はぶられ勇者の冒険譚
魔法の練習。そして次なる街へ
遥が筋肉痛で動けなくなった翌日、2人は村にある小さな武器やにいき、玲奈用の杖と奪ったの剣用に鞘を見繕ってもらい、森の中へ向かった。
「ねぇ。本当に大丈夫なの?」
玲奈は未だに辛そうに歩いている遥に声をかける。
「摺り足で歩けばまぁ何とか・・・。」
そう言う遥は出来るだけ足を上げないようにしながら森を進んでいた。しばらくして、一昨日に水浴びをした川に着いた。
「さて。今からお前に魔法の練習をしてもらおうと思う。ちなみに俺は、眼を使ってスキルの効果の確認をする。」
到着1番にそんなことを言った遥に向かって玲奈は疑問を口にした。
「それはいいんだけどさ、何で川?」
「火属性魔法を使っても安心ってのと、視界が確保出来るからだ。」
遥は何を当たり前な事を言ってるんだ、と言うような呆れ顔で答えた。玲奈はなるほど、と言った様子で頷き、ギリギリ水に足が付かない所まで進む。そして、魔法を使おうと杖を構えた。
<汝、火を司る精霊よ。我が命に従い、敵を打つ球となれ。 火球>
玲奈がそう唱えると、小さな火の球が現れる。玲奈が火球を打ち出すと、ゆらゆらと不確かな軌道を描き、20cmほど進んだ所で消失した。
「おぉ!凄い!見てみて遥!手からなんか火がこうボゥッとでるんだよ!」
「お、おう。そうか。よかったな?」
魔法が使えた事に興奮して語彙力がひどいことになっている玲奈の勢いに伸され、遥はそう答えるのがやっとだった。ぎこちない返事をした遥は玲奈のスキルの使い方を見始めた。
火属性魔法 熟練度:43
火をおこし、操る事の出来る魔法。火力は、その者の熟練度に比例する。また、その者のイメ−ジによって威力などが変わる。
使い方
自分が使いたい魔法の詠唱をするか、自力で魔力を操作する事で発動可能。
その情報を呼んだ遥は試したい事がある、と言って「博愛」を使い火属性魔法を借りようと、玲奈に声をかける。
「ん?別に良いわよ。」
と、そう言って玲奈は特段気にした様子もなく許可を出した。じゃあ早速、と遥は自分のステータスを呼び出し、「博愛の恵み」の項目を選ぶ。
博愛の恵み
その者は全てを愛する。その者は愛をもって全てを征する。その愛は時に力を与え、時に力を奪う。何人も平等に、公平にそして無慈悲に全てを牛耳る。熟練度を10貰えば、相手にスキルを残したまま、スキルを得ることが出来る。
使用方法
自身の力を与える場合:相手に触れ(ステータスプレートで選択するだけでもよい)与えるものを意識する。
相手の力を貰う場合:許可を取り、相手に触れ(ステータスプレートで選択するだけでよい)貰うものを意識する。
効果と使用方法を見た遥は眼を使い、玲奈の窓を呼び出し、火属性魔法の項目をタップする。
ー 火属性魔法を対象に<博愛>を発動しますか? YES/NO ー
窓にそんな文字が浮かび上がる。遥は迷うことなく《YES》をタップする。すると、新たに選択画面が出現した。
ー 配分する熟練度を選択してください。 0/43 決定 ー
遥は少し考えたあと、実験するだけだし・・・と思い、0と書かれた部分を10にして決定をタップした。すると玲奈の熟練度が減少していき、33で止まった。
一連の作業が終わり、遥が顔を上げると玲奈と目があった。どうやら作業中、ずっと遥の事を見ていたようだ。
「大丈夫か?何か変な感じとかしたか?」
少し戸惑ったような様子で遥は、未だに自分の事をぼーっとした様子で眺めている玲奈に声をかける。
「えっ?あ、あぁうん。その・・・えぇっと。な、何か、何もない所を凝視して手を動かしてるのがちょっとヤバイ人っぽく見えるなー、と。」
玲奈は遥に声をかけられた途端に我に戻り、顔を逸らしながらそう答えた。実は、背けた玲奈の顔はほんのりと朱に染まっていたりしたのだが、遥は言われたことのショックが大きすぎて気づく気配が無かった。
「や、ヤバイ人。まぁそうだよな。他の人からしたら見えてないんだもんね。うん。そうだよね。それが普通だよね。」
精神的なダメージをくらい地面にのの字を書き始めた遥を見て、選んだ答えが間違っていると気づいた玲奈はすぐに別の方向に話を移動させた。
