俺がこの世に生まれた意味
英雄の登場
「今、なんて言った?」
「君たちのクエストに、英雄、グランバイト・アストライアーを同行させると言ったんだ。」
ここに来てから、都合三度目、驚かされてばかりだ。
あまりにも信じられることではなかったので一度聞き直してみたが、やはり聞き間違いではなかったのか。
開いた目が塞がらない。
だが、グランバイトが同行するとなると問題がある。彼が今遠征中であるということだ。
当の本人がいないのならば本末転倒、この話の意味がない。
「いつまでそうやってるつもりだ?早く出てこい。」
ユパはそうやって誰もいない方に喋りかけ始めた。
アースカティアもユパと同じところを向いてみるが何もない、目をこすってみてもやはり何もない。
側から見れば老人の独り言にしか見えない。
「はいはい、分かりましたよ、先生。」
「!?」
突然、声がした。
場所はユパの視線の先、知らない聞いたことのない声。人を惹きつける魅惑の声。
何もない場所、何もない空間、それが歪に捻れ、人が現れた。
黒一式、黒一色。髪も、瞳も、甲冑も、得物であるふた振りの長剣も、全てにおいて黒で統一されている。
背は高く、190センチは優に超えていて、顔つきを見る限り、あまり猛々しい筋肉の持ち主ではないと見える。
この人物を一言で表すのならば、これはもう一つしかない。
「わお、とびっきりのイケメンかしら。」
サラサラの髪、形のいい眉、整った鼻、宝石のように輝く黒瞳、綺麗な顎のライン。
どれを取っても一級品の素材だ。
その謎の男性はユパから三人に視線を移すと、微笑み、手を差し出してきた。
「やあアースカティアくん、ララちゃん、レレちゃん、よろしく。」
「あんたが英雄のグランバイト・アストライアーさんか?」
「ああ、如何にも。僕がグランバイト・アストライアー、でも、英雄なんてそんな大それたものじゃない。僕はただのしがない冒険者、君たちと同じだよ。」
「嫌味か。」
謎の登場を果たしたグランバイトはやけに親しみを込めて挨拶をしてきたが、アースカティアの質問に彼が謙虚に答えると、嫌味にしか聞こえない。
何故なら彼は世界が認める英雄なのだから。
アースカティアは眉を顰め、渋々グランバイトの手を取った。
それから順にララ、レレとも握手を交わし、ララはなんだかとても頬を綻ばせていた。
挨拶は一通り終わらせ、ここからは暗黙の質問タイムだ。
「ねえ、さっきどこから出てきたの?あれも魔法?」
レレが先陣を切った。
まず最初の質問としては当然だろう。あんな登場の仕方なら気にならない方が異常。気になって当然だ。
グランバイトはレレの質問の答えとして、手で丸の形を作った。
「ご名答。あれは魔法。正確には光の魔法だ。光を屈折させて、君たちだけに見えないように姿を隠していたんだ。」
「君たちだけってことは.......」
「うん、私とユナン様は最初からずっと見えてたよ。」
「まじかよ。それってかなりの高等魔法だろう。」
その通り、グランバイトが使った光魔法は俗に言う透明人間になる魔法だ。
球型範囲内の敵、味方全員を含めその姿を不可視にする。
これだけでも極めて希少な能力なのだが、グランバイトはそこから対象のみに的を絞ってみせた。
本来のこの魔法ならば、マイヤも範囲内に入り、彼を目視できなかったはず。
英雄の名が伊達ではない証拠だ。
「そんな、この程度なら、君たちの勤勉さをもってすれば成せるはずだ。不可能なんてないのだからね。」
「何?涼しい顔してまた嫌味か。訓練をしてなんの成果もなかった俺からすれば心が痛い限りだよ。」
「ああ、これはすまない。君を傷つけるつもりはなかったんだ。でも、これだけはもう一度言わせてくれ。」
グランバイトは決して嫌味で言っているのではない。
彼の言動は終始謙虚、それも三人に気を使ってからのものではなく心からそう思っているからだ。アースカティアもそれは理解出来ている。
冒険者としての実力もあり、人としての格も出来上がっている。
まさに完璧超人。
だが、かえってそれが、突っかかる要因になりうる。
グランバイトは表情を引き締め、その黒瞳でアースカティア、そしてララ、レレを見つめ言った。
「不可能なんてないのだから。」
揺るぎない実力、盤石たる信念、絶対的な確信。
この言葉こそが、グラルバイトをグランバイトたらしめ、今のグランバイトへと導いた、グランバイトそのものだ。
彼がその言葉を言うと、何故か全員が、自然と自分もそうであるかのように感じた。
