俺がこの世に生まれた意味
扉の先にいた人
その扉は廊下をまっすぐ行ったところの突き当たりにあった。
廊下を進む途中にいくつもの扉はあったがどこからどう見ても、造りから、色合いから、雰囲気ふんいきからどこもかしこも違う。
いかにもボス部屋への扉って感じだ。
ボス部屋にしては些か綺麗すぎるところもあるけど...
「ここが本部長様の執務室になります。決して粗相のないように。後で私が怒られてしまいますから。」
ーー礼儀正しくしないとマイヤさんが怒られるのか...これはしっかりしないとな。
ーーへへっ、私がふざければ、あの女が困る。へへっ、
冗談めいた言い方でマイヤがにっこりと微笑むと、抱いた感情は人それぞれだ。
一人は女性のためにしっかりとした自分を作り上げようと、
一人はにっくき泥棒猫に一矢報いてやろうと、
一人は大切な存在である二人の、相反する気持ちに考えることを停止しようと、
現実を絵にすれば微笑ましい光景が、心境を絵にしてみれば、まるで地獄絵図だ。
「それでは、行きますよ。ドキドキの瞬間ですね。」
そうやって偉大人へと続く門は開かれた。
目の前にパーっと光が広がったかと思うと、そこにはあったのは、予想以上でも、予想以下でもない、予想通りの場所だった。
見栄えのいい絨毯、壁紙、天井、照明、カーテン。
手が混んでいるのが一目でわかる。
「やっぱり想像通り凄いな、ここは。」
「ほんと、何度来ても凄いですここは。」
部屋の作りの凄さに当然の事ながらアースカティアとララとレレは驚きを隠せないでいる。
あとは何故かここに勤めているはずのマイヤまで感動で目尻に涙を溜めている。
「よく来たね。また君達に会えるのを楽しみにしてたよ。アースカティアくん、ララくん、レレくん。」
扉を開けた先にある立派な机に立派な椅子。
そこに座っていた白髪の老人が三人にそう言葉を投げかけた。
けれどもその声、その外見には見覚えがある。
服装と口調こそ違えど、この人は...
「あ、あんたは!?」
「ユ、ユユユユユ!?」
「ユパさんなのかしら!?」
ここ、パールシアにまで異端児三人を連れてきた張本人に違いない。
ーーどういう事だ!?ここはユナン・パールシア本人の部屋のはず。つまり、あそこに座っているのはユナン・パールシアのはずであって、でも今はユパさんが、ん、ユパ?ユパ、ユパ...まさか、ユパって。
「アースカティアくんは気づいたみたいだね。私がユナン・パールシア。ユパというのは名前の略称といった所だね。今後ともユパと呼んでくれたまえ。」
最初に会った時とは全く印象が違う。
礼儀正しく固すぎる気もした雰囲気が、今はどちらかというと親近感が湧きすぎる。
この人が本当に一代でこの大都市を生み出したのかと疑ってしまうぐらいだ。
「なあユパさん。今から俺ら三人であんたに一つずつ質問をしていく。俺らを騙していたんだからそれぐらいは許容してくれよ。」
「ああ、いいだろう。別に問題はないさ。さあ、どんどん来たまえ。」
この人には聞きたいことがある。
それも一つずつでは到底足りないくらいに。
けれども、俺たちをここに招待した以上、ユパさんにも話したいことがあるはず。
今はとりあえず一人一個で我慢しておこう。
「それじゃあララから言うかしら。一つ目の質問よ。あなたは本当にユナン・パールシアであって、ユパさんと同一人物なのかしら。」
「ああ、それは間違いない。その証拠に君達との会話なら一言一句間違えず再生できるさ。」
ユパの語気と態度には自信が溢れ出ている。
証拠を聞かずとも彼の話している内容が本当だとわかる。
側から見れば抽象的な内容を信じるなと言われるかもしれないが、今の異端児たちにはそれだけでも十分。
彼は正真正銘偉大な人物、ユナン・パールシアであり、従者としての顔を持つユパその人である。
「それじゃあ次はレレの番だね。うーんと、じゃあねー、そうだ!冒険者ってどんな事をするのものなの?私あんまり知らないから詳しく教えてよ!」
「そうか、君たちは今まで山の中で暮らしていたんだったね。冒険者というものについて詳しく知らないのも無理はない。」
三人は夢を叶えるまでは山の中でコツコツと必要な資金を貯めて暮らそうと決めていた。
まあ、それもユパからの手紙で関係なくなったんだが
そんなこんなで彼らは世の中の情報については乏しい部分が多々ある。
冒険者についてほとんど無知なのもそれが原因だ。
「それではこちらからも聞いてみよう。君たちにとっての冒険者とはなんだ?」
ーー冒険者。言われてみれば考えたこともなかった。いや、考えようともしてなかった。
「俺にとっての冒険者とは悪魔掃除屋となんら変わりはない。ただ悪魔を殺して金を稼ぐ、そんな仕事だ。」
「ふっ、やはりそうなるか、ララくんとレレくんはどうだい?」
「ララもディグルと同じ考えかしら。」
「レレもディグルと同じだよ。」
「なるほど...ま、仕方がない。それが世間一般の認識。つまりだ、君たちは君たち自信が毛嫌いする人間となんら変わりはない。与えられたものを全て真実だと思い込み、疑おうともしない蛮族と同義。」
ユパは平然と軽くそう言った。
自分の国の国民でもある一般市民を蛮族と、そして、それと同義であるとアースカティアたちを挑発するかのように、
方法的懐疑を全うしろとでも言うのかよ...