「ね、ねえ!何か試したいことがあったんじゃなかったっけ!」
少し焦ったように放たれた言葉に遥は顔を上げた。
「そーだった。忘れてた。」
そう言い放ち、立ち上がった遥は玲奈から杖を借りて川に向かって構える。
<汝、火を司る精霊よ。我が命に従い、敵を打つ球となれ。 火球>
遥が唐突にそう呟くと遥の前に玲奈のよりも一回りほど小さい火の玉ができあがる。打ち出された火球は10cmほど進んだ所で消滅した。
「やった!勝った!」
後ろで拳を握っている玲奈にため息をついて、また杖を構えた。先ほどと違い、目をつぶってしっかりとした火のイメ−ジを固める。
<汝、火を司る精霊よ。我が命に従い、敵を打つ球となれ。 火球>
遥は目を瞑ったまま、ゆっくりと、そしてしっかりと詠唱を紡いだ。
遥の前に作り出された火球は先ほどのものとほとんど同じだったが、一つだけ違う点があった。
「え?青い?」
そう。遥が作り出した火球は赤ではなく、青かったのだ。その火球は10cmほど進んだ所で消滅した。
「ね、ねぇ。今のどうやったの!?教えて!」
玲奈が袖を掴みながら興奮したような声で聞いてくる。遥は面倒くさそうな顔をしながら、眼で見た火属性魔法の説明をする。
「へぇ。そうだったんだ。私の読んだ本にはそんな事書いてなかったけどなぁ。」
遥の説明を聞いた玲奈は顎に手を当て、何やら考えながらそんなことを言った。ちなみに読んだ本とは<禁書庫>にあった「ゴブリンでも分かる火属性魔法!」と言うものである。ちなみに読み終わっていない。と言うか理解出来ていない。
「そらぁあんな本にはそんな事書いてないだろ。ゴブリンにそんなこと理解出来る頭があるとは思えないし。」
遥が何も考えずに返すと、玲奈は自分が本を理解仕切れずに途中で投げ出した事を思い出した様で、頬を膨らませそっぽを向いた。
「どうせ私の知能はゴブリン以下ですよー。」
怒った様にそんなことを言ってくる玲奈に遥はため息を付きながら言葉をかける。
「はぁ。そんな気にすることないだろ。予備知識がないんだから、理解するのに時間がかかるのは普通だろ。」
思わぬ人からの弁護の言葉に玲奈はキョトンとした顔で遥を見た。2、3秒の間、2人は時間が止まったかのように固まっていた。その沈黙か、或いは視線に耐えられなくなったのか、遥が声を上げる。
「ま、まぁ。アレだ。そんな気負いしないで時間かけてやればいいってことだ。ほ、ほら。さっさと続き始めるぞ。」
焦ったように早口でまくし立てる遥を見て玲奈は笑い声を漏らした。遥は少し恥ずかしそうに顔を背けた。
その後、2人は日が暮れるまで魔法の練習をして宿屋に戻っていった。
それからさらに3日がたった。その3日の内1日は魔法と剣術の練習に、残りの2日は魔物狩りに使っていた。主な理由は実践経験を積むことと魔石集めである。そして今も魔物狩りのために森に来ていた。
「ねぇ。あのさ。」
2人で歩いていると玲奈が疲れたような声を上げた。遥は何となくではあるが玲奈の言いたい事が分かったようで、返事に生気がこもってなかった。
「ここの森さ・・・・・」
玲奈は一度ソコで言葉を切った。そして少しためてから、先ほどよりも大きな声で言い放った。
「何でゴブリンしかいないのよ!!」
そう。この森での2日間に及ぶ魔物狩りの成華はゴブリン23匹、ゴブリンナイト2匹、ゴブリンマジシャン3匹、ゴブリンシャーマン1匹である。大量に狩ったおかげで、玲奈も魔物を殺すことに抵抗が弱くなってきたのだが、ゴブリンしかいないことに段々と嫌になってきたらしい。
「そうだな。魔物相手にはいい感じに経験積めたし、明後日にでも次の場所に行くか。たしか道なりに歩いて行けば1週間もかからずにそこそこ大きな町に着いたはずだ。」
「じゃあ決まりね!早く帰って準備しましょう!」
そう言って玲奈は宿への道を楽しそうに走り出した。
「おい!出発は明後日だから今から準備する必要は・・・」
玲奈に向かって放たれた言葉は彼女には届いてなかった。
「はぁ。待てよ。そんなに急ぐと転けるぞ。」
