俺は特攻隊員として死んだ

Saisen Tobutaira

第5話 俺、目にした

図書館に向かう道中の公園で、何やら集会が開かれていた。ふと立ち寄り、話を聞いてみた。

「靖国参拝反対ー、靖国参拝反対ー、靖国参拝反対ー」

えっ

「天皇制反対ー、天皇制反対ー、天皇制反対ー」

「君が代反対ー、君が代反対ー、君が代反対ー」

……

俺は言葉を失った。

もう一度言う、俺は言葉を失った。

一体この集団は何なのか?今の日本人は皆そう思っているのか?俺達の死はなんだったのか?お前達の幸せ、未来のために俺は死んだと言うのに……

俺は立ち竦んでいた。隣に立つ集会に参加している若者の会話が聞こえた。

「昔の日本ってほんまにあほやんな。爆弾抱えて敵艦に突撃とかテロと一緒やん」

俺達のことか?

「確かに。命大事にしろよな」

俺達も死にたくなかったさ

その若者達は軽蔑するような口調で笑いながら話していた。

「そもそも負ける戦、仕掛ける時点であほやろ。アメリカに勝てるはずないやん。昔の日本人はあほばっか」

自衛のため仕方なかったのだ、ハルノートなど受け取れるものか

そして若者の発したこの言葉に俺は絶句した。

「あの戦争で死んだ人らほんま無駄死にやったよなあ。どんまいやわ」

無駄死にか……それに、どんまいの意味などわからないがある程度想像がつく

俺は悪夢のような公園から立ち去ろうとした。立ち去る際に、ビリビリに破られた日本国旗や日章旗が目に入った。彼らはビリビリに破いた後踏みにじったのだろう、国旗にはいくつもの靴跡が付いていた。そしてなぜか、ヒトラーの肖像画もビリビリに破られていた。

俺は2018年の日本に絶望しかけていた。俺が愛し、守りたかった日本はもうないのだと胸の奥深くで思っていた。あの角を曲がった所に図書館があるはずだ。とりあえず行ってみよう……

俺は絶望の中、図書館へ足を進めた。体の感覚などすでにないが、涙で溢れる目、怒りではないが熱くなる胸、ショックのあまり震える脚とともに図書館の門をくぐった。

さあ、歴史を学ぶか……







コメント

  • Saisen Tobutaira

    ユーザ番号323106様コメントありがとうございます!初心者ながら精一杯頑張らせていただきます!

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