悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する

ブラックベリィ

100★ありがたくソルス・エル・ピーシェをもらっていきます



 名付けによって、生まれ変わったスイレンは、ニコニコして言う。

 『ますたぁー…ご命令を………』

 嬉々としているスイレンに、私は自分のやらかしたことを反省しつつも、当初の目的をお願いする。

 「それじゃ………
  ソルス・エル・ピーシェの

  熟《う》れたモノを、全部
  採ってきてもらえるかしら?

  勿論、ここにいる他の
  精霊ドリュアスさん達にも
  歌を歌うわ

  スイレン
  それで良いかしら?」

 『はい、ますたぁー………
  みんなぁ~…私達にも
  歌ってもらえるってぇ~……』

 そうスイレンが他の精霊ドリュアスさん達に言うと、男の子に見える子が一歩前に出て答える。

 『それじゃぁ…みんな
  お願いされた

  ソルス・エル・ピーシェを
  集めよう』

 その言葉と同時に精霊ドリュアスさん達がワラワラと動き出す。

 私は、その作業の姿を見ながら、とりあえず精霊ドリュアスさん達の為に歌を歌った。

 そして、長めの歌を3曲ほど歌い終わった頃には、精霊ドリュアスさん達の集めたソルス・エル・ピーシェが山のようになっていた。

 私は、目の前のソルス・エル・ピーシェの山の半分を、とりあえず左の腕輪のインベントリを翳して入れた。

 そして、残ったソルス・エル・ピーシェの半分を、右側の腕輪にインベントリに取り込めないかと翳してみた。

 良かったぁ~…右の腕輪にも取り込めたわ。

 ソルス・エル・ピーシェが同じ空間に入ることで、仮死状態で蘇生を待っている子達に少しでも良い影響があると良いな。

 じゃなくて、大量のソルス・エル・ピーシェを確保できたら、もうこの村に用はないわね。

 不運持ちとして嫌われているんだもの、こういう場所はさっさと移動するに限るわね。

 幸い、精霊ドリュアスさん達が集めてくれた大量のソルス・エル・ピーシェは、インベントリに取り込んでも消え無かったし………。

 どうせなら、落ち着いた場所でしっかりと食べて、一角天馬《ユニコンペガサス》の子を蘇生して移動に不自由が無いくらい回復させてあげたいわ。

 できれば、コウちゃんやガッちゃんみたいに………。

 そんなコトを考えながら、精霊ドリュアスさん達の集めたソルス・エル・ピーシェを両腕の手首に嵌まる腕輪に取り込んだ私は、スクッと立ち上がる。

 「スイレン、そして多くの
  精霊ドリュアスさん達
  ありがとう

  お陰で、美味しく熟《う》れた
  ソルス・エル・ピーシェを
  たくさん確保できたわ

  ……ということで
  ここを私は離れます」

 私の言葉に、ちょっと精霊ドリュアスさん達が残念な表情になるが、スイレンがにっこり笑って言う。

 『そんな顔しなくても
  良いでしょ………

  ますたぁーについて行く
  名前を付けてもらった

  私が、みんなの指標と
  なれるんだから…ね』

 その言葉に、やっぱり男の子に見える精霊ドリュアスさんが応える。

 『そうだな、それじゃ……
  小休止とかになったら
  俺達を呼んでくれよ』

 そうスイレンに言った後、他の精霊ドリュアスさん達に向かって、彼?は言う。

 『みんな、俺達は
  元の場所へと戻ろう』

 その言葉と共に、大量にいた精霊ドリュアスさん達はフッと姿を消したのだった。

 後には、私が名前を付けたスイレンだけが残った。

 スイレンは、私に小さな琥珀のようなモノが嵌まったペンダントを差し出す。

 『コレ、ますたぁーに
  持っていて欲しいの

  できれば、ますたぁーに
  身に付けて欲しいです

  ソレは、私です』

 ちょっと意味不明なことを言っているが、スイレンの寄り代みたいなモノかなと思い、私は頷いて受け取り、そのまま首にかけて、琥珀のようなモノが付いたペンダントヘッドを衣服の下へと仕舞う。

 勿論、傷付けたり落としたりしないようにする為である。

 『嬉しい、ますたぁー』

 そう言って、私の前でクルリと中を舞って、スイレンはペンダントの中へと姿を隠した。

 「それじゃ、行こうか?
  コウちゃん、ガッちゃん」

 『うん、ママ』

 『はい、主さま』

 「さよなら
  ソルス・ロス・エンダ村」

 そう呟いてから、私はガッちゃんに言う。

 「ガッちゃん、先導お願い

  どこか、安全な場所で
  ゆっくりと出来るような
  場所へと案内してくれる?

  出来れば、冒険者登録が
  できるギルドが存在する

  次の街へ向かった方向で
  探して欲しいわ………」

 『はい、わかりました』

 そう頷いたガッちゃんは額の魔宝石を撫で撫でしてから、おもむろに歩き出す。

 私は、コウちゃんを肩に乗せ、その後をついて行くのだった。












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