悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する

ブラックベリィ

024★出現する部屋の財宝をどうやって運びましょう?

 私はコウちゃんを抱いたまま、小首を傾げてから左右も見て確認する。
 と、左手側に扉が見えた。

 こうなったら、一番近くの部屋から探索しますか………。
 コウちゃんの説明で行くと、ひとつも残さずに回収しなければならなってことでしょう。
 って、あれ? 反対側の部屋の向こうにも同じような構造があるの?

 「コウちゃん
  もしかしてだけど

  反対側の部屋の
  奥にある回廊のモノも

  回収しないと
  奥へと続く扉って
  開かないとか………」

 恐る恐る聞く私に、コウちゃんはその時確かに、にこぉ~っと笑って頷いた。

 『うん、正解っ……
  流石、ますたぁー…

  ……ってことで
  ここに魔物の類は
  出ないから大丈夫だよぉ

  だから、見落とし無く
  ぜぇぇ~んぶ
  回収しようね』

 とても楽しそうにコウちゃんに、私はちょっと溜め息を吐く。

 「もう、保存食ないし……

  お腹空いて
  倒れちゃうかも
  知れないわねぇ……

  このシルビアーナの
  身体ってば

  すっごく効率が悪いから………」

 そう無意識に呟いた私に、コウちゃんが爆弾を落とす。

 『大丈夫だよぉ~…

  この左右の回廊って
  時間経過しない
  空間だから……

  だから、生理現象の
  全てが存在しないのぉ~……

  お腹も空かないし
  おトイレとかも

  行きたくなったり
  しないし………

  勿論、睡眠も
  必要ないのぉ~…

  眠くならないから………』

 ある意味の無間地獄であることを楽しそうに教えられ、私はクラクラしてしまう。

 そう、そういう空間なのね。
 こうなると、狂いし神子が所有する、生物が活動できるインベントリってところかしらねぇ………。
 とにかく、ここの回廊にあるお宝をぜぇぇぇ~んぶ回収するのがミッションね。

 「そうなの………

  まぁ…お腹が空かなくて
  眠らなくて良くて

  おトイレも必要ないなら
  そんなに時間かからずに
  回収できるかしらね」

 『ますたぁー
  だから平気ぃ~………』

 嬉しそうに言うコウちゃんは、腕の中から肩へと移動する。
 両手が自由になって私は、最初の扉を開いた。

 その中の部屋には、はっきり言って財宝が溢れていた。
 眩い装飾品やら宝石やら、どう見ても魔石や魔晶石までゴロゴロとあった。

 「うわぁ~……想像以上だわ
  こんな量をどうやって
  回収しろって言うのよ」

 流石にとんでもない量の財宝に、私は途方にくれてしまう。
 最初のひと部屋目でコレなのだ。

 愕然とする私に、コウちゃんは肩の上から、財宝の山に隠れるようにして壁に飾られているモノを指し示す。

 『あそこにある腕輪が
  必要だから取って
  手首に嵌めて……

  そしたら起動するから……』

 えっとぉ……起動って………じゃなくて、違和感があると思ったら、コウちゃん縮んでない?
 サイズが、肩に乗れるぐらい小さくなってる。

 最初の頃のロシアンブルー並みの大きさから、私の魔力その他を吸収して、メインクーンやノルウェージャンフォレストキャット並みに大きくなっていた筈なのに………。
 もしかして、水晶壁にする為に流した魔力って、とぉーっても大量だったの?

 そんなコトを考えつつも、私はコウちゃんの指示に従い、壁に飾られていた腕輪を手に取る。
 そして、言われたとおりに、手首へと通す………と、すかすかしていた。

 えっとぉぉ……この腕輪って、かなり大きいんですけど………。
 かなり大柄な男性向けのモノでは………。

 困ったなぁ…と思い、私は肩に座るコウちゃんに聞く。

 「コレ、腕に着けるの
  無理そうだけど……

  ほら、すっごいすかすか……

  手首どころか
  二の腕でもちょっと………」

 そう言う私に、コウちゃんは言う。

 『んーとね……まだ…
  腕輪に主って
  認められてないの……

  その腕輪はねぇ
  ずっと深い眠りの中に
  今の今までいたから………

  まず、左の手首に
  通してからねぇ

  反対の右手で腕輪を
  手首ごと覆ってね

  魔力を込めてみて………』







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