俺の悪役令嬢が世界征服するらしい
第27話 お嬢様、魔物を生み出す。
「いやぁ~ それにしてもさっきのギガロマンティス戦は世紀の大決戦でしたね〜 特にアリシアさんの銀色の極太ビームとか凄かったですよ!!」
「・・・・・・」
アリシアさんは何も答えない。褒められて照れているのだろうか?
「キャスカさんも素晴らしい身のこなしでしたね~ やはりスタンフィールド家のメイドは一味違いますね!!」
「あの、ミコトさん・・・・・・」
キャスカさんは何故か俺を心配そうな表情で見つめる、大丈夫ですよ怪我とかしてませんから!
「ツバキさんも人が悪い、あんな凄い奥義があるならもっと早く出して下さいよ〜 俺にはその日本刀が斬鉄剣にしか見えませんでしたね!! 今日から五右衛門って呼んでもいいですか?」
「ミコトはん・・・・・・」
流石に五右衛門と呼ばれるのは嫌だったのだろうか、じゃあ狐に因んで厚揚げ抜刀斎とかで手を打とう。
「フレデリカさん、俺は貴方に謝らなければならないようです。よもや貴方があんな凄い魔法を使えるだなんて・・・・・・ ただの幼女枠だと思っていた自分を張り倒したいですよええ」
「執事さん?」
何故か台詞の最後に?を付けるフレデリカさん。誤植かな?
まあ、偶には許してやろう。俺は人のミスには寛大なのだ。
「ともかく皆さん、おつかれしゃーしたー!! さぁ! 気を取り直してお嬢様を探しに行きましょう!!」
だが俺の掛け声に対して皆が返した反応は『おー!!』とかでは無く、
「現実を見なさい」「現実を見て下さい」「現実を見ようや」「現実を見ましょう」
「やっぱりダメか・・・・・・」
俺は振り返る――目の前には超巨大カマキリ型魔物、ギガロ・マンティスさんがご健在だ。
なんだよ~ 以前のパーティー騒動の時みたいに適当に端折ってくれてもいいじゃんかよ〜 
まあ俺はあの時の事を何故か覚えていないので、御三家令嬢達が言うようなアクションシーンがあったのかは不明だけど。
エリザベートの魔力暴走、それに伴う魔力の流出が屋敷に貼られた結界内の動植物に影響を及ぼし魔物を作り出してしまったらしい。
「ギガロマンティスってそんなにヤバイ魔物なんですか?」
俺はとりあえず一番安全そうなアリシアさんの背後に隠れながら聞いてみる。
「特Aランクは軍隊一つに相当する強さよ。これが街へ出たら被害は計り知れないわね、まあ私の敵じゃないけど」
アリシアさんのは魔剣(元は玩具)を抜いて悠然と語る。
カッコイイなー 惚れちゃいそうだぜ。
「―――――――――――――――――――――ッ!!!」
ギガロマンティスは金切り声のような咆哮をあげ、俺達に向かって片方の大鎌を振るってきた。
だがその刃が俺達に届く事無かった。
「随分と大振りやなぁ。隙だらけやから切ってもうたわ」
ツバキさんの言葉の後、切断され空中を舞っていたギガロマンティスの両腕が地面へと落ちる。
「ツバキさんナイスです」
その直後に動いたのはキャスカさんだった。
どこに隠していたのか無数のクナイで奴の複眼を潰しに掛ったのだ。
結果は全て命中。ギガロマンティスは両腕と目を潰された痛みで悲鳴のような声を上げる。
「私が動きを止めますので後はトドメをお願いします」
フレデリカさんは先端に丸い宝石のついた杖を構え、
「■■■■■■■■■■■■■■」
その言葉はまるでノイズでも掛かっているかのように俺の聴覚器官では聞き取る事ができなかった。
いつもエリザベートは無詠唱なので俺も初めて耳にするのだが、恐らく今のが魔法の詠唱呪文という奴なのだろう。
この世界の魔法が非常に習得困難なのはこの発音不可能な詠唱呪文のせいなのかもしれないな。
「《束縛の鎖》」
直後、地面より黒い鎖が四本出現しギガロマンティスの身体に絡みつくとその動きを封じた。
なんて統制の取れたパーティーなんだ、強いぜ!! 俺以外!!
