悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する

ブラックベリィ

066★やっぱり、3通目も公開しよう


 私は、伯母上の手紙を握って苦悩するコトに、無理やり一区切りをつけた。
 ここで悩んでも、どうしようもないからだ。
 そして、なぜ、私が1人で苦悩する必要があるのだ。

 シルビアーナの夫候補と、その親にも、苦悩してもらおうじゃないか?
 そう考え直して、手紙に魔法をかけた。
 今も空中に公開されている2通の手紙と同じにしたのだ。

 3通目の手紙が、空間に映し出された途端に、ざわめいていた会場内は水を打ったように静かになった。

 勿論、ブランデルを掴んでいるアーダベルトも瞳を見開いていた。
 馬鹿を翻弄していたアルディーンは、私が手紙を公開した途端。
 無造作に、馬鹿を打ち据えて気絶させ、手紙に集中し始める。

 ブランデルもアーダベルトに腕を掴まれながらも手紙を読んでいる。
 私の友とその息子達も………。
 そして、私の部下は、視線で私に問う。

 『姫様のいるダンジョンに、今直ぐ飛びますか?』と。

 そうだな、今すぐに、俺はシルビアーナを助けにダンジョンに飛びたいよ。
 だがな、ある程度の収拾をつけないといけないんだ。
 ブランデルの権威が、だだ下がりしてしまったから………。

 そうだな、俺が怒りに任せてやらかしたコトも、原因のひとつだ。
 が、あの馬鹿が、俺の公開した伯母上の手紙に、真実の証明をつけてしまったから………どうしようもない。

 ブランデルが、さっさとあの馬鹿を拘束していれば………。
 いや、アルディーンが、あの馬鹿をいたぶっていなければ………。
 軽く頭を振って、俺は命令する。

 「近衛兵、廃嫡された馬鹿を拘束して
  とりあえずは………

  そうだ…皇太子宮に突っ込んで
  監視しておけ」

 「………」

 「返事はどうした?
  ここにいる皇族の中で、誰が命令している?
  取り乱して、声も出せないでいるではないか?」

 「し、しかし………」

 「誰が、直答を許した?
  私は、先代皇帝アレクサンデル陛下の実の甥だ

  第2皇子は、成人していない
  ゆえに、皇位継承順位で言えば、私の下だ

  私に命令できるはずのブランデルが
  何も言わないのだから、諦めて私に従え

  返事はどうした」

 「はい、殿下の仰せのままにいたします」

 「さっさと、その馬鹿を持って行け」

 「はっ」

 近衛兵の一部が、私の命令に従って、気絶した馬鹿を会場から運び出した。
 それを見送ってから、私は別の命令をする。

 「皇后、及び、側室、愛妾も
  それぞれの宮に連れて行き、お守りしろ監視しておけ

  皇后いやアデリーヌ、貴女が、あの馬鹿に
  あの忌々しい呪具のコトを伝えていれば
  事態は変わっていたかもしれない

  が、事態は動いた

  貴女は、この皇室を滅ぼしかけている
  原因を作った女として、歴史に残るでしょうね

  馬鹿の母親としての他に………
  さっさと連れて行け。ただし、丁寧にな」

 「はっ」

 私の命令に従い、近衛兵及び侍従と侍女は、皇后達に連行って、会場内から出で各自の宮に向かった。
 この会場に残っている皇族のは、言葉を封じられたブランデルと私だけになった。

 さてどうしてくれようか? と、思っている時に………。
 第2皇子が、側近を連れて会場に入ってきた。

 「シルビアーナ姫は、兄上と婚約破棄したんですか?」

 お前の第一声がそれか………溜め息しか出んな。
 情報が遅すぎるぞ………コヤツも、声を封じるようにと視線で言う。

 すかさず、アストリスが指先で空中に紋章を描く。
 すると、皇子は、おのれの喉を掴んで、口をぱくぱくさせる。
 うん、魔法は発動されたな、と私は思った。

 「近衛兵、皇子を宮に連れて行け」

 「はっ」






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