オタクとヤクザが恋したら…

かのちゃん

11 コミケ

「おーい、沸騰したぞぉ〜。」

鰹節入れといて〜。

「はーい。」

うーん、もう少し……。

「出汁取ったぞぉ〜。」

じゃがいもと玉ねぎ入れといて〜。

「……。」

よし!できたぁ!

「おい、さっきから何やってんだ?」

見る?

「おう。」

じゃーん!今度のコミケに出す、同人誌〜♡

「……コミケ?」

知らないの!?コミケ!

「ああ。」

コミケはね、春夏秋冬で、東京ビックサイトで行われる、同人誌イベント!コミックマーケットっていって、みんな略してコミケって言ってるの。

「あー。そういえば昔いた組のやつが、そのイベントに行って、人とぶつかって、ボコボコにして、最終的にはサツに捕まったことがあったなあ。今、そいつらはダイガク(刑務所)にいるそうだ。」

その情報いらないから。

「どら、一度見てみるか。」

遼ちゃんが同人誌をぱっと取って読み始めた。

「ふむふむ……もう少し色気があったらいい。」

どんなアドバイスしてんだよっ!

「ねえ。遼ちゃんも来る?テルくん達も誘ってさ。私の同人誌、みんなで読んでよ!」

すると、遼ちゃんはタバコを吸い始めて。

「わりい。俺は行けねえ。テル達も行けねえだろ。」

えっ!?なんでなんで!?

「コミケには、サツがうじゃうじゃいるからな。俺達がいたら、すぐ捕まる。」

……そっか。しょうがないね。
残念だけど、同人誌残ったらあげるね!
さーて、私は続きを描こっと!

(……あー。コミケに行きてえけど、どうやって行けばいいんだ?変装していくか……いやいや、もしチンピラと合流したら即バレる!どうしよう!!行きてえけど無理だ!!俺の人生終わる……!!はっ!こんな時こそ、あいつじゃねえか!ちょうどLINE交換してよかったぜえ。)

プルプルプルプル。

「『はい。』」

俺だ。

「『……!?な、なんの御用ですか!?』」

「俺と取引しねえか?」

「『と、取引ぃ!?』」






コミケ当日。私の同人誌はいっぱい売れて、SNSで知り合ったフォロワーさんや、憧れの絵師さんとも会ったし、今日はいい1日♡
けど、遼ちゃんが来れないことがなんか寂しい……。
仕方ないもん。遼ちゃん、ヤクザだし。
警察に捕まったら、大事になるもん。

「せんぱ〜い!」

ん!?私のペースに走って向かってる、緑色のチェック柄の上着と、赤のTシャツを着た、メガネの青年は!

「鈴木くん!」

よく来たねえ!いらっしゃ〜い!

「どうも……。」

さあさあ!たくさん買って買って〜!さっき、6冊売れたんだあ!

「すごいっすね!」

で、オススメは、これ!『執事とおぼっちゃまの危ないお茶時間〜ティータイム〜』!

「じゃ、買っていこ〜。」

ん?鈴木くん、2冊買うの?

「あ……保存用で取っとこ〜と思ってえ。アハハハハ。」

「ほんと!?嬉しい!!ほら、どんどん買ってって!『先生、一線越えたらだめです…』、『同居男子』とか!これ、全部私が描いたんだよ!」

「はい!買いますっ!」






鈴木のやつ、遅いなあ。
約束の時間、過ぎてっぞ。

「すみませーん!」

お、きたきた。

「遅れてしまいました……。」

「いいんだ。さあ、例のブツを渡せ。」

「は、はい!ど、どうぞ!」

「……ありがとう。これで取引は終わりだ。」

(と、取引って……なんか、ヤクザ映画みたい。)







俺は、車の中に入ってすぐ、由香の同人誌を読み始めた。
ふむふむ……男同士も悪くないな。

続く!

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