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はぶられ勇者の冒険譚

雪村 和人

初めての戦闘

 昨晩追い出された後、木の上で一晩を過ごした二人は、王都に近い村へ向けて森の中を進んでいた。

「ねぇ。何かおもしろい話しとかない?」

 数時間歩いていて暇になったのか、玲奈が欠伸を我慢しながらそんなことを言った。

「あのさ。日が昇ってるとはいえ魔物はいるんだよ?もう少し緊張感を持とうね?」

 そんなのんきな話をしていると、近くから物音がした。

「な、なに?」

 音に驚いて震えている玲奈をほっておいて遥は短剣を片手に、物音がした方向に向かった。玲奈も音を立てないようについて行った。

 そこには武器を持った身長1m程で緑色をした人型の生物が3体いた。

「ねぇ、あれなに?」

「たしかゴブリンって言う魔物だ。単体だとそこまで驚異度低いけど、集団になると驚異度がバカ高くなるって書いてあったと思う。」

 玲奈の質問に小声で答えていると、ゴブリン達が2人に気づき、襲いかかってきた。

「玲奈!下がれ!」

 遥が咄嗟に指示出すが、玲奈は突然のことに動揺し固まっていた。

ゴブリン達は玲奈がすぐに動けないと判断し、標的を玲奈に定めた。

距離が近づき、ゴブリンその1が剣を振りかぶっても玲奈は動く様子がない。

 遥は玲奈に体当たりし、剣のリーチの外に出す。その勢いのまま、手持ちの短剣で、ゴブリンその1の剣をギリギリで受け止める。遥はすぐに剣を弾き飛ばす。強制的にバンザイさせられたゴブリンその1の首元に短剣を突き立てる。

 仲間を殺されて怒ったのか、ゴブリンは標的を遥へと変えた。2体を相手にするのはキツイと判断した遥は、その2に向かって短剣を、その3に向かってゴブリンその1の死体を投げつけた。予想外の攻撃にゴブリンは上手く反応が出来ない。

 遥はその隙を見逃さなかった。即座にゴブリンその1が使っていた剣を拾い、ゴブリンその2に向かって切り上げる。短剣を避けバランスを崩したゴブリンその2は避けられない。ゴブリンその2は、その首の半ばまで剣がのめり込み、倒れた。

 その光景を見たゴブリンその3は武器を置いて逃げ出した。そのゴブリンその3に向かって遥は地面に落ちていた短剣を投げつける。短剣は足に当りゴブリンその3は転けた。遥はその間に駆け寄り剣を突き刺した。

    こうして、遥の初戦闘は、幕を閉じた。

 初戦闘の緊張感がほぐれ、遥はその場に座り込む。そんな遥の頭に機械のような無機質な声が響いた。

ー レベルが上がりました ー
ー 条件を達成しました。<暴食>を発動します ー

 遥は何のことか分からず、疑問符を浮かべた。その時、変な唸り声のようなものが聞こえてきた。

     遥は緩んだ気を引き締め、剣を持って声の元を確認しに向かった。

 遥が向かった先では、玲奈が涙目になりながら吐いていた。どうやら彼女が声の主らしい。

     玲奈は、返り血だらけの遥を見て、再び吐瀉物を吐き出す。

「大丈夫か?」

「大丈夫に見える?」

 遥が声をかけると、玲奈は睨みながら質問で返した。

「大体、何であんたは平気で戦えてんのよ。」

 玲奈はヤバイ人を見る目で遥をみる。遥は肩をすくめながら答えた。

「さぁ?スキルの効果かね。まぁ、この先もこうゆう事はよく起こると思うから慣れておいた方が良いと思うぞ。」

 そんなことを真顔で言う遥を玲奈は異常者を見るような目で見ていた。そんなのは気にも止めずに遥はゴブリンの死体を漁る。

「あんた、本当に人間?生き物を殺してもなにも感じないとかどうかしてる。」

「この世界ではそれが普通らしいし、これからはこう言うのを生業にしていく予定だぞ?まず、生き物を殺す事に関しては元の世界も変わらねーだろ?お前だって肉とか魚食ってんだろ?」

