俺がこの世に生まれた意味

高木礼六

訓練の始まり

「それでは、魔法の実習訓練を始めます。」


はじめての転移、なれない人混み、めった打ちにされたユパとの測定、クエストの受注、姉弟の喧嘩擬き、鬼の魔法講座。

昨日だけで沢山の初体験をした。

今後は日常になるであろう貴重な体験をこれでもかとした。

だから、今、三人は窮地に立つたされていた。


ーーね、ねむい。


ここはギルド内の訓練場、そこに立っている三人にははっきりと目の下にクマが浮かび上がっており、寝不足を如実に物語っている。

全身から眠たいオーラと倦怠感を醸し出し、あくびは出るがやる気はでない。

数多の出来事、それに加えて昨日は今までに泊まったことがないような豪華な部屋に宿泊することになった。

ただでさえ、いろんな初体験で体が興奮しきっていたのに、そんなところに泊まるとなると、落ち着いて眠れなかった。

その結果、出来上がったのが今の三人の惨状だ。

こんな状態では訓練など身が入らないのは目に見えている。


「昨日はよく眠れなかったんだね。三人とも少し目を閉じてて。」


マイヤはそう言うと、横にならんだ三人のもとに近づいてきて、スッと手をかざした。

何をしているのか、三人には見えない。目を閉じているから。

けれどもわかる。マイヤが何をしてくれているのかが、何故なら、


「はい、もう目を開けていいよ。」


さっきまでには考えられないほど、頭が冴えている。

眠気なんて微塵も感じない。

むしろ、やる気がたぎってくる。


「マイヤ、もしかして魔法をかけてくれたのか?」

「正解。ちなみに今のは活性化魔法と継続魔法の組み合わせだよ。これで訓練に集中できるはず。さ、訓練を始めよう!」


さすがはマイヤ、ギルドに仕える従者なだけはある。

あっという間に問題を解決してしまった。

これで気兼ねなく訓練を始められる。


「と、言いたいけど、まず始めに、今日の目標を決めてみよう。何でもいいよ。自分が今したいことを言葉にしてみて。」


突然のマイヤの切り返しに、三人は考え始めた。

自分が今したいこと、自分が一番求めているもの、自分に必要なもの、そんなもの、既に決まっていた。


「俺は力がほしい、そのために今持っている魔法の底上げがしたい。」

「おおーいいねー。ララちゃんとレレちゃんは決まった?」

「もちろんかしら。ララは魔法の幅を広げたい。もっと沢山の攻撃手段がほしいかしら。」

「レレも魔法の幅を広げたい。レレの場合は回復手段だけど。」


各々自分が欲しているものを告げた。

アースカティアは向上を、ララは多様性を、レレは癒しを、どれも必要な大切な要素。


「よーし、決まったね。じゃあ、ようやく訓練の始まりだよ!」

マイヤは拳を握り、高らかに始まりの合図を放った。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品