俺の悪役令嬢が世界征服するらしい

ヤマト00

第20話 お嬢様、成敗する。

 突如現れた謎の変態ボンテージ仮面ーーもとい、エリザベートは孤児院の屋根の上で腕を組みながら背中の赤マントを翻らせていた。
 確か俺が小学二年生くらいの時にあんな恰好をしたおっさんが近所を徘徊していた気がする。


「兄ちゃん、もしかしてあれって……」


 驚愕と呆れみが入り混じった表情を浮かべるクリスは屋根の上にいるエリザベートを指差す。


「何も言うな。そして決して目を合わせてはいけない、他人の振りをするんだ」


 もしあんなのと知り合いだなんて知られては末代までの恥である。


「どうしたどうした愚民共! 妾の神々しい姿を目にして声も出せぬか!! フフフ、フアーッハッハッハ!!」


 声が出せないのはお前のあられもない恰好のせいだ、アルタイル様が生きていたら卒倒するぞ!!
 後せめて一人称と口調くらい変えてくれ、もう少し正体を隠す努力をしろ。


「トウッ!!」


 しかしエリザベートはそんな如何にもな声と共に屋根から飛び降りる。
 しかしエリザベートの人間離れした脚力により孤児院のおんぼろ屋根の一部が豪快に吹き飛ぶ。


「ああああ!! 私達の孤児院がぁああああ!?」


 当然クリスは頭を抱えてショックを受けていた。これではどっちが悪役か分かったものではない。
 まあ屋根は後でエリザベートの魔法で直せるから今は大目に見てもらおう。


「どうじゃミコト、このセンスの塊のような衣装は! フレデリカに二時間で作らせたにしては中々に上出来じゃろ」
「正体を隠すつもりあります?」


 なにナチュラルに話しかけてきてんだよ。


 しかしフレデリカってあれか、あの怪しい魔道具屋の店主か。
 なるほど、用事ってその衣装作りだったのね。
 どうやら正体を隠して助力するというスーパーマン作戦に打って出たようだ、確かにスーパーマンと同じくらい正体は隠せていない。


「一応、お前の分も用意しておいたが裏で着替えてくるか?」
「あははは、死んでもごめんですよ」


 頼むから俺を変態道へ引きずり込まないでくれ。


「おいおい、そんな変態に何ができるってんだよ。おいお前ら、ソイツの身包み剥いじまいな!!」


 リーダ格の男が命令すると、残りの男達が一斉にエリザベートに向かって襲いかかっていく。


「《動くな》」


 しかし、エリザベートのその一言が発せられた瞬間ーー男達の動きがピタリと止まった。
 これには覚えがある。
 いつぞやのパーティーの時に俺がツバキさんのお面に触れようとしたところをエリザベートが言葉で止めた、あの時と同じだ。


「か、体が動かねえ!?」
「《呪縛詠唱》と言ってな、魔力を持たぬ者の動きを封じる魔法じゃ」


 エリザベートは動かなくなった男達の元へファッションモデル歩きでゆっくり近づいていく。
 見れば見るほど変態だ。


「さて、どうしてくれようか。このままお前達を虫ケラのようになぶり殺すのは簡単じゃが、それではあまりに品がないからのお」


 エリザベートはそう言いながらパンッと両手を叩く。


「なんだ、身体が――」
「う、動くぞ!!」


 どうやら男達の拘束を解いたらしい。


「かかってくるがいい俗物共。今日は機嫌が良い故、超特別に相手をしてやる」
「くッ 変態がふざけやがって!!」


 ごもっともである。


「野郎共、構う事はねえ女も餓鬼も全員やっちまえ!!」


 こうしてセレブ仮面レッドと地上げ屋達の戦いが始まった。


「オラァ!!」


 まずは男の内一人がナイフでセレブ仮面に正面から襲いかかる。
 だが――


「マジカルパ~ンチ」
「あひッ――」


 突き出されたセレブ仮面の正拳突きが男の顔面にめり込み、砲弾ように吹っ飛んでいく。
 見た目はただのストレートパンチ、魔力で身体強化をしているのだろうからまあマジカルというネーミングは間違いではないのだろうけれど…… 見た目じゃ分からんな。


「!? このアマ、調子にのるんじゃ――」
「マジカルキ~ック」
「あんッ――」


 マジカルキック、ただの跳び蹴り。
 そして哀れにもそんな間抜けな技の犠牲者が出てしまった。
 何故腕っ節の強そうな男達がこんなにあっさりやられてしまうのかというと、それはエリザベートの速さが明らかに常人の反射神経の外にあるからだ。
 速い、とにかく速い。目の慣れた俺でも微かに追えるかどうかというレベルだ。
 ……なんか漫画の解説役ポジみたいだな、俺。