 遥の言葉に顔をしかめる。そんな玲奈に遥はゴブリンの死体から取り出した小指の爪ほどの大きさの紫に光る石を投げた。

「きゃっ!」

 玲奈は小さな悲鳴を上げて石を受け取り、そのままの勢いで石を投げ捨てようとしたが、遥がそれを止めた。

「ちょ、待て!捨てるな!貴重な収入源だぞ!」

 その声に驚いて固まった玲奈に遥が説明を始めた。

「いいか?この石は魔石といって、魔物の心臓部にある物だ。この魔石はいろんな魔道具の燃料になっていて、冒険者ギルドで売れるんだ。これは、魔物の強さによって大きさが変わる。値段もな。」

 玲奈は遥の説明に感心したような目で魔石を見ていた。その後、キョトン表情で遥に質問を投げかけた。

「すごいんだねー。で、魔道具ってなに?」

「魔石や魔力を燃料にして可動させる道具のことだよ。」

 と、遥が説明するも玲奈はまだ首を傾げていた。

「ごめん。ちょっと何言ってるか分からない。」

「魔道具は電子機器。魔石は電池だ。」

「理解した。」

 そう伝えると納得したのか玲奈は魔石を遥に投げ返す。直後、玲奈は突然何かに驚いたようにビクついた。

「ね、ねぇ。今なんか変な声が聞こえたんだけど。」

 そう言って錆付いたロボットのような動きで遥を見た。遥は忘れてた、というような顔をしてカードを取り出した。そこには、

吉村 遥[表] F   17歳 天職:剣士
LV 2
HP 106
MP 48
STR 73
DEX 51
VIT 82
AGI 74
INT 31
MND 27
[スキル]
精神苦痛耐性 危機感知 痛覚鈍化 剣術 棒術 夜目 鼓舞 言語理解
[恩恵]
暴食の恵み 博愛の恵み
[パーティー]
水木 玲奈

 と、記載されていた。

「は?」

 遥はステータスの変わりようを見て目を丸くしていた。何せ元の3倍近い数値になっているのだ。驚くのも無理はない。

 玲奈は、固まった遥の後ろに回り込み、カードをのぞいた。そして、その数値に目を見開き、遥に訪ねた。

「ねえ。レベルUPってこんなにステータス延びるの?」

「いや。さすがにここまでは延びない・・・・はず。」

 と、遥は答えた。

 そう。この世界ではレベルが上がるとステータスが上昇するようになっている。だが、通常はどれだけ高くてもその時のステータスの3分の1が限度なのである。また、スキルが増えることも本来ならあり得ない。例外として、血の滲むような努力をすれば後天的にスキルを得る事もあるが、ごく少数である。

 その事実を知っている遥は混乱していた。レベルは1しか上がっておらず、別段努力をした訳でもない。なのにこの変わりようは何なのか、と。

 しかし、その異常さが分かってない玲奈は特に気にもとめず、自身のカードを取り出して確認する。遥もそのカードをのぞき込む。

水木 玲奈 F   16歳 天職:魔法使い
LV 3
HP 112
MP 86
STR 59
DEX 112
VIT 42
AGI 30
INT 124
MND 69
[スキル]
火属性魔法 魔法強化 魔道具制作 魔石鑑定 言語理解
[恩恵]
知識の恵み
[パーティー]
吉村 遥

 遥程の異常はないが、どう見てもスキルが増えている。遥は訳が分からないといった表情になり、頭を抱えた。

「もう。どうなってんだ・・・これ。書庫にはなかったぞ。こんな情報。」

 遥が疲れたようにぼそっと呟いた。

<その答えを教えて上げようか?>

 突然二人の頭の中に声が響いた。直後、目の前が鮮やかな緑色の光に包まれた。二人はその光から目を庇う。


 光が収まり目を開けるとそこには、古代ローマ人のような服装をした中性的な人物が立っていた。

<呼ばれて飛び出てジャッジャジャジャーン!>

「呼んでないし古いわ!」

 現れた人物のセリフに思わず素で返す遥。玲奈はなにを言っているのか分からないといっ表情をしていた。その人物は二人の反応を見て首を傾げる。

<君たちのところじゃこれが流行ってるんじゃないの?>

「そんなわけあるか!」

 その人物はそうだったのか、といった表情で頷いている。

<まぁ、それは置いといて、改めて初めまして。僕の名前はステイス。この世界の神だった者だ。>

 そういってその人物。ステイスは、遥達を見つめた。

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