「だがもう違う。今から君たち三人は真実を知る。冒険者というものの本質を。」
その時、ユパの皺が明らかに増えた。
...笑っている。
逸れた仲間を見つけたヌーの子どものようににっこりと無邪気に、笑っている。
廊下を進む途中にいくつもの扉はあったがどこからどう見ても、造りから、色合いから、雰囲気ふんいきからどこもかしこも違う。
いかにもボス部屋への扉って感じだ。
ボス部屋にしては些か綺麗すぎるところもあるけど...
「ここが本部長様の執務室になります。決して粗相のないように。後で私が怒られてしまいますから。」
ーー礼儀正しくしないとマイヤさんが怒られるのか...これはしっかりしないとな。
ーーへへっ、私がふざければ、あの女が困る。へへっ、
冗談めいた言い方でマイヤがにっこりと微笑むと、抱いた感情は人それぞれだ。
一人は女性のためにしっかりとした自分を作り上げようと、
一人はにっくき泥棒猫に一矢報いてやろうと、
一人は大切な存在である二人の、相反する気持ちに考えることを停止しようと、
現実を絵にすれば微笑ましい光景が、心境を絵にしてみれば、まるで地獄絵図だ。
「それでは、行きますよ。ドキドキの瞬間ですね。」
そうやって偉大人へと続く門は開かれた。
目の前にパーっと光が広がったかと思うと、そこにはあったのは、予想以上でも、予想以下でもない、予想通りの場所だった。
見栄えのいい絨毯、壁紙、天井、照明、カーテン。
手が混んでいるのが一目でわかる。
「やっぱり想像通り凄いな、ここは。」
「ほんと、何度来ても凄いですここは。」
部屋の作りの凄さに当然の事ながらアースカティアとララとレレは驚きを隠せないでいる。
あとは何故かここに勤めているはずのマイヤまで感動で目尻に涙を溜めている。
「よく来たね。また君達に会えるのを楽しみにしてたよ。アースカティアくん、ララくん、レレくん。」
扉を開けた先にある立派な机に立派な椅子。
そこに座っていた白髪の老人が三人にそう言葉を投げかけた。
けれどもその声、その外見には見覚えがある。
服装と口調こそ違えど、この人は...
「あ、あんたは!?」
「ユ、ユユユユユ!?」
「ユパさんなのかしら!?」
ここ、パールシアにまで異端児三人を連れてきた張本人に違いない。
ーーどういう事だ!?ここはユナン・パールシア本人の部屋のはず。つまり、あそこに座っているのはユナン・パールシアのはずであって、でも今はユパさんが、ん、ユパ?ユパ、ユパ...まさか、ユパって。
「アースカティアくんは気づいたみたいだね。私がユナン・パールシア。ユパというのは名前の略称といった所だね。今後ともユパと呼んでくれたまえ。」
最初に会った時とは全く印象が違う。
礼儀正しく固すぎる気もした雰囲気が、今はどちらかというと親近感が湧きすぎる。
この人が本当に一代でこの大都市を生み出したのかと疑ってしまうぐらいだ。
「なあユパさん。今から俺ら三人であんたに一つずつ質問をしていく。俺らを騙していたんだからそれぐらいは許容してくれよ。」
「ああ、いいだろう。別に問題はないさ。さあ、どんどん来たまえ。」
この人には聞きたいことがある。
それも一つずつでは到底足りないくらいに。
けれども、俺たちをここに招待した以上、ユパさんにも話したいことがあるはず。
今はとりあえず一人一個で我慢しておこう。
「それじゃあララから言うかしら。一つ目の質問よ。あなたは本当にユナン・パールシアであって、ユパさんと同一人物なのかしら。」
「ああ、それは間違いない。その証拠に君達との会話なら一言一句間違えず再生できるさ。」
ユパの語気と態度には自信が溢れ出ている。
証拠を聞かずとも彼の話している内容が本当だとわかる。
側から見れば抽象的な内容を信じるなと言われるかもしれないが、今の異端児たちにはそれだけでも十分。
彼は正真正銘偉大な人物、ユナン・パールシアであり、従者としての顔を持つユパその人である。
「それじゃあ次はレレの番だね。うーんと、じゃあねー、そうだ!冒険者ってどんな事をするのものなの?私あんまり知らないから詳しく教えてよ!」
「そうか、君たちは今まで山の中で暮らしていたんだったね。冒険者というものについて詳しく知らないのも無理はない。」
三人は夢を叶えるまでは山の中でコツコツと必要な資金を貯めて暮らそうと決めていた。
まあ、それもユパからの手紙で関係なくなったんだが
そんなこんなで彼らは世の中の情報については乏しい部分が多々ある。
冒険者についてほとんど無知なのもそれが原因だ。
「それではこちらからも聞いてみよう。君たちにとっての冒険者とはなんだ?」
ーー冒険者。言われてみれば考えたこともなかった。いや、考えようともしてなかった。
「俺にとっての冒険者とは悪魔掃除屋となんら変わりはない。ただ悪魔を殺して金を稼ぐ、そんな仕事だ。」
「ふっ、やはりそうなるか、ララくんとレレくんはどうだい?」
「ララもディグルと同じ考えかしら。」
「レレもディグルと同じだよ。」
「なるほど...ま、仕方がない。それが世間一般の認識。つまりだ、君たちは君たち自信が毛嫌いする人間となんら変わりはない。与えられたものを全て真実だと思い込み、疑おうともしない蛮族と同義。」
ユパは平然と軽くそう言った。
自分の国の国民でもある一般市民を蛮族と、そして、それと同義であるとアースカティアたちを挑発するかのように、
方法的懐疑を全うしろとでも言うのかよ...
「だがもう違う。今から君たち三人は真実を知る。冒険者というものの本質を。」
その時、ユパの皺が明らかに増えた。
...笑っている。
逸れた仲間を見つけたヌーの子どものようににっこりと無邪気に、笑っている。
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