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はぶられ勇者の冒険譚

雪村 和人

異常なステータス

 隣の部屋には横に長い机とその上に乗っている水晶のようなものが3つ、そして山積みになっているカードがあった。
生徒達が頭の上に疑問符を浮かべていると、アルトがしゃべり出した。

「今からここで皆様方のステータスを測ってもらいます。方法はいたってシンプル。私が合図したら、1人づつ順番にあの水晶玉に触れてください。するとカードにその人のステータスが刻まれていきます。
因みに、スキルは今までの生活が影響する事があるそうですよ。」

 まさにファンタジーと言うような方法に、主に男子から感嘆の声が挙がる。

「では早速始めますので3列に並んでください。」

 その声にならい生徒達は並び始めた。

 生徒達が並び終わり最初の三人が水晶玉に手を置いた。するとゆっくりと水晶玉が淡い水色に光り出した。その光を見た生徒達は少し警戒したような表情になったが、何事もなく光は収束していった。代わりに水晶玉の隣に置いてあったカードが光り出し、文字を刻んでゆく。

 アルトはそのカードを手に取り1人づつステータスを確認し、驚いたような、満足したような顔になった。

「さすが勇者様だ。この世界ではあり得ない能力値をしていらっしゃる。祝福も想像以上に強力なもののようですな。」

 そう言い、アルトはカードを返した。
その後、何事もなくカード作成の作業が続いていると、水晶玉が強く輝きだした。その水晶玉に触れていたのは光輝だった。アルトは光輝のカードを確認すると目を見開いた。

「まさか真の勇者様までいらっしゃられるとは!」

 そのカードにはこう記載されていた。

柊 光輝 F   17歳 天職 勇者
LV 1
HP 400
MP 60
STR 200
DEX 200
VIT 200
AGI 200
INT 200
MND 200

[スキル]
剣術 光属性魔法 魔法耐性 感覚強化 HP自動回復 MP自動回復 筋力強化 限界突破 予知 聖剣使い 言語理解

[祝福]
早熟 大器晩成

「あの、それはどう言うことでしょうか?」

 と、光輝が訪ねるとアルトは信じられないものを見たような顔をして語り出した。

「この世界では勇者召喚によって呼ばれた者を総じて勇者と呼んでいるのですが、天職までが勇者になっている人はほんの一握りなのです。その者を我々は真の勇者と呼んでいるのです。」

 その話を聞いた生徒達は光輝に憧れの目を向けた。光輝は少し照れくさそうに、そして少し誇ったように頭をかいていた。

 その後もおおむね順調に[時音など数人をのぞいては]進んで行き、遂に遥の順番がやってきた。遥は自分が小説の主人公のようになれるかもと、期待を胸に満を持して水晶玉に手を乗せた。
 すると、水晶玉は他の生徒達とは比べものにならない程に弱々しい光を放った。それに気付いたアルトは怪訝な顔をしながら遥のカードを手に取った。その内容は・・・

吉村 遥[表] F   17歳 天職 剣士
LV 1
HP 30
MP 20
STR 15
DEX 12
VIT 36
AGI 30
INT 21
MND 0

[スキル]
精神異常耐性 危機感知 痛覚鈍化 双魂所持    言語理解

([恩恵] 暴食の恵み 博愛の恵み)

 と言うもので、アルト曰く、この世界の基準よりも低いようだ。
それを聞いた、生徒の一部がクスクスと笑い出した。それを無視して遥はアルトに気になったことを聞いた。

「アルトさん。この恩恵と表とはなんのことでしょうか?」

 それを聞いたアルトは、疑問符を浮かべて

「恩恵?とはなんのことでしょうか?」

 アルトの答えを聞いた遥は戸惑った。そんな中もう1人、遥程ではないが、光が弱い生徒がいた。その生徒の名前は水木 玲奈。バレー部の準エース枠でそこそこ人気もある、成績優秀な生徒だ。遥が玲奈の方向を向くと、友達と思われる人物にカードを見せていた。何かあったのか顔をしかめた後、何かを思いついたかのような顔をして遥の方に歩いてきた。

「えっと、遥だっけ?ちょっとあんたに聞きたい事あるんだけどいい?