俺が自らの無能さに打ちひしがれていると、ギガロマンティスの身体に起こった異変にが起こった。
「アイツ! 傷が再生してる!?」
ツバキさんが切り落とした腕、キャスカさんが潰した目、その両方が凄まじい速度で修復が始まっていた。
このままでは後数秒で完治してしまうだろう。
なるほど特Aランクの魔物というだけの事はある、確かにこれは普通の軍隊じゃ手に負えないだろう。
しかしアリシアさんはトドメを指す気配を見せないまま何かブツブツと呟いていた。
「あの、アリシアさん?」
「ん~ 剣から出るビームの名前何がいいかしら…… やっぱ最近の流行りに乗っかって漢字にルビ振るテイストが、いやでもここはオーソドックスにカタカナだけって線もありか…… ん~ 悩むわね。平民はどう思う?」
「いいから早くやっちゃってくれませんか!?」
どうでもいい事で尺を使うな。
アリシアさんは「はいは~い」と言いながら剣を上段に構える。
剣には銀色の粒子が収束しはじめ、青白い稲妻が迸っていく。
そして輝きが臨界点へと達した所でアリシアさんは大きく息を吸い、
「全員伏せなさい!! どーーーーーーっせい!!!!」
えらく男らしい掛け声と共にアリシアさんは剣を振り下ろす。
剣先から放出された銀色の奔流は一瞬にして目の前のギガロマンティスを飲み込んでいった。
眩い光と台風のような風圧が止んだ後にはもうギガロマンティスの姿はなく、それどころか森の一部までもが綺麗さっぱり消し飛んでいた。
口ではふざけた事ばかり言っていても実際に見せつけられると認めざる負えない。
間違いなくアリシアさんは帝国最強の騎士だ。
「ん~ まだ威力が今いちね。やっぱり特売品の模擬刀じゃこんなもんか」
どうも今のでご不満らしい、一蹴回ってもはや恐ろしい人だ。
結局、最初に俺が口にした願望通りの結果となった初戦闘だった訳だが――
「アリシア様……」
「分かってるわ。これは……少しだけ面倒ね」
俺達の周囲には先程倒したギガロマンティスとは別の個体、そして数多くの巨大な魔物達が集まってきていた。
完全に囲まれている。
「まあこんだけ広い敷地なんだから、そりゃあ沢山生き物いるわよね」
エリザベートの魔力暴走により魔物に変異してしまった野生の生物達、そのほとんどがここら一帯に集まっているのではないかと思えるほどだ。
俺達は全員で背中を合わせて死角を消し、周囲を警戒する。
「妙ですね、魔物にしては妙に統制がとれているように見えます」
キャスカさんは魔物達の微妙な仕草に違和感を覚えたようだった。
「せやんな、まるで何かを守っているみたいや」
ツバキさんの言う通り、魔物達はある一定の方向を重点的に封鎖しているような配置だった。
「恐らくは既に上下関係が出来ているのでしょう。この森を支配し魔物達に魔力を供給している存在に対して」
フレデリカさんの言う通りだとするのならそんな存在は一つだけだ。
この事態の元凶――そう。エリザベートである。
いわばこの魔物の大群はエリザベートを守る為の使い魔と言った所だろうか。
「まったく。魔物を従えるなんて、これじゃあまるで魔王じゃない。ま、世界征服を企んでるだからお似合いだけど」
アリシアさんが笑いながら言う。
しかもかなり的確な例えだ。魔王ね、確かにエリザベートにはお似合いだ。
「平民、アンタはそこの魔女と先に行きなさい」
「そうですね、それが最善です」
「せやね、ここはワイらに任せてはよういきんさい」
「そんな!? この数相手じゃ――」
如何に皆が強いといっても明らかに多勢に無勢だ。
「いいから!!」
しかしアリシアさんは声を荒げて俺に告げる。
「アリシアさん……」
「これ、やるわ」
アリシアさんは俺に二枚の紙切れを渡してきた。
「私のコンサートのチケットよ。罰として今度二人で来る事、いいわね」
そしてアリシアさんは再び剣に光を収束させる。
「それにあの女を倒すのはこの私なんだから、さっさと行ってキスでもビンタでも、なんでもいいから正気に戻して来なさい!!」
その後で本人に直接文句言ってやるんだから――と不敵に笑いながらアリシアさんは剣を振り下ろす。
先程よりも強力な銀の閃光が前方の魔物達を派手に吹き飛ばし、活路が開かれる。
「行きなさい! 周防ミコト!!」
俺はフレデリカさんを脇に抱え、アリシアさんが作ってくれた道を全力で走った。
そういえば、初めてアリシアさんにまともに名前を呼んで貰えた気がする。
「・・・・・・」
アリシアさんは何も答えない。褒められて照れているのだろうか?
