研究と生産の努力

チャールズとなった男は、まず、自分の領地内の金の動きを見始めた。

(これは、ひどいな…)

ここの領主が、最近侯爵になったというのが原因なのかもしれないが、金をため込みすぎている。

下級貴族では、いつ、金がなくなるのかわからないので、ため込むこともあるのだが、上級貴族となると、よっぽどのことがない限り、金がなくなるようなことはない。

上級貴族として活躍するには、金を使いまくって街をどれだけ成長させられるかが問題なのだ。

(それに、現状の政策が基本的に下級貴族向けすぎる。)

人数が一段と多くなる上級貴族では、下級貴族とは違った政策をとらなくてはいけない。

しかし、現状この領地がやっているのは、昔ながらの物で、このままでは現状維持しかできないのだ。

(とりあえず、最初は上層部からの命令通り、研究職のほうに金を入れようかな。)

それに、王都の研究所から優秀なものを引っ張ってくるという手段もある。

まだまだできることは多いのだ。

「来い。」

チャールズがそう言うと、部屋の外から、メイドが入ってきた。

「お前に鑑定石を渡す。
王都の方から、優秀な研究職の者を捕まえてこい。
金はいくら使ってもいい。」

チャールズがそういうと、その女は出ていった。

「さて、それじゃあ、行動しますか…」

自身の経営術によって、大体何をすればいいのかはわかってきている。

その知識に従って、チャールズは行動をしていくのだった。




～数か月後～

「なるほど？新しい金属の作り方か…」

チャールズは自室で、報告書を眺めていた。

あの後順調に、国内の各地から、生産職と研究職の者を集めていくことに成功していた。

その過程で、両者に協力をさせて何かしらの物を作っておくように命令をしていた。

皆、何かしらの物というあいまいな表現で最初は困っていたが、生産職にとっては大切な素材の方の研究を始めたらしい。

その結果、加工がしやすく、冷やすと硬度も高く、魔力伝導性もよいという金属が完成したらしい。

「これに関しては、領地内処理だな。」

生産職と研究職を重視していると同時に、商人にも力を入れている。

それもそのはず、この領地に関しては、ここ数か月で新たなものの開発が盛んになっているため、新開発の物を、他の領地で売りたい商人たちが集まってくるのだ。

しかし、中には、他の領地には上げられないようなものも存在する。

そして、今回の金属に関しては、その中に入る。

基本的に、この領地からほかの領地に出していいものに関しては、日用品や一般的に使える者だけになっている。

軍事研究などの成果によるものに関しては、他の領地にできるだけ渡らないようにしているのだ。

そして、そのことは研究職、生産職の方にもひどく言っており、もしも口外したら、逮捕することも言ってある。

その分給料に関しては、高くしているので、誰も自分の身を危険にさらしてまで他の領地に教えようとしている者はいなかった。

「ということでこっちだな。」

事務室には、2つの箱があって、領地内でのみの物に関しては黒い箱、他の領地にわたっても問題ない物に関しては、白い箱に入れてある。

「金はいい感じに使えている。
そして、領民に関しても、現状は不満がなく、軍部も武器の向上によって、強くなってきている。
これからは、安定した経営をするか。」

今までは、結構飛ばし飛ばしてきていたが、あまりにも成長を焦りすぎるといつか問題が起きる。

研究に関しては、これからも続けていくが、それでも、これからは成長をそこまで焦らなくていいと思ったチャールズだった。