「君たちのクエストに、英雄、グランバイト・アストライアーを同行させると言ったんだ。」
ここに来てから、都合三度目、驚かされてばかりだ。
あまりにも信じられることではなかったので一度聞き直してみたが、やはり聞き間違いではなかったのか。
開いた目が塞がらない。
だが、グランバイトが同行するとなると問題がある。彼が今遠征中であるということだ。
当の本人がいないのならば本末転倒、この話の意味がない。
「いつまでそうやってるつもりだ?早く出てこい。」
ユパはそうやって誰もいない方に喋りかけ始めた。
アースカティアもユパと同じところを向いてみるが何もない、目をこすってみてもやはり何もない。
側から見れば老人の独り言にしか見えない。
「はいはい、分かりましたよ、先生。」
「!?」
突然、声がした。
場所はユパの視線の先、知らない聞いたことのない声。人を惹きつける魅惑の声。
何もない場所、何もない空間、それが歪に捻れ、人が現れた。
黒一式、黒一色。髪も、瞳も、甲冑も、得物であるふた振りの長剣も、全てにおいて黒で統一されている。
背は高く、190センチは優に超えていて、顔つきを見る限り、あまり猛々しい筋肉の持ち主ではないと見える。
この人物を一言で表すのならば、これはもう一つしかない。
「わお、とびっきりのイケメンかしら。」
サラサラの髪、形のいい眉、整った鼻、宝石のように輝く黒瞳、綺麗な顎のライン。
どれを取っても一級品の素材だ。
その謎の男性はユパから三人に視線を移すと、微笑み、手を差し出してきた。
「やあアースカティアくん、ララちゃん、レレちゃん、よろしく。」
「あんたが英雄のグランバイト・アストライアーさんか?」
「ああ、如何にも。僕がグランバイト・アストライアー、でも、英雄なんてそんな大それたものじゃない。僕はただのしがない冒険者、君たちと同じだよ。」
「嫌味か。」
謎の登場を果たしたグランバイトはやけに親しみを込めて挨拶をしてきたが、アースカティアの質問に彼が謙虚に答えると、嫌味にしか聞こえない。
何故なら彼は世界が認める英雄なのだから。
アースカティアは眉を顰め、渋々グランバイトの手を取った。
それから順にララ、レレとも握手を交わし、ララはなんだかとても頬を綻ばせていた。
挨拶は一通り終わらせ、ここからは暗黙の質問タイムだ。
「ねえ、さっきどこから出てきたの?あれも魔法?」
レレが先陣を切った。
まず最初の質問としては当然だろう。あんな登場の仕方なら気にならない方が異常。気になって当然だ。
グランバイトはレレの質問の答えとして、手で丸の形を作った。
「ご名答。あれは魔法。正確には光の魔法だ。光を屈折させて、君たちだけに見えないように姿を隠していたんだ。」
「君たちだけってことは.......」
「うん、私とユナン様は最初からずっと見えてたよ。」
「まじかよ。それってかなりの高等魔法だろう。」
その通り、グランバイトが使った光魔法は俗に言う透明人間になる魔法だ。
球型範囲内の敵、味方全員を含めその姿を不可視にする。
これだけでも極めて希少な能力なのだが、グランバイトはそこから対象のみに的を絞ってみせた。
本来のこの魔法ならば、マイヤも範囲内に入り、彼を目視できなかったはず。
英雄の名が伊達ではない証拠だ。
「そんな、この程度なら、君たちの勤勉さをもってすれば成せるはずだ。不可能なんてないのだからね。」
「何?涼しい顔してまた嫌味か。訓練をしてなんの成果もなかった俺からすれば心が痛い限りだよ。」
「ああ、これはすまない。君を傷つけるつもりはなかったんだ。でも、これだけはもう一度言わせてくれ。」
グランバイトは決して嫌味で言っているのではない。
彼の言動は終始謙虚、それも三人に気を使ってからのものではなく心からそう思っているからだ。アースカティアもそれは理解出来ている。
冒険者としての実力もあり、人としての格も出来上がっている。
まさに完璧超人。
だが、かえってそれが、突っかかる要因になりうる。
グランバイトは表情を引き締め、その黒瞳でアースカティア、そしてララ、レレを見つめ言った。
「不可能なんてないのだから。」
揺るぎない実力、盤石たる信念、絶対的な確信。
この言葉こそが、グラルバイトをグランバイトたらしめ、今のグランバイトへと導いた、グランバイトそのものだ。
彼がその言葉を言うと、何故か全員が、自然と自分もそうであるかのように感じた。
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