「キャスカさんも素晴らしい身のこなしでしたね~ やはりスタンフィールド家のメイドは一味違いますね!!」
「あの、ミコトさん・・・・・・」
キャスカさんは何故か俺を心配そうな表情で見つめる、大丈夫ですよ怪我とかしてませんから!
「ツバキさんも人が悪い、あんな凄い奥義があるならもっと早く出して下さいよ〜 俺にはその日本刀が斬鉄剣にしか見えませんでしたね!! 今日から五右衛門って呼んでもいいですか?」
「ミコトはん・・・・・・」
流石に五右衛門と呼ばれるのは嫌だったのだろうか、じゃあ狐に因んで厚揚げ抜刀斎とかで手を打とう。
「フレデリカさん、俺は貴方に謝らなければならないようです。よもや貴方があんな凄い魔法を使えるだなんて・・・・・・ ただの幼女枠だと思っていた自分を張り倒したいですよええ」
「執事さん?」
何故か台詞の最後に?を付けるフレデリカさん。誤植かな?
まあ、偶には許してやろう。俺は人のミスには寛大なのだ。
「ともかく皆さん、おつかれしゃーしたー!! さぁ! 気を取り直してお嬢様を探しに行きましょう!!」
だが俺の掛け声に対して皆が返した反応は『おー!!』とかでは無く、
「現実を見なさい」「現実を見て下さい」「現実を見ようや」「現実を見ましょう」
「やっぱりダメか・・・・・・」
俺は振り返る――目の前には超巨大カマキリ型魔物、ギガロ・マンティスさんがご健在だ。
なんだよ~ 以前のパーティー騒動の時みたいに適当に端折ってくれてもいいじゃんかよ〜 
まあ俺はあの時の事を何故か覚えていないので、御三家令嬢達が言うようなアクションシーンがあったのかは不明だけど。
エリザベートの魔力暴走、それに伴う魔力の流出が屋敷に貼られた結界内の動植物に影響を及ぼし魔物を作り出してしまったらしい。
「ギガロマンティスってそんなにヤバイ魔物なんですか?」
俺はとりあえず一番安全そうなアリシアさんの背後に隠れながら聞いてみる。
「特Aランクは軍隊一つに相当する強さよ。これが街へ出たら被害は計り知れないわね、まあ私の敵じゃないけど」
アリシアさんのは魔剣(元は玩具)を抜いて悠然と語る。
カッコイイなー 惚れちゃいそうだぜ。
「―――――――――――――――――――――ッ!!!」
ギガロマンティスは金切り声のような咆哮をあげ、俺達に向かって片方の大鎌を振るってきた。
だがその刃が俺達に届く事無かった。
「随分と大振りやなぁ。隙だらけやから切ってもうたわ」
ツバキさんの言葉の後、切断され空中を舞っていたギガロマンティスの両腕が地面へと落ちる。
「ツバキさんナイスです」
その直後に動いたのはキャスカさんだった。
どこに隠していたのか無数のクナイで奴の複眼を潰しに掛ったのだ。
結果は全て命中。ギガロマンティスは両腕と目を潰された痛みで悲鳴のような声を上げる。
「私が動きを止めますので後はトドメをお願いします」
フレデリカさんは先端に丸い宝石のついた杖を構え、
「■■■■■■■■■■■■■■」
その言葉はまるでノイズでも掛かっているかのように俺の聴覚器官では聞き取る事ができなかった。
いつもエリザベートは無詠唱なので俺も初めて耳にするのだが、恐らく今のが魔法の詠唱呪文という奴なのだろう。
この世界の魔法が非常に習得困難なのはこの発音不可能な詠唱呪文のせいなのかもしれないな。
「《束縛の鎖》」
直後、地面より黒い鎖が四本出現しギガロマンティスの身体に絡みつくとその動きを封じた。
なんて統制の取れたパーティーなんだ、強いぜ!! 俺以外!!