 そう言って玲奈は、自分のカードを見せてきた。そこには、こう記されていた。

水木 玲奈 F   16歳 天職 魔法使い
LV 1
HP 70
MP 50
STR 37
DEX 48
VIT 36
AGI 23
INT 87
MND 39

[スキル]
火属性魔法 魔法強化 言語理解

([恩恵] 知識の恩恵)

 カードを見た遥は目を見開き、言葉を紡ぐ。

「水木さん。この恩恵って・・・」

「あんたには見えるのね。」

「あんたにはってことは、やっぱり他のみんなには見えてないの?」

「多分、私とあんた以外には見えてないと思う。少なくとも香澄は見えてなかった。」

 香澄とはさっき玲奈が話していた人物である。

 玲奈の話を聞いて、遥は疑問に思った。なぜ、カードに記されているのに自分達以外には見えないのか、と。それについて玲奈に聞くために口を開こうとしたとき、扉が開かれ1人の男が入ってきた。
 男はアルトの前まで歩いていきなにやら話を始めた。話が終わると、光輝達に向かって話し始めた。

「よくきてくださいました。勇者様方。私は宰相のローグ・シルクともうします。皆様、今日はもうおつかれでしょう?城の者に案内させますので、お部屋で休んでください。」

 そう言うと部屋の外に控えさせていたのか、メイドやら執事やらが入ってきた。遥達が案内人のところに向かうと、ローグが二人に向かって小声で「ニセ者共めが」と呟いた。それに気づいた遥は、なにを思ったのか案内人頼み1人王城の書庫へと向かった。

 その日の夜、みんなが寝静まったころ、遥の部屋に誰かが近付いてきていた。その事に危機感知のおかげで気づいた遥はこっそりと準備をしていた。準備を終えた遥の部屋にノックが響く。遥がドアを開けると1人の騎士がたっていた。

「ハルカ・ヨシムラ。宰相殿がお呼びだ。支度をして付いてこい。」

 遥は言われた通り支給品の寝間着からおなじく支給品の動きやすい服に着替え、これまた支給品の鞄を持ち騎士の元へ行くと訝しげな目で見られたが、特になにも言われず案内された。

 そうして連れてこられたのは城の門の前だった。そこに宰相の姿はなくただ門番がいるだけだった。

「少し待っていろ。」

 と兵士に言われた遥は静かに待っていると、騎士に連れられた制服姿の玲奈がやってきた。玲奈が来た事を確認すると、門番が門を開けた。玲奈が困惑していると遥を連れてきた騎士が教えてくれた。

「宰相殿から、おまえ達を王都から追い出せと命じられたのだ。悪く思うな。」

 そう言って騎士は二人を馬車に乗せ、森へと向かっていった。

 遥達を森に落とすと騎士達は去っていった。

「これから何処に向かう?王都には入れないから安全そうな洞窟でも探す?」

 そう切り出した遥に、未だ困惑した様子の玲奈は遥に向かって訪ねた。
「何であんたはそんなに落ち着いてられるのよ。それとあんたその喋り方・・・。」

 状況の理解が付いてないようで、いつものような覇気がない玲奈に少し驚きながら遥は答えた。

「落ち着いてる理由はこうなるかもしれないって予想してたからだし、この口調はどうせしばらく二人旅だろうから装うのも面倒くさいからな。」
 遥の話を聞いて何かを思い出したかのように玲奈が騒ぎ出した。

「そうよ!これからどうすんのよ!王都からも追い出されちゃったし!」
 近くで騒がれた遥はうるさいとでも言うように耳を塞いだ。

「だから予想してたって言ってんだろうが。騒ぐなよ。魔物が寄ってくるだろうが。」

 遥に怒られて冷静になったのか玲奈は静かに「ごめん」と謝った。それを見てため息を付いた遥は鞄を漁りだした。

「はい。これ一応護身用にやるよ。」

 そう言って取り出したのは短剣だった。玲奈は目を見開いた。

「あんたこれどうしたのよ。」

「書庫行った後、騎士団の詰め所に行って拝借してきた。」

 玲奈の質問に遥は鞄を漁りながら答えた。

「つまり盗んだってこと?」

 と玲奈が睨みつけてきた。遥はそれにドヤ顔で答える。

「盗んだんじゃない。借りたんだ。永久にな。」

「それ意味同じでしょう?」

 遥の自信ありげな答えに玲奈があきれたよう返し、ため息を付いた。
遥も満足したのか元の作業に戻った。

「で、結局これからどうするの?」

 と玲奈は、気を取り直して聞いてきた。遥は鞄から地図を取り出し、地面に広げた。

「一応王都追い出されたから、近くの村にでも行こうかと思う。でも夜は魔物の動きが活発になるみたいだから日が昇ってから移動した方がいいだろう。って事で、少し奥に進んで、待機だ。」

 話を聞いた玲奈は首を傾げた。

「何で、危険なのにわざわざ森の中に入っていくの?ここで待機しといた方が安全じゃない?」

 最もらしい質問に遥は頷きながら答えた。

「うんうん。良い質問だ。答えは簡単。宰相に狙われてる可能性があるからだ。ここは日本じゃないからね。都の外にでたら魔物の領域だ。外で殺しても証拠残んないから。」

 遥の言った言葉で玲奈の顔は青ざめた。それを見た遥は玲奈の顔の前で手を振っていた。

「おーい。分かったならそろそろ出発するぞ。いつまでも残ってると危ないしな。」

 そう言って遥は鞄を背負って歩き出した。玲奈は遅れないようにと早足で遥について行った。

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