「マジカルツームストンパイルドライバー」
「ごふッ――」


 続いて炸裂したのは相手を逆さまに抱え上げ、頭部を膝の間に挟み、両膝を曲げた状態で落下して相手の脳天を地面にたたきつける大技だった。何故プロレス? 速さを活かした戦法はどこへお出かけになったのだろうか。


「マジカルタイガードライバー91」
「ガハッ――」


 次は相手を逆羽交い絞め状態にしてこれまた垂直に地面へ落下させる危険な技。
 とりあえずドライバー系が好きらしい。


「マジカルスタイナー・スクリュー・ドライバー」
「オゥワッ――」


 そして最後、リーダーに放ったのは前屈みになった相手の首の後ろに正面から左腕を回し、持ち上げた相手の左腕を自身の首の後ろに引っ掛けて相手の体を垂直になるまで持ち上げた後にまたまた脳天から地面へと叩きつけるという技だった。
 自分でも何いってんのか分からんがとにかくすんごい痛そうという事は分かる。
 あれでは全治三ヶ月は硬いだろう。


「ふ~ 久しぶりに身体を動かしたわい。さてと――」


 エリザベートは地面に突き刺さったまま足をピクピクさせるリーダの懐に手をいれて財布を取り出す。


「ひーふーみーよー。なんじゃこれくらいしか持っておらんのか、貧乏人め!!」


 果たして倒した相手の財布を奪い取ってこんなセリフを吐いたヒーローやヒロインが居ただろうか、もしいたとしたらソイツは正義の味方じゃないぞ~皆。


「ほれ」


 エリザベートはそれをクリスに向かって放り投げる。


「えっとこれは?」
「妾からの支援は足がつくでな、しかしコイツ等のあぶく銭ならば問題なかろう。それでもう少しまともな孤児院を立てるがよかろう」
「でもコイツ等また襲ってくるんじゃねえのか?」
「問題ない、此奴等のバックにいるであろう連中は近い内に潰す。妾の国で勝手な真似をしたツケを払って貰わなければならんからな」


 そんな奴等が裏にいたという衝撃の事実も残念ながらエリザベートの格好のせいであんまり頭に入ってこなかった。
 一刻も早くこの場から離れて着替えさせたい、そろそろ俺の精神が限界だ。


「じゃあ、お嬢ッ――セレブ仮面レッド。俺達もそろそろ帰りましょうか」
「セレブ、なんじゃ? お前は一体何をいっておるのじゃ? 頭大丈夫か?」
「自分で考えた名前忘れんなや!!」





 あれからどうなったのかと言うと、エリザベートが予め呼んでおいた騎士団のお陰で男達は拘束された。
 孤児院は無事に存続、奪った金で綺麗に改装工事されて今では貧民街の子供達の希望の家となっている。
 忘れかけていたお悩み相談の金一封は食べ物に変換して孤児院に寄付しておいた。
 これなら足が付くこともないだろう。


「でも何で貧民街が不可侵領域なんですかね?」


 俺は部屋で寝転がっているエリザベートを横目に新聞を読みながら聞いてみる。


「ふむ、恐らく王族の財宝へそくりでもあるのじゃろう、まさかあのような場所に金目の物があるとは誰も思わんからな」
「じゃあ、商売人達が狙っていたのって」
「その財宝じゃろうな」


 それを探す為に片っ端から地上げをしていたという訳か、ご苦労な事だ。
 俺は再び新聞に目を通す――そこにはこんな記事が掲載されていた。


「【謎の仮面戦士が違法な地上げ屋を成敗!! 神か悪魔か変態か!? 謎の美少女戦士、セレブ仮面レッドの正体とは!?】」
「クックック。このままセレブ仮面の噂が独り歩きすればいつか正体を明かした時に妾の人気もすんごい事になるに違いないのじゃ…… ああ、自分の才能が恐ろしいわい」
「確かに恐ろしいですね」


 お前のアホさ加減がな。


「さて、後はバックにいる連中じゃが…… 妾だけでは些か面倒じゃのお。ミコトよ、やはりお前もあの衣装を着て妾と一緒に――」
「アレを着るくらいなら俺、執事やめます」
「そんなに!? 何故じゃ!? 格好いいじゃろアレ!!」
「アレが格好良かったら、全裸の中年おっさんだって格好いいですよ」
「ちッ! 仕方ない。やはりアレを使ってあの阿呆共に……」
「なんですか、アレって?」


 その後、箪笥の中にあったセレブ仮面レッドの衣装の隣に何やら青い衣装と黒い衣装が増えていた事を知るのは少し後になってからである。





 宿命の二つ星、アリシアとサクラ!死〇星輝く時、壮絶に舞い散るか!?
 次回、貴族戦隊セレブ仮面!! 第1250話。
『死に行くのかミコト!今、執事はここまで美しい!!』
 ミコトの命はあと僅か・・・消えよ死〇星!!


「なんすかコレ?」
「それっぽい予告を考えてみたんじゃが駄目かの?」
「でもこれ完全に北斗の――」



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