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世界を始める戦争か、もしくは最後の聖戦か〜敵国同士の剣姫と暗殺騎士

白季 耀

シルフィード王国

アウストレア王国を出て約一週間、遂に敵国シルフィード王国に着いた。

シルフィード王国はアウストレア同様に城郭に囲まれた都市で、硬質感を感じさせる壁は要塞のような圧力を漂わせる。

地形の関係上一番上にある巨大な城を中心に下へと街並みが続いている。

シルフィードに入るには三箇所の大門のいずれかから入国するしか方法がない。

しかも門番達の許可を逐一得なければならない。

まぁいつ戦争になるのかすら分からない臨界状態なので仕方ない策だ。

クロノスは南の大門の行列に並び、自分の番を待つ。

暇なので、周囲の人やらなんやらを観察する事にした。

これは暗殺者として生きていた時に必要だったスキルで、常に周囲の状況を確認していた為厄介ながら癖になってしまったらしい。

行列に並ぶ人達は筋骨隆々の戦士や貧弱そうな旅の行商人や旅行客など様々だったが、中にはフードを被り顔を隠す者もいる。

確か何処かの宗教の極一部では顔を隠さねばならないというかわった風習があるそうで、そいつもその一人なのだろう。

因みにクロノスは戦場に出る時は不気味な仮面を被って任務をこなすので素顔は知られていない。現在は素顔を晒している。

交戦状態の国に入るのに出出しから疑われては堪ったものではないからだ。

人間観察にすっかり没頭していた間に、前の人の入国審査が終わり俺の番が来たので前に進む。

「身分証を提示してくれ」

「はい」

身分証は無論加工済みだ。

自身自らが加工したので、抜け目なく、例え魔法探知機だろうと偽れる。

「…よし。問題ないな。ようこそシルフィード王国へ。入国を許可しよう」

無事に入国審査を切り抜け、シルフィード王国の大門を潜る。

騎士選考大会は明後日からと時間が押しているので、早急に必要な情報を揃えなければならない。

まず道行く人の中で特に親切そうな人に宿屋のありかを聞くべく、セミロングの女の子に話しかけた。

「すみません」

「はい?なんでしょうか?」

とても軽快な声だ。

「この辺である程度設備の整った宿屋のような所はありますか?」

「あっはい。宿屋ですね。この先をずっと真っ直ぐに行くと、【月夜の星刻亭】という宿があります。看板がありますのですぐに分かると思いますよ」

「そうですか。ありがとうございます。お陰で路頭に迷わずに済みそうです」

「いえいえ。此方こそお役に立てて嬉しいです。私はエレミアナって言います。すぐそこの道具屋を営んでるんです。もし時間があったら寄ってくださいね」

「ああそうするよ。俺の名前はクロノスだ。少し生活が落ち着いたら寄ってみるとするよ。それじゃ」

俺の名前は他国には知られていない。

戦場に出れば大体二つ名などで呼ばれるし、部下には師匠とか呼ばれるので名前の心配はない。

はっきり言うと美形の女の子に話しかけた訳だが、難なく宿屋の情報を聞き出せた。

しかも彼女は道具屋をやっているらしい。
この国は任務終了次第出て行く訳だが、やはりある程度親しみのある人物と友人関係になる事は必要だし、大いに助かる。

……暇が出来たら寄ってみるか。



 ️ ️ ️



王都の中心からややずれた場所に位置する宿屋に向かう。

中心に向かえば向かう程武器屋、飲食店、服屋などの店の密度が濃くなっている。

そこでは、観光客や冒険者と言われる武人達がそれらの店に興味津々の様子で、賑わっていた。

アウストレアとはまた違う…良い国だな。

アウストレアには及ばないが。
(過剰過ぎる愛国心、主に子供達が要因)

エレミアナという少女の話によれば、【月夜の星刻亭】は直ぐ見えると言っていたが…おっあった。

【月夜の星刻亭】をまず思った事。

でかい!

店の敷地の5倍以上は間違いなくあった。

外装も他の建物とは一線を画す綺麗な装飾。
しかし派手さはなく、貴族のボンボンがする華奢なものではない。

何処か優しく、人の目を惹きつける様な、不思議な外装だった。

「お兄さんお兄さん!お泊まりですかな?」

宿屋の前で外装に圧倒され呆然と立ち尽くす俺にそんな声がかかるのでその方を見ると、そこにはエプロン姿でポニーテールがやけに似合う少女が立っていた。

さっきの言葉からして、宿屋で働いている人だろうか?

「ああ。君はここの宿の?」

「ええそうよ。ここの看板娘やってます!お兄さんは宿を探してるのかな?」

「ああ。丁度ここの宿を探しててね。でも外観がとても綺麗で見惚れてたんだ」

「そうでしょそうでしょ?内の宿はこのシルフィード王国でも3本の指に入るくらい人気なんだよ?でもお兄さんはついてるね〜。今日は珍しく部屋が空いているから今すぐチェックインできるよ?さぁー善は急げだ!レッツゴー!」

その少女はやけにハイテンションで、俺の袖を掴んで無理矢理引っ張った。

あっ俺多分、この子苦手だ。

こうして俺は不本意ながら強引に宿にチェックインさせられた。


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