俺の悪役令嬢が世界征服するらしい 番外編
スーパー同人誌大戦 プロローグ
イザヨイ・ヒスイ・サクラノヒメという少女がいる。
帝国三大貴族の一つ、イザヨイ家の当主であり、眼鏡をかけ、黒い巫女服を着ている大和撫子。
遠い先祖に日本人がいるので見た目も名前もどこか日本人っぽい。
とても落ち着きがあり、物腰が柔らかく、いつも友人達の事を気遣っている。
余談だが、彼女は自分の名前の『ヒメ』という部分が嫌いらしく俺達には『サクラ』呼びを強要している。
なんで嫌いなのだろうか? まさか恥ずかしいとか言うまいな……。
しかしこれらは彼女の表の要素であり、裏の方はもっとカオスな事になっている。
異性同士の恋愛に興味がなく、美少女とボーイズラブをこよなく愛し、同人誌活動に命を賭けている。
ある意味一番残念な美少女キャラだろう、初登場の時は白目向いていたし。
ちょっと要素を盛りすぎなのではないか? 盛るのはあの巨大なおっぱいだけで充分である。
さて、今回はそんなサクラさんの物語なのだが…… 正直あの時の事を思い出して語るのは非常に気が引ける。
いやアレはもはや事件だった。
一言だけ言いたい、同人誌製作はもうコリゴリであると――。
◇
俺がやってきた異世界がどういう所なのか、なんていう説明は正直俺自身が一番してほしい話である。
西洋風かと思えば和風の地域もあるし、国を一歩出ればモンスターがうようよしているし、アイドルはいるし、最近車が走り始めたし、漫画や同人誌等のサブカルチャーが盛んだしでもうなにがなんだか……。
というのもこの世界にはちょくちょく《異世界人》と呼ばれる来訪者がやってきては文化や技術を伝来させてきたのが主な理由である。
この場合の異世界は俗にいう地球だ、因みに俺もその異世界人だが特に何も伝来させてはいない、何故ならもう俺が伝来させられるようなものは既にこの世界にもあるからだ(誠に遺憾)。
せめてサクラさんのようにイラストを描ける才能でもあれば漫画を描いて一発当てるのに、なんて夢のまた夢を見ている今日この頃。
俺は現在エリザベートと共にヒスイ領にあるイザヨイ邸を訪れていた。
理由は単純。呼び出されたからである。
ブリュンスタッド邸からヒスイ領まではそれなりに距離があるのだが、我が主であるエリザベートは便利な転移魔法が使えるので移動は楽だった。
これでタクシー業とか始めたら儲かるのではなかろうか。
「今日二人に来てもらったのは他でもないわ」
サクラさんは大広間に置かれた大きな机に両肘を付き、手を合わせて口元を隠している。
「ミコトよ、妾この感じデジャブなのじゃが気のせいかの?」
「大丈夫です。前回のショートストーリーからあまり日にちも経ってないので気のせいではないですよ」
アレはとてもお粗末な水着回だったな、まあ俺の隣にいる金髪は全裸だったのだが。
「二人共、お願い。私に力を貸して欲しいの」
「なんじゃい、金なら貸さんぞ」
お前は闇金融会社か。
「そういう生々しい話じゃないの。手伝って欲しい事があるのよ」
「「手伝って欲しい事?」」
「ツバキちゃん。例の物を」
「あいよ」
突然屋根裏からツバキさんが降ってきた。
「これ、お嬢が夏フェス用に描いてる同人誌なんやけど」
「ああアリシアさんのライブの時に言っていたアレですか」
夏フェスというのはこの国行われる同人誌の大規模即売会だ(どう見てもアレ)。
俺はツバキさんから差し出された薄い本を受け取り広げる。
「ラストが決まってないんでしたっけ?」
確か今回の同人誌の結末は二種類あってどちらのエンドにするかでサクラさんが悩んでいたという話だったか。
「この間やっとお嬢が決断して作業に取り掛かってるんやけど《神室》に入れる定員だけじゃどうしても間に合いそうになくてな」
「そ、そんなにヤバイんですか。締め切りは?」
「……明後日の正午がデッドラインやね」
「明後日!?」
いやこの世界の同人誌制作がどんなものなのかは分からないが機械類のサポートが無い以上どうしても手書きになる筈だ。
その作業内容でまだ脱稿できてないというのはかなりマズいような気がする。
「このままじゃ私は、いやイザヨイ家は終わりよ…… 今まで培ってきたブランドに傷がついてしまう……」
サクラさんは机に突っ伏して頭を抱える。
「お願い二人共、脱稿作業手伝って!! お礼はなんでもするから!! なんなら処女あげるから!!」
「「いらんわ」」
「そう正面から断られると案外傷つくな」
「別にお礼なんて貰わなくてもお手伝いしますよ、ねえお嬢様?」
「ふ、ふんッ!! まあサクラには魔力暴走事件の時の借りがあるでな。手伝ってやらんでもない」
「はいはい」
こんな感じで俺とエリザベートはサクラさんの同人誌制作を手伝う事になった。
そしてこれが全ての悲劇の始まりでもあった。
