たったら即死だ... ...。
やっぱ、巨人族って怖い生き物なのかな... ...。

腰が、ガクガクと震える姿をホワイトに見られた。


「... ...花島? 今、お兄ちゃんの事怖いと思ったよね?」


ホワイトは前にも見た事がある表情で俺にそう問う。

あー。そうだ。
ホワイトが街の住民達から迫害を受けていた時と同じ表情だ。
そんな、表情見せるなよ。
まるで、俺がお前を迫害していた奴らと同じ表情をしているみたいじゃないか。

「え? い・いや... ...」


ホワイトの兄にドモるなと言ったくせに、ホワイトの発言があまりにも的を射ていたのでドモってしまった。
情けない... ...。
ホワイトに悲しい表情をまたさせてしまった。


考えていてもしょうがない正直に話そう。


俺は襟を正す。


「すまん。正直、怖いと思った」


「そうだよね。うん。私が逆の立場でもそう思う」


そう語るホワイトは、実際の年齢よりも少し老けて見える。
この年で既にいろいろな事を知ってしまったんだな... ...。

「少しビックリしただけだ! お前らを嫌いになったりはしないよ!」


「花島は優しいね... ...。人間が、みんな花島みたいな人だったら良いのに... ...」


今、住民達からの迫害はない。
それは、シルフが街の住民達に、ホワイトをイジメるな!
的な事を言ったからだ。
ただ、ホワイトに対する恐怖の感情は住民達から無くなる事はなかった。


迫害やイジメは確かになくなった。
けれども、根本的な何かは変わらない。


言葉や暴力は無くす事は出来る。
ただ、ホワイトに対する視線や空気感を変える事は中々難しい。
気付きにくい事だからイジメを止める人間の目にも分かりにくい。


ホワイトも助けてもらっておいて、更に注文を出すようで、言いにくかったのだろう... ...。


シルフに悪気はなかったと思う。
しかし、それは、ホワイトを中途半端な形で助けた事になる。


中途半端に助ける事は、ハッキリ言って、助けられる側が迷惑だ。
いっその事、地獄の底まで落ちた方がマシ。
希望の光を一瞬でもちらつかせる。


これが、一番ダメ。


地獄なら地獄。
天国なら天国。


間なんてない。


ホワイトの兄を見ると目を潤ませている。
殴った拳が痛いからではなさそうだ。
どうやら、ホワイトの兄も、妹と同じような差別を人間から受けたのかもしれない... ...。


「お前ら兄弟くらっ... ...。めっちゃ、暗いな」


「え? あ、うん... ...。暗いかもね」


「いや、そういう所だよ! いいじゃん! ありきたりな励ましのセリフかもしれないけど、そんな人間達の事なんて気にするなよ!」


「う・うん。そうだよね。あたし達、気にし過ぎかもね... ...」


「だから、暗いって! 俺を見ろよ! この世界に来て、どんだけ、鼻がデカイ事でいじられてんだよ! でも、俺はそんな事でイチイチ落ち込んだりしないぞ!」


ゆっくりとホワイトの兄が口を開く。


「お・お前と一緒にするな... ...」


「いやいや、一緒だよ! 確かに、お前らの方が色々と言われたかもしれない! でも、それを気にしてたら楽しくないじゃん! 相手が自分の事嫌いだからって逃げちゃダメだよ! 強引にでもいいから、話したり、何か一緒にしろよ! そうすりゃ、楽しくなるかもしれないだろ!」


元々、俺は熱い人間だ。
今は、テンションに任せて、色々と言っているが、後で後悔すると思う。


「よ・余計に嫌われたら?」


「それは、しょうがないよ! もう、お前が本当のクズか相手がクズかの二択! いいじゃん! ハッキリしてて! お前、力強いんだし、街のみんなに嫌われたら、いっそ、街のみんな殺せよ!」


「こ・殺すなんて、で・出来る訳ないだろ... ...」


「じゃあ、もう、一生、家から出ないで、右手が恋人で右手と結婚してろ! 腹立つな!」


「ご・ごめん... ...」


こいつ、さっきまでの威勢はどこに行った。
デカイ図体してるくせに、俺みたいな下等生物に謝るなんて狂気の沙汰。
根本的な所から直す必要がありそうだ。


「まあ、俺はお前らの事、何があっても嫌いにはなったりしないよ。それじゃ、嫌か?」


「... ...花島」


ホワイトは鼻声で俺の名前を呼んだ。
別に風邪を急に引いた訳ではない。
良い事を言って、理想的な締め方をしたと内心、俺は満足していたのだが空気の読めない野武士が。


「お・俺は、嫌だ」


は? なに、こいつ、お前も「... ...花島」とか言ってればいいじゃん。
可愛いくない巨人だ。
まあ、正直な所は嫌いじゃない。


ホワイトの兄の表情はさっきより柔らかい表情をしていたので否定的な言葉を言われても何も感じなかった。

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