そう言いながら遥は玲奈の後を追って走り出した。
「ねぇ。本当に大丈夫なの?」
玲奈は未だに辛そうに歩いている遥に声をかける。
「摺り足で歩けばまぁ何とか・・・。」
そう言う遥は出来るだけ足を上げないようにしながら森を進んでいた。しばらくして、一昨日に水浴びをした川に着いた。
「さて。今からお前に魔法の練習をしてもらおうと思う。ちなみに俺は、眼を使ってスキルの効果の確認をする。」
到着1番にそんなことを言った遥に向かって玲奈は疑問を口にした。
「それはいいんだけどさ、何で川?」
「火属性魔法を使っても安心ってのと、視界が確保出来るからだ。」
遥は何を当たり前な事を言ってるんだ、と言うような呆れ顔で答えた。玲奈はなるほど、と言った様子で頷き、ギリギリ水に足が付かない所まで進む。そして、魔法を使おうと杖を構えた。
<汝、火を司る精霊よ。我が命に従い、敵を打つ球となれ。 火球>
玲奈がそう唱えると、小さな火の球が現れる。玲奈が火球を打ち出すと、ゆらゆらと不確かな軌道を描き、20cmほど進んだ所で消失した。
「おぉ!凄い!見てみて遥!手からなんか火がこうボゥッとでるんだよ!」
「お、おう。そうか。よかったな?」
魔法が使えた事に興奮して語彙力がひどいことになっている玲奈の勢いに伸され、遥はそう答えるのがやっとだった。ぎこちない返事をした遥は玲奈のスキルの使い方を見始めた。
火属性魔法 熟練度:43
火をおこし、操る事の出来る魔法。火力は、その者の熟練度に比例する。また、その者のイメ−ジによって威力などが変わる。
使い方
自分が使いたい魔法の詠唱をするか、自力で魔力を操作する事で発動可能。
その情報を呼んだ遥は試したい事がある、と言って「博愛」を使い火属性魔法を借りようと、玲奈に声をかける。
「ん?別に良いわよ。」
と、そう言って玲奈は特段気にした様子もなく許可を出した。じゃあ早速、と遥は自分のステータスを呼び出し、「博愛の恵み」の項目を選ぶ。
博愛の恵み
その者は全てを愛する。その者は愛をもって全てを征する。その愛は時に力を与え、時に力を奪う。何人も平等に、公平にそして無慈悲に全てを牛耳る。熟練度を10貰えば、相手にスキルを残したまま、スキルを得ることが出来る。
使用方法
自身の力を与える場合:相手に触れ(ステータスプレートで選択するだけでもよい)与えるものを意識する。
相手の力を貰う場合:許可を取り、相手に触れ(ステータスプレートで選択するだけでよい)貰うものを意識する。
効果と使用方法を見た遥は眼を使い、玲奈の窓を呼び出し、火属性魔法の項目をタップする。
ー 火属性魔法を対象に<博愛>を発動しますか? YES/NO ー
窓にそんな文字が浮かび上がる。遥は迷うことなく《YES》をタップする。すると、新たに選択画面が出現した。
ー 配分する熟練度を選択してください。 0/43 決定 ー
遥は少し考えたあと、実験するだけだし・・・と思い、0と書かれた部分を10にして決定をタップした。すると玲奈の熟練度が減少していき、33で止まった。
一連の作業が終わり、遥が顔を上げると玲奈と目があった。どうやら作業中、ずっと遥の事を見ていたようだ。
「大丈夫か?何か変な感じとかしたか?」
少し戸惑ったような様子で遥は、未だに自分の事をぼーっとした様子で眺めている玲奈に声をかける。
「えっ?あ、あぁうん。その・・・えぇっと。な、何か、何もない所を凝視して手を動かしてるのがちょっとヤバイ人っぽく見えるなー、と。」
玲奈は遥に声をかけられた途端に我に戻り、顔を逸らしながらそう答えた。実は、背けた玲奈の顔はほんのりと朱に染まっていたりしたのだが、遥は言われたことのショックが大きすぎて気づく気配が無かった。
「や、ヤバイ人。まぁそうだよな。他の人からしたら見えてないんだもんね。うん。そうだよね。それが普通だよね。」
精神的なダメージをくらい地面にのの字を書き始めた遥を見て、選んだ答えが間違っていると気づいた玲奈はすぐに別の方向に話を移動させた。
「ね、ねえ!何か試したいことがあったんじゃなかったっけ!」
少し焦ったように放たれた言葉に遥は顔を上げた。
