俺がこの世に生まれた意味

高木礼六

各々の成果

「炎を穿て、ファーナ!」


よく響き透き通る声が発せられた後、ヒョロヒョロと、一粒の小さな火の玉が出てきた。

圧倒的微量な熱量。

そんなものが長くこの世に滞在できるはずがない。

たちまち自然の脅威に揉み込まれ、その姿を跡形もなく消した。


「あー、だめかしらー。」


最初に比べるとララの魔法は幾分か良くはなった。

打っても不発に終わっていた時に比べれば大きな進歩だ。

けれども、実戦で使えるかと言う話であれば答えはもちろん不可だ。

当たったとしても、ロウソクの火で少し炙った程度のダージしか与えられない。

悪魔を倒すなど到底できない。


「イメージはちゃんと出来てるのになんでなのかしら?」


そう、ララのイメージは固まっている。

そのの思いついたイメージはこうだ。

ある国の王子様とララが運命的な出会いを果たしました。
互いは初めてあった時からとも惹かれあい、王子が王宮を抜け出してはいつも同じ時を過ごし、同じ気持ちを分け合い、同じ思いを向け合う。
しかし、その時間も長くは続かなかった。
王子の父である国王がララを断固拒否。
二人を二度と会わせないように、王子に見張りをつけ、更に王宮の周りに茨の結界を張ってしまった。
ララはとても悲しかった。とても辛かった。
王子と二度と会えない。そう考えただけで胸が苦しくなる。
ララはいてもたってもいられなかった。
欲しい!欲しい!
あの邪魔な茨の結界を焼き払える力を、あの忌々しい邪魔者をやっつけられる力を!

これがララの望むもの。


..............長い!!

これはもうイメージなんてものではない。

長い、長すぎる。
こうなったらただの妄想だ。

こんなんで魔法がうまくいくわけがない。

第一、魔法に限っては才能に左右される事がほとんどだ。どんなに頑張っても習得できないものはできない。

今のララの状態は正常なのだ。

だが、昨日の魔法講座をあまり聞いてなかったララはそれを知る由がない。

焦り、戸惑い、魔法は頑張れば何でもできると思い込んでいる。

ララの場合は、炎を出せている以上、出来る可能性はある。が、一般的に見ても、飛躍的に一瞬でできるようになることはまずほとんどない。

レレは異常なのだ。


一方アースカティアは.......


「うん、無理だな。もうこの特訓はやめよう。」


心が折れていた。

何度やっても何の変化も訪れない。

光の大きさも、密度も、威力も少しも上がらない。

上がる気配すら微塵もない。

これは無理だと区切りをつけ、諦めてしまった。

そうなれば次に何をするのかが問題になってくる。

参考にと思い、周りを見回してみれば、悩みに悩んでいるララがいる。

出した魔法は、小さな可愛らしい火の玉を一瞬だけ出せる程度、思わずプッと笑ってしまった。

何の進歩もないやつがよく笑えたものだ。

そして、そのララから少し離れたところにはレレがいた。

レレは水の鎧を纏って、それからその上に雷の魔法を上乗せして.......


「はあ!?」


アースカティアは目を疑った。

さっきレレは回復魔法を習得したばかりだ。

それなのに今彼女は雷の魔法を出した。

レレが雷を使うとこなんて今まで一度も見たことがない。断じて無い。

でも今はそれを使っている。しかもそれを元々持っていた魔法と組み合わせて同時に発動している。

成長皆無のアースカティアは、気づくと走っていた。

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