悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する

ブラックベリィ

058★パーティー会場にて・そして新たな断罪が始まる1



 ようやく、パーティー会場へと入場し、娼婦にたぶらかされた愚か者達の行いを知ったブランデル皇帝は、愕然としてから激高する。

 「この愚か者っ……

  なぜ、シルビアーナから
  皇太子妃の証しを奪い

 何処かも判らぬ場所に転移させたっ」

 怒りに満ちた叱責に、ルドルフは何故自分を焼き殺さんばかりの視線で見るのかわからないという表情で答える。

 「父上、シルビアーナは
  私のマリエを苛め殺そうとしたのです

  皇太子妃に相応しい行いとは思えません
  まして、魔力も無く醜い………」

 我が娘を貶める言葉を口にする馬鹿に、ブランデル皇帝は一瞬だけ言葉を選び叱責する。
 そうよなぁー…このような大勢が集まるパーティーで、言えるはずもないよなぁ……。
 そこの馬鹿を皇太子とする為に、我が娘の魔力を奪っていたなど………。

 「お前は、政略結婚を
  なんだと思っているのだ」

 ブランデル皇帝のもっともらしいの言葉の叱責に、馬鹿は平然と答える。
 自分がしでかしたコトの意味を知らずに………。

 「カイドール辺境伯爵など
  政治に関わってもいないし
  身分もたかが伯爵です

  婚約破棄したとしても
  なんの影響も………」

 その言葉で、私は馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、自国の歴史や貴族の血筋すら把握してい無い、本当の馬鹿であることを改めて知る。

 ブランデル皇帝よ、いくらなんでも、しくじりすぎじゃないか?
 仮にも、自分の後継者だろう………頭が痛くなるわ。
 良かった、あの馬鹿とシルビアーナの間に子が生まれるようなコトが無くて………。

 そう思う私の目の前では、まだ茶番が続いていた。

 「馬鹿を言うな
  シルビアーナは
  ソレント王国の王女の娘だ

  また、カイドール辺境伯爵レギオンの母は
  我が父先代皇帝の同母妹だ

  2つの王家の血を引く稀有な存在だから
  お前の婚約者にしたのだぞ

  その程度のことも知らなかったのか?」

 愕然とするブランデルに、馬鹿はなおも自分のしでかしたコトを反省もせずに言い募る。

 「ですが、シルビアーナに魔力はありません
  魔力格差が有り過ぎると子が生まれる
  可能性がほとんどなくなります

  その点、ここにいるマリエは
  光属性の魔力を持ち、魔力量もかなり有り
  私の妃に相応しいのです

  また、容姿もシルビアーナとは違います」

 誇らしげにそう言う馬鹿の腕に縋り付く、3点セットを許可も無く勝手に身に着けている男爵令嬢を冷然と見下ろして言う。

 「その汚らわしい娼婦と
  高貴なシルビアーナを比べるのも
  おこがましいわっ」

 あまりの息子の馬鹿さかげんに、ブランデル皇帝は血管が切れそうになりながら、震えるコブシを握り締める。
 そんなブランデル皇帝の様子に気付くこともなく、更に馬鹿は言い募る。
 自分は、正当なコトをしたのに、何故怒るのかと………。

 「父上、シルビアーナには魔力が無いのですよ
  血統だけのクズです」

 その言葉を聞いたブランデルは、自分の皇妃へと視線を向けて問いただす。

 「アデリーヌ、何故、そなた
  あのコトを伝えなかった?」

 ブランデルの問いに、アデリーヌは自分の息子の腕にいまだにたかる娼婦を嫌そうに見ながら答える。

 「シルビアーナと婚姻するのですから
  その必要は無いと思いましたので………

  まさか、ここまで愚かな行いをするとは
  思いませんでした

  せいぜいが、その娼婦を側室に上げたいと
  言うぐらいだと………」

 まさか、ここまで盛大な馬鹿をやらかすとは思っていなかったと言外に言う。
 ブランデルも、その部分では共感できることもあって、溜め息混じりに頷く。

 「そうだな

  たかが男爵ふぜいの庶子程度を
  皇太子妃に望むほど馬鹿だとは
  思わぬよなぁ………

  ならば、わかっているな?
  アデリーヌ?」

 ブランデルの問いかけに、もはや親子の情は無いというような冷たい声で、アデリーヌは答える。
 皇帝、ブランデルが望む言葉を………。

 「はい、ここまで馬鹿な皇太子はいりません
  廃嫡して下さいませ

  国には馬鹿をした結果
  廃嫡したから何も言うなと伝えておきます」

 その言葉に頷き、側妃に向かって言う。

 「グレイス、そなたの皇子を皇太子と成す」

 側妃は、自分の息子に皇太子の座が転がってきたことを素直に喜びつつ答える。

 「はい」

 茶番劇を、何とか穏便に収束させ、パーティーに来ていた諸外国の大使や貴族達の反感を減らす為に、廃嫡と新しい皇太子をブランデルは宣言する。
 そんな中、お花畑の元皇太子、廃嫡宣言されたルドルフが声を上げる。

 「父上、私は………」







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