俺がこの世に生まれた意味

高木礼六

光と雷水

「初めてだぜ、戦いでこんなに胸が踊るのはよ!お前もそうだろう、レレ!」

「うん、私もすっごく楽しい!」


交える一撃一撃に光と雷水が迸り、互いの体力が削られていく。

徐々に息が上がっていく両者、体中の熱がヒートアップしていき、体力とは反比例に気分がますます高揚していく。

訓練だということを忘れ、己が欲望のままに動き続け、これはもうただの娯楽。

成長というのはただの建前で、これは二人の欲求を満たすためだけのただの行為。

けれども趣旨とは外れたその行為も、成長するという点では結果的に繋がりを見せている。

削られる体力の中で、気分とともにもう一つ、集中力も上昇している。

迫り来る雷水の脅威に本能が命令を下し、迫り来る白光の破壊に神経が研ぎ澄まされる。

振り下ろされた光の大剣をギリギリのところで躱し、余波が地面を伝う。

そのまま身を反転させ、繰り出された雷の一閃を剣身で受け流し、雷鳴が大気を飲み込む。

両者一歩も引かない極限の状態。

二人はかつてないほどの実力を今ここで露わにしていた。

高まる集中力、激しさを増す二人の娯楽。


「強いな、レレ。まさかお前とこれだけ本気で戦えるとは、思ってもなかったよ。」

「私もだよ。ディグルと渡り合える力がレレにあったなんて、多分、レレが一番驚いてるよ。ほんと、魔法に、マイヤに感謝だね。」

「ははっ!違いねぇや。」


二人の娯楽は、周囲に余韻を残したまま、一時中断し、会話が成される。

アースカティアの発言は本心。
レレの発言も本心。


ーーこんな戦い、最高だ!


本当にこうなるきっかけを作ってくれた、今もまだ戻らない紫髪のギルド職員に感謝をしなくてはならないな。

そして、この温和な時間も束の間、少年の笑い声を皮切りに、再び、激戦の幕が上がった。

両者同時に地を蹴り、砂塵をあげる。

全身全霊をかけて、一撃一撃に力を込め、この一瞬一瞬を、一秒一秒をかけがえのない大切な時間として刻み込んでいく。

少女は自身の水の鎧を肥大化させ、一匹の龍を生み出した。

飛来する光波を、その青龍が噛み砕き、青龍の首を大剣で切り落とす。

一進一退の攻防。
勝敗がまるでわからない。

両者の胸が踊る、一歩も引かない、存分に今ある力を振るう。

青龍の首はたちまち再生し、失った光も輝きを取り戻している。

こんなもんで二人の戦いは終わらない。

青龍に雷を宿し、更に攻撃力を上げ、今日一番の攻撃が、少年に牙を剥く。

防御は不可能だ、これほどの質量と破壊力を前に、受け止めるのは愚策極まりない。

回避も無駄。躱したところでまた追撃が来る。

ならやるのは一つ。


「叩っ斬ってやる!」


アースカティアの正面、地面を抉り、怒涛の勢いで迫り来る雷青龍を待ち構えた。

腕に力を込める。
光の鎧を軽薄にし、大剣にありったけの光をつぎ込む。

そして、その時は来た。

激突。

雷水と白光は激しいせめぎ合いを巻き起こし、雷が、水が、光が、四方へと飛散する。

地面に数多の穴が空き、訓練場がみるみるうちに破壊され、蜂の巣状態になっていく。


「これで、終わりだぁ!」


アースカティアは大剣を振り抜き、両者最大の攻撃はアースカティアに軍配が上がった。

雌雄を決する果てに、雷青龍が消え、莫大な疲労と一瞬の静寂が訪れる。

しかし、その静寂も一瞬で終わった。

少年の体が宙に浮き、激痛と共に、後方に吹き飛ばされた。

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