俺が自らの無能さに打ちひしがれていると、ギガロマンティスの身体に起こった異変にが起こった。
「アイツ! 傷が再生してる!?」
ツバキさんが切り落とした腕、キャスカさんが潰した目、その両方が凄まじい速度で修復が始まっていた。
このままでは後数秒で完治してしまうだろう。
なるほど特Aランクの魔物というだけの事はある、確かにこれは普通の軍隊じゃ手に負えないだろう。
しかしアリシアさんはトドメを指す気配を見せないまま何かブツブツと呟いていた。
「あの、アリシアさん?」
「ん~ 剣から出るビームの名前何がいいかしら…… やっぱ最近の流行りに乗っかって漢字にルビ振るテイストが、いやでもここはオーソドックスにカタカナだけって線もありか…… ん~ 悩むわね。平民はどう思う?」
「いいから早くやっちゃってくれませんか!?」
どうでもいい事で尺を使うな。
アリシアさんは「はいは~い」と言いながら剣を上段に構える。
剣には銀色の粒子が収束しはじめ、青白い稲妻が迸っていく。
そして輝きが臨界点へと達した所でアリシアさんは大きく息を吸い、
「全員伏せなさい!! どーーーーーーっせい!!!!」
えらく男らしい掛け声と共にアリシアさんは剣を振り下ろす。
剣先から放出された銀色の奔流は一瞬にして目の前のギガロマンティスを飲み込んでいった。
眩い光と台風のような風圧が止んだ後にはもうギガロマンティスの姿はなく、それどころか森の一部までもが綺麗さっぱり消し飛んでいた。
口ではふざけた事ばかり言っていても実際に見せつけられると認めざる負えない。
間違いなくアリシアさんは帝国最強の騎士だ。
「ん~ まだ威力が今いちね。やっぱり特売品の模擬刀じゃこんなもんか」
どうも今のでご不満らしい、一蹴回ってもはや恐ろしい人だ。
結局、最初に俺が口にした願望通りの結果となった初戦闘だった訳だが――
「アリシア様……」
「分かってるわ。これは……少しだけ面倒ね」
俺達の周囲には先程倒したギガロマンティスとは別の個体、そして数多くの巨大な魔物達が集まってきていた。
完全に囲まれている。
「まあこんだけ広い敷地なんだから、そりゃあ沢山生き物いるわよね」
エリザベートの魔力暴走により魔物に変異してしまった野生の生物達、そのほとんどがここら一帯に集まっているのではないかと思えるほどだ。
俺達は全員で背中を合わせて死角を消し、周囲を警戒する。
「妙ですね、魔物にしては妙に統制がとれているように見えます」
キャスカさんは魔物達の微妙な仕草に違和感を覚えたようだった。
「せやんな、まるで何かを守っているみたいや」
ツバキさんの言う通り、魔物達はある一定の方向を重点的に封鎖しているような配置だった。
「恐らくは既に上下関係が出来ているのでしょう。この森を支配し魔物達に魔力を供給している存在に対して」
フレデリカさんの言う通りだとするのならそんな存在は一つだけだ。
この事態の元凶――そう。エリザベートである。
いわばこの魔物の大群はエリザベートを守る為の使い魔と言った所だろうか。
「まったく。魔物を従えるなんて、これじゃあまるで魔王じゃない。ま、世界征服を企んでるだからお似合いだけど」
アリシアさんが笑いながら言う。
しかもかなり的確な例えだ。魔王ね、確かにエリザベートにはお似合いだ。
「平民、アンタはそこの魔女と先に行きなさい」
「そうですね、それが最善です」
「せやね、ここはワイらに任せてはよういきんさい」
「そんな!? この数相手じゃ――」
如何に皆が強いといっても明らかに多勢に無勢だ。
「いいから!!」
しかしアリシアさんは声を荒げて俺に告げる。
「アリシアさん……」
「これ、やるわ」
アリシアさんは俺に二枚の紙切れを渡してきた。
「私のコンサートのチケットよ。罰として今度二人で来る事、いいわね」
そしてアリシアさんは再び剣に光を収束させる。
「それにあの女を倒すのはこの私なんだから、さっさと行ってキスでもビンタでも、なんでもいいから正気に戻して来なさい!!」
その後で本人に直接文句言ってやるんだから――と不敵に笑いながらアリシアさんは剣を振り下ろす。
先程よりも強力な銀の閃光が前方の魔物達を派手に吹き飛ばし、活路が開かれる。
「行きなさい! 周防ミコト!!」
俺はフレデリカさんを脇に抱え、アリシアさんが作ってくれた道を全力で走った。
そういえば、初めてアリシアさんにまともに名前を呼んで貰えた気がする。
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