勇者なしで魔王討伐 ~チートと愉快な仲間と共に~

夏季

22話 宴②

紹介が終わったあと、待ちに待った食事タイムだ。
俺たちSクラスの食事は魔王の幹部を討伐したということでだいぶ豪華になっている。名前は知らないが黒い粒みたいなのとか鳥を丸々焼いたものとか美味しそうなものがいっぱいだ。俺とカエラとハルは特にしばらくお金が無く大したものを食えなかったからな。今回の幹部討伐も元々は金稼ぎのために受けた討伐クエストの相手だった。だから今いっぱい食べようと思ったのだが……


「ダメだ……気持ち悪くて食える気がしない……」
「どうしましょ……せっかくの……豪華な食べ物が……」


俺たちは今昨日のお酒のせいで酔ってしまい、ご飯が食べれる気がしないのだ。ハルのやつ美味しそうにわんさか食ってやがる……


「ハル……お前全部食べんなよ……!」
「さすがに食べないよー、でも残しても食べれないでしょー、……あっ!」


急にハルが何かに気づいたのか目をぱっと開いた。


「私の回復魔法でその酔いどうにかならないかなー?」
「なるほど……!やってみてくれ……!」


ハルは俺達の頭に手をおきブツブツと何かを呟いた。するとみるみると気持ち悪さや頭のガンガンしたものが消えていった。


「おぉ!楽になったぞ!ありがとーハル!」
「さすがハルね!助かるわ!」


俺とカエラはそう言ってハルに抱きついた。


「きゃー!カエラはいいけどジンはやめてー!」


ちっ、なんだよ。今ならごまかせると思ったのに。でもマジで嫌な顔してるからさすがに辞めておこう。さすがにショックだが今はそんなのどうでもいい。とにかく飯だ!


「よし!カエラ、たべるぞ!」
「どっちが多く食べれるか勝負よ!!」
「おー、なら私もまぜてー!」
「ハルもか!いいぞ、じゃあスタートだ」




そう言うと俺達はすごい勢いで料理にかぶりつく。お行儀が悪いかもしれないが仕方あるまい。


「行儀が悪いですわ」
「まぁ仕方ないよ、ジン達は前までほとんど食べれなかったんだからね」
「でもなんかニャ……」
「オチが見えてるな」
「そうですね……」


大食いチームとは別にお行儀の良いチームでは雑談をしながらご飯を食べている。会話の内容はほとんどが幹部討伐の話だ。その中でも多いのがジンのことだ。


「そういえばこの前のジンすごかったニャ」
「む、すごかった。馬鹿にされたあとだが、スピードもパワーも私達とは桁違いだ。正直私達がいなくても勝てたのではと思ってしまった。」
「そうだニャ」


センは戦いの時とは全く違って真剣な顔で言う。マロンとセンは接近戦で一番近くで見てたから思うところもあるのだろう。


「ですわね……、まさかあそこまですごいと思っていませんでしたわ」
「そうですね、しかもあの状態で長時間いられるんですよね。さすがに敵わないです」
「僕も少し嫉妬してしまったよ」


センやマロン以外にもそう思ったらしい。多分今馬鹿みたいに食っているカエラとハルもそう思っているのだろう。全員練習の時から地味にジンの強さを感じていたみたいだ。
しかし、今後さらにその差を見せつけられることになる。



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