異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を立て直す。

とっぱな

第35話お母さん! 前日譚!

____「シルフの部屋」____



□ □ □



この国を建て直すという事を引き受けた俺は、何故、この国が衰退していったのか王女に尋ねた。


「ところでさ、なんでこの国はそんなに落ちぶれていったんだ?」


シルフは『落ちぶれ』という事実が気に食わなかったのか、眉間にシワを寄せて睨みつけてきた。
しかし、街の荒廃は確かで、冷静にそれを見つめ直すと「ふう~」っと深いため息をつき。


「... ...昔はね、この国にも王がいたの」


俺はベッドの脇に飾られているシルフと両親の写真に視線を向ける。


「そう。絵画に書かれているのが、私の両親であり、この国の王だった人よ。この国は以前、炭鉱の街として栄えていたの。ゴーレムの森の奥に洞窟があってね。だけど、父... ...。いや、国王の突然の命令で数年前に廃坑となってからは人口も減っていって、段々と、今の状態になっていったの... ...」


「お前の父親アホなの?」


シルフはムッとした顔で俺を見やる。


「アホではなかったはずよ。むしろ、頭は凄く良かったし、先見の目もあった。だから、理由なく炭鉱を閉山するとは考えにくいのよ... ...」


「で、その国王はどうしたんだ?」


「7年前に亡くなってしまったわ。母上もあとを追うように... ...」


「... ...そうか」


シルフにこれ以上、両親の話を聞くと泣きだすのではないか?
と考え何も聞かず、シルフと目を合わせないでいた。
暖炉で燃えている薪がパチパチと音を立てて、静寂を紛らわそうとしている。


「あなたは______」


「あのさ、これから街を一緒に再建していくんだから、あなたとかお前とかやめないか?」


シルフが発言しかけたのを俺は止めるように言葉を発し、提案をする。


「... ...それもそうね。じゃあ、あたしの事はシルフ様って呼んでいいわよ。私は何て呼べばいいの? 生ゴミ?」

おい。
お前がシルフ様で俺が生ゴミってどんだけ格差社会なんだよ。
じゃあ、俺もお前の事、便器って言ってやるぞ。


「おい、二十歳の頃の俺だったら泣いてるぞ。俺は花島つとむだ。花島様・つとむ様どちらで呼んでもらっても構わんよ。あ、あと、別に俺はロリコン属性ではないから『お兄ちゃん』って呼ぶのは勘弁な」


「お・兄ちゃん?? どういう意味? 何か卑猥に聞こえるわね」


「兄弟の事だよ。アニとか言わない? まあ、時と場合と立場によっては卑猥な言葉として使用されるから、あながち、間違いではないな」


「あー。兄上の事ね。異世界の言葉は面倒ね」


異世界の人に俺の故郷を異世界扱いされ、何だかむずがゆく感じた。

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