俺がこの世に生まれた意味

高木礼六

何度あっても驚きを隠せない

「やあ、よく来てくれたね、三人とも。会うのは昨日ぶりか。」


初老の男性は大きな机を座りながら、そう言った。


「ユパさんよ、そんな挨拶はいいから、俺たちと手合わせしてくれないか?今なら、あんたが俺たちをここに呼んだ理由を教えたくなるはずだ。」

「ほう、昨日、あれほどコテンパンにやられたのにか?」


この人と会ってまず最初に思うのは、約束だ。

この先、力をつければここへ招待した理由を教えてくれると言った。

けれど、ユパは昨日の測定の話を引き出してきて、嫌な思い出をついてくる。

確かに、あの時は手も足も出ずにただただやられてしまった事実しかない。


「ち、違う、あれは、そのだな、そうだ!調子が悪かっただけだ。断じてやられたんじゃない。あんたの顔を立ててやっただけで、次ちゃんとやれば絶対に違う結果になる。な!レレ!」

「うん、そうだよ。」

「ふん、典型的な虚言的ハッタリだね。何を根拠にそんな自信があるのか不思議でたまらない。一日でそんなに変わるはずもない。」


アースカティアの見苦しい言い訳を聞いた後として、ユパの反応は至極正しい。

けれども、違う結果になるという言葉に、彼は一片の曇りもない自信を持っている。

何故なら、さっきまでやっていた魔法の訓練で、レレが驚異的成長を.....


「それに、もし、もしもだ。レレくんの魔法の成長がその根拠だとしたら。勘違いも甚だしいよ。あの程度で、私に認めされることはできない。」

「!?」


アースカティアは一瞬、思考が止まった。ユパが何を言っているのか理解できなかった。

なんで、レレの成長のことを知ってるのだろうか、

ここから訓練場まではそこそこの距離があるはず。

そんな場所にいた三人の訓練の様子なんて見ていない限り、レレとピンポイントに言い当てられないはずがない。

逆説的に、ユパが見ていたとしたら全てがうまく片付く。

アースカティアは一度止まった思考を再稼働させ、そう結論に至った。


「一応言っておくが、私はずっとここにいたよ。」

「!?」


またしてもアースカティアの耳を疑う発言が聞こえてきたのだが、今度はしっかりと聞き取れた。

けれどもやはり、驚きを隠せない、声が出ない、言い返せない。

目の前の男性は、どうして声に出していないのに、こっちが考えていることがわかったんだ?

心の中を読み取れるのか?この人はなんでも可能にしてしまうのか?

全くもって分からない。

この人の、素性、目的、真意、能力、年齢、もしかすると、姿や性別すらも分からない。
その全てが嘘で象られているのかもしれない。

なのに何故だ。一つだけ確実に、不確かだけどわかる。

彼は一つも嘘をついていない。

彼が発する言葉一つ一つに偽りが存在しない。

もし、彼がこの世の滅ぼすと突拍子もなく言ったとしても、この場にあるすべての人が信じてしまうかもしれない。

それほど、彼の言葉には確信と信念が詰まっている。

ユパは机に肘をつき、アースカティア、ララ、レレの異端児三人を見据え、口を開いた。


「話がだいぶ逸れたが、本題に入ろう。君たちのクエストについてだが、英雄を同行させる。」

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