「そーだった。忘れてた。」
そう言い放ち、立ち上がった遥は玲奈から杖を借りて川に向かって構える。
<汝、火を司る精霊よ。我が命に従い、敵を打つ球となれ。 火球>
遥が唐突にそう呟くと遥の前に玲奈のよりも一回りほど小さい火の玉ができあがる。打ち出された火球は10cmほど進んだ所で消滅した。
「やった!勝った!」
後ろで拳を握っている玲奈にため息をついて、また杖を構えた。先ほどと違い、目をつぶってしっかりとした火のイメ−ジを固める。
<汝、火を司る精霊よ。我が命に従い、敵を打つ球となれ。 火球>
遥は目を瞑ったまま、ゆっくりと、そしてしっかりと詠唱を紡いだ。
遥の前に作り出された火球は先ほどのものとほとんど同じだったが、一つだけ違う点があった。
「え?青い?」
そう。遥が作り出した火球は赤ではなく、青かったのだ。その火球は10cmほど進んだ所で消滅した。
「ね、ねぇ。今のどうやったの!?教えて!」
玲奈が袖を掴みながら興奮したような声で聞いてくる。遥は面倒くさそうな顔をしながら、眼で見た火属性魔法の説明をする。
「へぇ。そうだったんだ。私の読んだ本にはそんな事書いてなかったけどなぁ。」
遥の説明を聞いた玲奈は顎に手を当て、何やら考えながらそんなことを言った。ちなみに読んだ本とは<禁書庫>にあった「ゴブリンでも分かる火属性魔法!」と言うものである。ちなみに読み終わっていない。と言うか理解出来ていない。
「そらぁあんな本にはそんな事書いてないだろ。ゴブリンにそんなこと理解出来る頭があるとは思えないし。」
遥が何も考えずに返すと、玲奈は自分が本を理解仕切れずに途中で投げ出した事を思い出した様で、頬を膨らませそっぽを向いた。
「どうせ私の知能はゴブリン以下ですよー。」
怒った様にそんなことを言ってくる玲奈に遥はため息を付きながら言葉をかける。
「はぁ。そんな気にすることないだろ。予備知識がないんだから、理解するのに時間がかかるのは普通だろ。」
思わぬ人からの弁護の言葉に玲奈はキョトンとした顔で遥を見た。2、3秒の間、2人は時間が止まったかのように固まっていた。その沈黙か、或いは視線に耐えられなくなったのか、遥が声を上げる。
「ま、まぁ。アレだ。そんな気負いしないで時間かけてやればいいってことだ。ほ、ほら。さっさと続き始めるぞ。」
焦ったように早口でまくし立てる遥を見て玲奈は笑い声を漏らした。遥は少し恥ずかしそうに顔を背けた。
その後、2人は日が暮れるまで魔法の練習をして宿屋に戻っていった。
それからさらに3日がたった。その3日の内1日は魔法と剣術の練習に、残りの2日は魔物狩りに使っていた。主な理由は実践経験を積むことと魔石集めである。そして今も魔物狩りのために森に来ていた。
「ねぇ。あのさ。」
2人で歩いていると玲奈が疲れたような声を上げた。遥は何となくではあるが玲奈の言いたい事が分かったようで、返事に生気がこもってなかった。
「ここの森さ・・・・・」
玲奈は一度ソコで言葉を切った。そして少しためてから、先ほどよりも大きな声で言い放った。
「何でゴブリンしかいないのよ!!」
そう。この森での2日間に及ぶ魔物狩りの成華はゴブリン23匹、ゴブリンナイト2匹、ゴブリンマジシャン3匹、ゴブリンシャーマン1匹である。大量に狩ったおかげで、玲奈も魔物を殺すことに抵抗が弱くなってきたのだが、ゴブリンしかいないことに段々と嫌になってきたらしい。
「そうだな。魔物相手にはいい感じに経験積めたし、明後日にでも次の場所に行くか。たしか道なりに歩いて行けば1週間もかからずにそこそこ大きな町に着いたはずだ。」
「じゃあ決まりね!早く帰って準備しましょう!」
そう言って玲奈は宿への道を楽しそうに走り出した。
「おい!出発は明後日だから今から準備する必要は・・・」
玲奈に向かって放たれた言葉は彼女には届いてなかった。
「はぁ。待てよ。そんなに急ぐと転けるぞ。」
そう言いながら遥は玲奈の後を追って走り出した。
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