俺がこの世に生まれた意味

高木礼六

ルフタの一人部屋

「すごい、ここがあの有名なパールシアの巨塔か...圧巻の眺めだ。」


四人は送ってくれたドラルから降りると、点を貫きそうなほど高い塔の前にいた。

アースカティアは、ギルド本部を見た時とはまた違う感情が込み上げてくる。

今度は尊敬の気持ちではない。

素直な感動だ。

圧倒的な存在感に、悠然とする佇まいに、心が駆り立てられる。

ララとレレは口をポカンと開けて呆然としている。

マイヤはそんな二人の様子を見て、クスクスと微笑を浮かべている。

マイヤは微笑を浮かべたまま、三人の前に立ちはだかり、両手を大きく広げた。


「ここが三人も知っての通り、ギルド本部と並び、パールシアが誇る世界最大の塔、ラーの巨塔です!」


周りには人がたくさんいるのにも関わらず、マイヤは声を張り上げてそう言った。

少し、視線が集まっている。


「そしてここが私たちの...」

「目的地でしょ。それぐらい分かるよ。」

「もー、レレちゃんったら最後まで言わせてよっ!もういい、私は勝手に行くよ!」


視線に気づかず、また声を張り上げようとしていたマイヤを阻止すべくレレが途中で言葉を遮った。

自分のセリフをレレに取られたと勘違いしたマイヤは頬を膨らませ、プンスカしながらズカズカと一人で塔の中に入っていった。

そんな彼女を三人は笑いながら追いかけた。


塔の中は外見の通り、とても広く、物が多い。

街の中に売ってあるものも三人にとっては衝撃的なものばかりだったが、ここはそれが一段と多い。

そして何より一つ一つが綺麗だ。

外にあった屋台なんかとは全然違う。

一つの店に一つの部屋が設けられていて、ついつい見入ってしまう。

それが上に何層もあるなんて、ここは天国かと錯覚してしまいそうだ。


「みんなこっち、どうしてもみんなに見せたい場所があるの!」


マイヤはまだちょっとプンスカ怒ったような表情で足早に進んで行った。

目的の場所がどんな所なのか、楽しみだ!


「着いたよ!私が連れて来たかったのはここ!」


プンスカなマイヤに案内されて着いたのは一件の武器屋だった。

店の看板には金色の文字で『ルフタの一人部屋』と書いてある。

なんで一人部屋なのかとツッコミたい所だが、今はそんなのどうでもいい。

アースカティア、ララ、レレはその高級そうな店の、ガラス越しに飾られている逸品に目を奪われた。

黒く艶やかな光沢を帯びた剣の柄、煌々と輝いているかと錯覚してしまうほど洗練されている銀色の刀身。

特別な装飾なんかは一切なし、純粋な素材のみの力で作り上げられている。

それなのに、それは一瞬で三人の意識を盗んだ。

ここはとてつもない所だ。

こんなのがこの中にはたくさん...


「どお?凄いでしょ。これはまだまだ序の口だよ。中にはもっと凄いのがたくさんあるからね。」

「え!?これよりも凄いのがあるの!?早く、早く見てみたい!」

「う、嘘だろ...」


こんな至極の一品よりも上が存在すると、マイヤはそう言った。

しかもたくさん。


ーー俺の目はここから生きて帰ってこれるのだろうか。


不安が募る。それと同時にそれ以上の期待と興奮が上回る。

アースカティアは自然と足が進んでいた。

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