帝国三大貴族の一つ、イザヨイ家の当主であり、眼鏡をかけ、黒い巫女服を着ている大和撫子。
遠い先祖に日本人がいるので見た目も名前もどこか日本人っぽい。
とても落ち着きがあり、物腰が柔らかく、いつも友人達の事を気遣っている。
余談だが、彼女は自分の名前の『ヒメ』という部分が嫌いらしく俺達には『サクラ』呼びを強要している。
なんで嫌いなのだろうか? まさか恥ずかしいとか言うまいな……。
しかしこれらは彼女の表の要素であり、裏の方はもっとカオスな事になっている。
異性同士の恋愛に興味がなく、美少女とボーイズラブをこよなく愛し、同人誌活動に命を賭けている。
ある意味一番残念な美少女キャラだろう、初登場の時は白目向いていたし。
ちょっと要素を盛りすぎなのではないか? 盛るのはあの巨大なおっぱいだけで充分である。
さて、今回はそんなサクラさんの物語なのだが…… 正直あの時の事を思い出して語るのは非常に気が引ける。
いやアレはもはや事件だった。
一言だけ言いたい、同人誌製作はもうコリゴリであると――。
◇
俺がやってきた異世界がどういう所なのか、なんていう説明は正直俺自身が一番してほしい話である。
西洋風かと思えば和風の地域もあるし、国を一歩出ればモンスターがうようよしているし、アイドルはいるし、最近車が走り始めたし、漫画や同人誌等のサブカルチャーが盛んだしでもうなにがなんだか……。
というのもこの世界にはちょくちょく《異世界人》と呼ばれる来訪者がやってきては文化や技術を伝来させてきたのが主な理由である。
この場合の異世界は俗にいう地球だ、因みに俺もその異世界人だが特に何も伝来させてはいない、何故ならもう俺が伝来させられるようなものは既にこの世界にもあるからだ(誠に遺憾)。
せめてサクラさんのようにイラストを描ける才能でもあれば漫画を描いて一発当てるのに、なんて夢のまた夢を見ている今日この頃。
俺は現在エリザベートと共にヒスイ領にあるイザヨイ邸を訪れていた。
理由は単純。呼び出されたからである。
ブリュンスタッド邸からヒスイ領まではそれなりに距離があるのだが、我が主であるエリザベートは便利な転移魔法が使えるので移動は楽だった。
これでタクシー業とか始めたら儲かるのではなかろうか。
「今日二人に来てもらったのは他でもないわ」
サクラさんは大広間に置かれた大きな机に両肘を付き、手を合わせて口元を隠している。
「ミコトよ、妾この感じデジャブなのじゃが気のせいかの?」
「大丈夫です。前回のショートストーリーからあまり日にちも経ってないので気のせいではないですよ」
アレはとてもお粗末な水着回だったな、まあ俺の隣にいる金髪は全裸だったのだが。
「二人共、お願い。私に力を貸して欲しいの」
「なんじゃい、金なら貸さんぞ」
お前は闇金融会社か。
「そういう生々しい話じゃないの。手伝って欲しい事があるのよ」
「「手伝って欲しい事?」」
「ツバキちゃん。例の物を」
「あいよ」
突然屋根裏からツバキさんが降ってきた。
「これ、お嬢が夏フェス用に描いてる同人誌なんやけど」
「ああアリシアさんのライブの時に言っていたアレですか」
夏フェスというのはこの国行われる同人誌の大規模即売会だ(どう見てもアレ)。
俺はツバキさんから差し出された薄い本を受け取り広げる。
「ラストが決まってないんでしたっけ?」
確か今回の同人誌の結末は二種類あってどちらのエンドにするかでサクラさんが悩んでいたという話だったか。
「この間やっとお嬢が決断して作業に取り掛かってるんやけど《神室》に入れる定員だけじゃどうしても間に合いそうになくてな」
「そ、そんなにヤバイんですか。締め切りは?」
「……明後日の正午がデッドラインやね」
「明後日!?」
いやこの世界の同人誌制作がどんなものなのかは分からないが機械類のサポートが無い以上どうしても手書きになる筈だ。
その作業内容でまだ脱稿できてないというのはかなりマズいような気がする。
「このままじゃ私は、いやイザヨイ家は終わりよ…… 今まで培ってきたブランドに傷がついてしまう……」
サクラさんは机に突っ伏して頭を抱える。
「お願い二人共、脱稿作業手伝って!! お礼はなんでもするから!! なんなら処女あげるから!!」
「「いらんわ」」
「そう正面から断られると案外傷つくな」
「別にお礼なんて貰わなくてもお手伝いしますよ、ねえお嬢様?」
「ふ、ふんッ!! まあサクラには魔力暴走事件の時の借りがあるでな。手伝ってやらんでもない」
「はいはい」
こんな感じで俺とエリザベートはサクラさんの同人誌制作を手伝う事になった。
そしてこれが全ての悲劇の始まりでもあった。
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