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俺は特攻隊員として死んだ

Saisen Tobutaira

第4話 疑問のマグマ

俺は皇居前広場に降り敬礼した。

よくぞ、ご無事で

敗れてもなお、皇居があることに心から喜んだ。数々の歴史を見ても敗戦国側の指導者や国の象徴は処刑される。ある国においては住処を灰になるまで焼き尽くし、親族血縁者全てを殺し、彼らが生きていたことを歴史から完全に抹殺する。

俺は安堵の中、街を歩いていた。当然道行く人からは俺の姿は見えない。いわば、透明人間みたいなものだ。俺の体を平然とすり抜ける人、俺を車で引く人など、なんだか妙な感覚だった。

凄い、凄い、凄い……

生前、アメリカ留学に行ったことのある俺だが、2018年の東京はニューヨークと肩を並べられるほどに発展していた。いや、ニューヨークを超えているかもしれない。

この車の数はなんだ?

この服装はなんだ?

皆が手に持ち眺めている機械はなんだ?

目にするもの全てに疑問を持ち、圧倒されていた。

道行く人や車、バイクは機械が赤色の時は止まり、青になった途端に動き出す。整然としていて時代は変わったが、日本人の心は変わっていないような気がした。

それに英語の看板も多い。戦争中は英語が禁止だったことなど、まるでなかったかのようだった。I Love NYと書かれた服を着ている日本人やI Love Japanと書かれた服を着ているアメリカ人らしき人も居た。それに白人や黒人、黄色人種全ての人種が混ざりあっていた。

俺はこのような日本の姿を見れて心から嬉しかった。ただ、嬉しかった。俺達の死は決して無駄ではなかったと思えた。そりゃ、本音を言えば死にたくなかったし、愛する晴子さんや赤子と天寿を全うしたかった。

しかし、歴史には逆らえない。その時代に生きた若者としての宿命だったのだろう。特攻隊員は今ではどのような扱いをされているのだろうか?

俺はそれが知りたくなった。それに日本の敗戦がいつだったのか?なぜ今の日本の姿があるのか?疑問は山のように膨らみ、頭のてっぺんから疑問のマグマが噴火しそうだった。

俺はそれらを知る一番の近道である図書館に向かうことにした。図書館に行けば全てがわかるだろう。もう死んでいるはずなのに心臓の鼓動が高まり、明らかに心拍数が増えている感覚を覚えた。

偶然、道にあった地図を見て、図書館の場所を把握した。

俺は透明人間になり、未来の日本を歩いていた。


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