悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する
099★樹の精霊ドリュアスさんにお名前をつけました
私の視線を受けたコウちゃんが、ちょっと人間臭い仕草で、肩を竦めて言う。
『ママぁ…歌って上げればぁ…』
そんなコウちゃんを見て、ガッちゃんはクスクスと笑って、私に言う。
『コウちゃんはさ、主さまに
仕えるモノが増えるのが
気に入らないんだね』
『ママの愛情が減るだろ』
あらあら、コウちゃんがツン状態になっているわ。
ちょっと不貞腐れたように言うコウちゃん、そんなコウちゃんも可愛いです。
クスクス…ほんとコウちゃんて、前世でのトラちゃんそっくり。
もしかしなくても、コウちゃんも転生していたのかな?
そんなコト言っていたけど、本当かもしれないわね。
なんて私が思っている間にも、ガッちゃんが笑って言う。
『ほぉ~んとコウちゃんは
嫉妬深いんだから………
それでも、主さまを
補助するモノは必要だ
って思っているから
そう言うんだよね』
『ママの安全には
かえられないからな
感情的にはイヤだけど
樹木の精霊は役に立つ』
『そうだね、コウちゃん
僕も、樹木の精霊達
ドリュアスを歓迎するよ
主さまに有効だからね』
2人の言葉に、私は頷く。
とりあえず、2人とも友好的な感じだから、代表で出て来た樹木の精霊ドリュアスさんに名前を上げれば良いのかな?
この時、私は綺麗さっぱりと、精霊に名前を上げる意味を失念していたことは言うまでもない。
後に、それで思いっきり苦悩しましたとも………。
そんなコトに気を回す余裕の無い私は、とりあえず目の前に出て来たの精霊ドリュアスさんに視線を合わせて言う。
「えぇーと、それじゃぁ……
貴女で良いのかしら?
樹木の精霊ドリュアスを
代表して、私について
来てくれるかな?」
私の言葉と視線に、一歩前に出て来て『歌を歌って欲しい』と言った樹木の精霊ドリュアスさんが、それはそれはとても嬉しそうにコクコクする。
『…とても…嬉しいです…
ますたぁー………』
ぅん? ますたぁー?
って、人間の私に言って良いの?
じゃなくて、目の前の樹木の精霊ドリュアスさんにお名前をつけて、ソルス・エル・ピーシェを採取してもらいましょう。
髪は綺麗な若葉色よねぇ~…肌は他の子と違って、樹木の茶色じゃなくて翠色だし、瞳は綺麗なオレンジ色だから………。
うん、ここは単純に翠色とオレンジの音を切り取って、スイレンで良いかな?
「それじゃ……貴女は
今日からスイレンって呼ぶわ」
その瞬間、私とスイレンの間で何かが繋がる感覚を感じて、私は小首を傾げて目をパチパチする。
なんか…見えるモノがちょっと違うんですけど………コレって何?
コウちゃんを手に入れてから《魔力》とかの流れを感じて視るコトが出来るようになったことには気が付いていたけど………。
ガッちゃんが私を主さまって呼ぶようになった辺りから、かなり《魔力》の流れとかを視れるようになったけど………。
今は、もっと鮮明にその流れが視《み》えるわ。
特に樹木から溢れる生命力? が、波動みたいに空間に広がるのは……綺麗ねぇ………。
コレって、もしかしてスイレンのお陰かしら?
とりあえず、思念でスイレンに名前の意味を送ってみましょうか?
勿論、綺麗な睡蓮が湖水から顔を出して満開に咲き誇る幻想的なイメージを付け加えて送ってあげましょう。
名前の意味は重複させるほど、盗られずらいって話しを聞いたことあるしね。
そんなコトを考えながら、私はスイレンに名前の意味を思念で送ってみた。
次の瞬間、スイレンは淡く輝いて、その綺麗な若葉色の髪は、緋色のグラデーションに変化していた。
頭頂部は色鮮やかな深紅で、髪先に向かっていくほど色が薄くなり、その先端は本来の綺麗な若葉色という姿になっていた。
そして、少し成長ししていた。
幼女ぽい容姿から少女に、大きさも他の樹木の精霊ドリュアスさん達よりひと回り以上、大きく成長していた。
その姿を見た瞬間、私は自分がやらかしたことを悟った。
が、既にもう後の祭りだった。
「だ…大丈夫? スイレン?
苦しいとかある?
その……ちょっと……
イメージきつかったかな?
綺麗な蓮の花の群生を
見せたかったから………
その時のイメージを
投射したんだけど………」
私の問いかけに、スイレンは華やかに笑って答えてくれる。
『ますたぁー…スイレンは
とても嬉しいです
こぉ~んなに美しく
成長できるなんて………』
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