俺がこの世に生まれた意味

高木礼六

勘違い

三人は空を眺めたまま、石にでもなったかのように静止している。

本当に空だ。何の疑いようもなく、ただただ青く広く澄み渡っている。

まぎれもない空だ。


「みんな、初めての魔窟に驚くのも仕方がないけど、どうやら敵のお出ましのようだ。」

「!?」


三人はその呼びかけに、停止していた脳に電撃が走ると、本能的に戦闘態勢に入った。

上を見続けていたせいで、気づけば、四方を悪魔どもに囲まれてしまっている。数はざっと見ても百はくだらない。

そのどれもが、やせ細った四肢を持ち、 子供ほどの背丈しかない緑皮の悪魔 、 地上にも広く生息しているゴブリンだ。

ただ、持っている武器は個体により様々、木の棍棒を持っている奴もいれば、石の盾と剣を持った奴、もしくは何も持たずに素手のままの奴などそれぞれ違う。

ゴブリンは悪魔の中でも最低級に相当する。つまりは最弱の悪魔。いくら束になろうと関係がないほど弱い部類だ。

アースカティアたちは敵が何であるのかを理解すると、損したとばかりに構えを解き、安堵の息をついた、が、その三人の様子に、英雄グランバイトはその形のいい眉をひそめた。


「君たち何をしているんだ?悪魔がいるんのになぜ構えを解いた?死にたいの?」

「死にたいだなんて、相手はあのゴブリンだろ?あんな奴らがいくら束になっても関係ないって。」

「そうかしら。あれだけならララ一人だけでも十分かしら。」

「君たち、まさか聞いていないのか?」

「聞いていないって、何を?」


三人はこの時、大きな過ちと勘違いを犯していた。

このゴブリンはゴブリンであって、三人が知るゴブリンではない、魔窟のゴブリンなのだ。

地上の者とは似て非なる存在。

その証拠に、グランバイトはゴブリン相手になぜか血相を変えている、いや、これはゴブリンにではなく、恐らく、油断している三人に.....


「グラァァァ!!」


ゴブリンの群れは一斉に迫ってきた。

それはただの突進、だが、三人の既存の知識とは全然違う。

明らかに接近するスピードが違う。

踏み込む一歩一歩が地面を削り、足音を鳴らし、その醜顔でこちらを睨みつけている。


「魔窟の悪魔は、強い。」


そして、グランバイトが言葉を放つと、視界に青い筋が走り、気づくとそこには、一匹も悪魔がいなかった。

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