悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する

ブラックベリィ

041★なんか、とんでもない話しのようです


 私は手のひらに載せた、宝石獣カーバンクル改め、ガッちゃんに話しかける。

 「これから、よろしくね
  ガッちゃん

  ちなみに、肩に居る子は
  コウちゃんていうのよ
  仲良くしてね」

 元が知り合いでも、名前が変わるんだから、あらためまして………だよね。

 『はい、主さま』

 愛らしくそう返事をしたガッちゃんを、コウちゃんが座る肩とは反対側の肩に乗せる。

 「それじゃ……
  次にいこうか?」

 『『はい』』

 コウちゃんとガッちゃんの返事に気を良くした私は、改めてガッちゃんが設置とされていた壁………じゃなくて、はい、やっぱり扉です。

 私の方向感覚が狂っていないのなら、ガッちゃんを解放した、今いるこの場所って、ちょうど真正面の扉の反対側あたりじゃないかしら?
 となると、ガッちゃんをここに封じて認識阻害されていた扉は、正式な《狂いし神子の討伐》の攻略ルートの最後の扉ってことよね。

 自分がどの位置にいるかを認識した私は、正面だと思っていた扉と同じような、精緻な文様が浮かぶ扉へと手を伸ばす。

 さて、とにかく、この難攻不落の深淵の絶望ダンジョンの《狂いし神子の討伐》の攻略をしないとね。
 コウちゃんの説明からすると、正当なルートには敵キャラが出現しないようだから、とりあえず、このままこの大扉を開いて先に進みましょう。

 私は、覚悟を決めて、大扉を押した。

 大扉は、思いのほか軽く、すぅーと内側に観音開きに開いた。
 その先には………。

 ふっ……もう一枚扉があるんですか?
 さて、コウちゃんはコレを知っていたのかな?

 「コウちゃんも
  もう一枚扉あるけど………」

 『……っ……俺の…知っている
  ダンジョンに……
  手が加えられている………』

 どこかショックを受けてそう答えるコウちゃんに、ガッちゃんがてろんと垂れ下がる耳を後ろに流して言う。

 『そんなの当然だろう

  核たるお前を《封印》し
  【虚】の異空間へと
  封じようとしたあの時

  お前の最後の足掻きと
  あいつ等の封じる力が
  ぶつかって

  時空間裂傷を
  起こしたんだから……

  お前の《封印》を
  失敗した後

  あいつらは
  裂けた時空間の
  障壁を修復する為に

  分割して《封印》した
  俺達の力を
  極限まで搾り取り

  それでも足らなくて
  自分達の力を足して

  なんとか空間の
  補修をしたんだからな……

  だから、ところどころ
  おかしなところが
  あっただろう』

 ガッちゃんの言う意味がいまいち理解できないが、前世の私が存在した、地球へと《封印》状態でコウちゃんが流れ着いた原因は、時空間裂傷というモノが原因らしい。

 『…うっ……俺だって…
  あんな風に…

  この世界の時空間障壁が
  裂けるなんて
  思ってもみなかったよ…

  ただ、あの《封印》状態で
  あいつらに【虚】の異空間に

  封じられたくない
  一心だったんだよ……

  お陰で、ずっとずっと
  寂しかった………』

 コウちゃんとガッちゃんが言う、あいつらって?
 今はどうしているかしら? なんとなくもう、ここに居なそうだけど………。

 コウちゃんは、この世界の裂けた時空間障壁から外へと流れて、地球へと渡ったからその後なんてわからないわよねぇ………。
 ここは、こっちに残ったガッちゃんに聞いてみようか?

 「よくわからないけど
  コウちゃんやガッちゃんを
  《封印》した……

  その、あいつらって
  どうしたのかな?
 
  良かったら
  私に教えてくれる
  ガッちゃん」

 その言葉に、ガッちゃんは私の長い、今は銀糸のようになった髪のひと束を抱き締めるようにして答える。

 『はい、主さま

  あいつらは
  この世界の

  時空間障壁を
  引き裂いたことで

  仲間割れを
  起こしました

  僕も《封印》されて
  しまったので

  最後まで、眼で
  見ていることは
  できませんでしたが

  何時か開放された
  時の為にと

  その後の経過を
  知る為に

  この額の魔石で
  ていました』

 ふぅ~ん…ガッちゃんの額の魔石は、そういうこともできるんだ。
 ああ、無意識に魔石を撫でる手が可愛いわぁ~……じゃなくて続き続き。

 「そうなの……で
  ガッちゃんには
  何がえたの?」

 『あいつらは
  全部で7名いたようです

  3人が仲間割れによって
  能力を奪われたり
  封じられたりしてました

  その後、残った
  4人のうち2人は

  何時の間にか
  ふらっと消えました

  1人は飽きたと言って

  別の世界へ行くと
  言って消えました

  残った1人は
  僕達を《封印》する為に
  そそのかした人間の
  記憶をいじって

  そいつらを勇者とか
  聖女とかに仕立て上げて

  国造りを始めた……
  あたりまでしか…

  れませんでした
  …力がつきてしまって………』

 なんか、話しが壮大になっているんですが………。
 もしかして、コウちゃんやガッちゃんて、もとは1人だったとか………。

 いや、これ以上、そのお話し聞きたくないわ。
 だって、コウちゃんやガッちゃん、今は右の腕輪の中で仮死状態で眠っている子達の敵が、確実に居るってことじゃないの………。





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