悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する
017★私は、意識阻害をさせるアイテムを身に着けていたようです
行き着いた答えに戸惑いを覚えていると、コウちゃんが言う。
『ますたぁー…お水いらない?』
そう言われた途端、私は無性に喉の渇きを覚える。
が、残念ながら、空中に浮かぶ水の飲み方がわからない。
魔力が少なすぎて、生活魔法すらろくに使えなかっただけに………。
「あのね、コウちゃん……
コレってどうやって
飲めば良いの?」
私の言葉に、不安そうにしていたコウちゃんは、それはそれは嬉しそうににぱっと笑って………いや、本当にそう見えるほど表情が明るくなった。
いや、本当にコウちゃんて表情が豊かよねぇ………。
『えっとね…ますたぁーは
水の魔法に慣れてないからぁ…
その水の塊に指先を付けて
口元に引っ張るといいよぉ~………』
と、良いながら、子猫が子猫用の小粒のキャットフードを、フード容れから手先を曲げて取り出し、口元に運ぶような動作をしてみせる。
いやぁぁぁ~ん…コウちゃんてば、可愛いわぁぁぁ~………じゃなくて、お水お水。
流石に、喉がすごく渇いた感がきついわ。
私は、再びその愛らしさに身悶えつつ、コウちゃんの説明の通りにする。
すると、すぅーと水の塊が移動し、口元へと導き、唇に触れた瞬間、指先で導いた水の塊の一部がツルリッと口中へと滑り込む。
乾き物を食べたセイで痛み出していた胃と、喉の渇きを癒す為に、私はごくごくとコウちゃんが出してくれたお水を飲み干した。
味は、はっきり言って美味しくない。
純粋な水、H2Oは、はっきり言って不味い。
それでも、乾きに負けてかなり飲み干したのは言うまでもない。
美容とか健康の為と思えば、それでも耐えられる。
いや、暗殺者の時の記憶を思い出したお陰で、そういう状態への耐性がとても強い状態になっているらしい。
とにかく、コウちゃんが出してくれたお水をガブ飲みした私は、ひとつ大きく深呼吸してから言う。
「ありがとう、コウちゃん
十分、喉は潤ったわ………
っていうことで
この部屋を出て
どうにか安全に
地上に出る方法とか
考えなきゃ……」
そういう私に、コウちゃんは言う。
『ますたぁー
この部屋に入るまでに
魔物に襲われてないけど』
コウちゃんの言葉に、私は首を振る。
このダンジョン最深部近くに、断罪の転移をさせられた直後から、コウちゃんが現われるまで、魔物の類に一度も遭遇しなかった奇跡に、感謝しつつ言う。
「それは
たまたまだったのよ
こんな幸運は
もう無いと思うのよ
きっと創造主たる
女神様の温情ね」
そういう私に、コウちゃんは首を傾げて言う。
『ううん、ますたぁーは
この部屋に入るまで
やっていたように
気配を消して音を立てずに
そっと移動する限り
魔物に襲われる心配は
無いけどぉー』
「えっ、コウちゃん……
それって、不自然よ」
『ううぅん、ますたぁーの
頭に載っている
ティアラとピアスには
ますたぁーの魔力を元に
周辺にいる魔物達に
意識阻害を起こさせて
ますたーを認識出来ない
ようにしているよ』
初めて知る事実にびっくりしつつも、自分の中に魔力が存在しているコトを自覚する。
あんなに、自分の中の魔力というモノを意識して捉えることが難しかったことが嘘のように、濃厚な魔力があることを自覚する。
「コウちゃん、私って
本当に魔力があるのね?」
確認するように言うと、コウちゃんはケロッと言ってくれる。
『うん、あるよ
それと、ますたぁーも
醜い魔物の姿を認識して
怯えたり叫んだり
立ちすくんだりしないように
魔物達の姿が見えないように
感覚の一部を
認識出来ないように
されているよ
えっと、ピアスがますたぁーの
認識阻害を司っているの
魔物達を意識阻害しているのは
ティアラだよ』
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