悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する
078★モノは使いようです
行き先がはっきりと決まったから、私ははりきって宣言する。
「さあ、ソルス・ロス・エンダ村に向かって出発よ」
はりきっている私に、コウちゃんからスパッとダメだしが入った。
『ママ、ママは、逃亡している自覚は無いの?』
えっとぉ~…逃亡って? 何から?
「えっ? コウちゃん、逃亡している自覚って?」
きょとんとする私に、コウちゃんは顔を洗いながら、さも当然のように言う。
『ママは、自覚ないみたいだけど、美少女なんだよ
まして、あの金月の女神ディアーナの化身
って言われている母親と
冴え凍る銀の獅子王レギオンって美男子の
父親の間に生まれた超絶美少女なんだよ
それが、パパに会いたくなくて逃げてるんでしょ?』
言われて、私は小首を傾げる。
確かに、コウちゃんの裏技痩身美容で、当初よりだいぶ細くは綯ったけど………。
美少女? 私が? 整形美容はしてないわよ。
コウちゃんてば、何を言っているのかしら?
「えっ? 私は、ただのデブスよ」
そう、答えた私は、まだ、自分の姿に自覚がぜんぜん無かった。
だから、コウちゃんは私に向かって、噛んで含めるように言う。
『い・ま・は、痩せて引き締まったウェストに
ボンと張り詰めた形の良いバスト
プリッとして魅力的なヒップのナイスバディに
輝く銀の髪に潤んだ紫の瞳の美少女なんだよ
わかってる? 余分な肉は、コウちゃんが
美味しくいただいちゃったから
綺麗な瞳もバッチリと見えるの………
ママだって気付いてるでしょ…視界が広いって………』
言われて、私はハッとする。
意識がはっきりし、モノがしっかりと見えるのは、魔力を奪い、思考力等を低下させる呪具のセイばかりではないと………。
「えっとぉ~………」
『いまいちわかってないね、ママ
ママの今の姿って、前世で凝りまくって
課金しまくって造ったアバターに
勝るとも劣らない程の美少女だって言ってるの』
そこでようやく、コウちゃんが言っている意味を把握する。
だって、あのアバター…めっちゃ課金して、容姿に能力にって付加しまくって、理想の姿に造ったんだもの………。
って、それと勝るとも劣らない姿なの………今の私って………。
いや、でも…そっかぁー…あのお母様とお父様の容姿を引き継いでいるのよねぇ………。
ふわぁ~…それって、天然モノの美少女ってこと?
そこに思考が行き着いた私は、思わず驚きの声を上げる。
「えっぇぇぇぇぇ~…マジでぇぇぇ~………」
びっくりする私を満足げに、コウちゃんはくふくふと笑いながら背中の3対の翼をぱたぱたさせて言う。
『だから、ママに出会った人は
一目でママを覚えられるし
絶対に忘れてくれないよ
そこんとこの自覚を持ってね』
コウちゃんの忠告に、私は小首を傾げる。
自覚って言われてもねぇ~…ずぅぅぅぅぅぅ~っと、あのお花畑の馬鹿とその取り巻き達に、デブスって言われ続けていたから………。
今更、見た目が多少変わったぐらいで………って、思っていたのよねぇ………。
そこまで、ばっきりと言われるほど天然モノの美少女になっているって自覚は……はっきり言って、無いわ。
「えぇ~とぉ~……それじゃ、どうすれば隠せるかな?」
もう、ここはコウちゃんの助言をあてにしよう。
なんと言っても、ナビゲーターしてくれるのコウちゃんとガッちゃんだし………。
『だったら、ママが最初に頭に着けていた
意識阻害と認識阻害のティアラを着ければ良いよ』
あぁ…アレね……でも、あのティアラ着けると、魔物が来ないんじゃない?
レベルアップも出来なければ、ガッちゃんのご飯も来ない………じゃないかな?
「でも、アレって強力過ぎるから
目の前に居ても居無いコトにされちゃうわ
私は、魔物を倒してレベルアップしたいのに………」
ちょっとションボリする私に、コウちゃんが更に助言してくれる。
『あのね、ママの魔力で、ティアラの効力を抑えるの』
言われて、そうすれば良いのか………っと、納得する。
まだ、前世の記憶と今の私の意識が馴染んでいないことを改めて実感する。
記憶という名の知識はあるはずなのに、それを応用するだけの余裕が全然ないみたいね。
でも、とりあえず、ティアラで解決するなら、そうしようっと。
「そっかー…私の姿は見えるけど
美醜まではわからないようにするのね」
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