悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する

ブラックベリィ

025★ラノベの定番インベントリ機能のある腕輪をゲットしました

 私はコウちゃんに言われたとおりに、無警戒でぶかぶかの腕輪を左手首に通して、右手で腕輪を覆い、そのまま魔力を意識して込めてみる。
 と、すぅーっと何かが身体の中を移動して、左手首に集まるのを感じた。

 うっそぉぉ~……こんなに簡単に魔力が動くの?

 そう思った次の瞬間、悲鳴を上げたくなるように痛みが走る。
 まるで、ごてでも押し当てられたかのような灼熱しゃくねつの痛みと、ドライアイスを皮膚の柔らかい部分に押し当てられた時に味わうようなの強烈な冷たさを同時に感じた。

 …っ………いったぁぁぁぁ……うぅ…皮膚が焼けるような…痛みが………。

 私は、そのなんとも言いがたい相反する苦痛に襲いかかられて意識が遠のきかけるが、かろうじて意識を保っていた。

 そして、痛みが薄らいだ直後から、ぎゅぅぅぅぅ~っと手首をきつく締め付けられる感触が始まる。
 そのぞわりとした何とも言えない恐怖を覚えるような感覚に、唇を噛み締める。
 その感覚は、デジタル式の手首で測る血圧計に締め付けられるソレの何百倍も痛かった。
 
 それが、どれだけ続いたのかはわからない。
 一瞬だったのか? 1時間だったのか?
 その感触が唐突に消えて、すぅーと身体の芯から柔らかい何かに包まれる。

 気が付くと、腕輪は綺麗に左の手首に嵌まり、最初からそこにあったかのような顔をして存在していた。

 『良かったねぇ~……
  ますたぁー…

  腕輪に主として
  認められたんだよ』

 「主に認められた?」

 私がそう呟くと、コウちゃんは嬉しそうに頷く。

 『うん、認められたんだよ』

 それが何を意味するかわからないまま、私はほっとして深く息を吸い込みゆっくりと吐き出した。

 どうやら、この部屋での一番のイベントは終わったらしいと気付き、左手首に視線を落としてから、山積みの財宝へと視線を向ける。

 「はぁ~……さて
  あの財宝のお山を

  どうやって運べば
  良いのやら………」

 そう困っていると、コウちゃんが助言してくれる。

 『ますたぁー…
  その左手の腕輪を

  財宝に翳すと
  ぜぇ~んぶ入るよ』

 そう教えられて、どうやって持ち運びすれば良いか悩んでいた私は、いそいそと左手首の腕輪を翳した。
 次の瞬間には、綺麗さっぱりと山積みとなっていた財宝は消えていた。

 「へぇぇぇ~……
  すっごぉ~い……

  これって、アレね……
  ラノベとかで

  良く出で来るアイテム
  インベントリってやつね」

 そう感心して左手首の腕輪を見ると、そこに嵌めこまれている魔晶石ましょうせきに、入っているリストが表示される。

 うぅ~ん……どこぞで開発された、手首に嵌めるタイプの極小PCってところかしらね。
 じゃなくて、こういう時は壁も触って確認よね。
 視覚に頼っていたら、二度手間三度手間になる可能性あるもの………。

 そう思った私は、両目を瞑って、ゆっくりと壁を撫でて行く。
 勿論、本来は届かない高い位置が天井にも、極自然に魔力の触手のようなモノを伸ばして、感覚で見落とししたモノが無いかを探す。

 うん…良かった…見落としたモノはどうやらなさそうね………。

 丹念に室内を探した後、見落としが無いことを確認してからハッとする。
 そう、私がコウちゃんと入って来た扉の内側を、調べていないことに気付いたのだ。
 その扉は開きっぱなしである。
 ようするに、私の瞳からは開いた扉の裏側を見ていないのだ。

 私は扉の元へと行き、内側から扉をしっかりと閉じて見た。

 「あっ…やっぱり……
  ここにあったか………」

 ぴっちりと扉を閉めた瞬間に、扉の左右に剣が出現していた。

 『……うわぁ~……
  ますたぁ~ってば…

  すっごぉ~い…
  隠しアイテムゲットだね』

 その言葉を聞いて、コレはレアアイテムらしいことに気付いた。
 が、しかし、なんか気持ち的に疲れていたので後で確認と思いながら、その左右の剣に左手首の腕輪を翳して、収納したのだった。

 まだ、1室目……この回廊に、いったい幾つの財宝部屋があるのかなぁ……。

 ちょっと遠い瞳になってしまう私だった。

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