私だけの世界
修学旅行〜二日目〜小板橋(1)
 「ねぇ寧々、鈴木君ってどうして死んだんかな?」
まだ朝だと言うのに友達が昨日起こった非現実的な出来事について問いかける。
「本当にね、なんでなんかな?」
私はその答えを持ち合わせていない。友達の話によると、鈴木君を見つけたのは聖都君という話だった。
聖都君はクラスの中でも一目を置かれる存在だ。特に頭が良く基本何でもできる。ピアノは弾けるし、運動もできるし、数学や物理であれば彼にかなう生徒は同じ学年にはいないだろう。
そして何より彼はとても親切でいろんなことに気づく。授業前に前の授業の跡が残っていれば当番でなくても、率先して消しに行ったり、この前聖都君と2人で一緒に遊び行った時も、老人に電車の中で席を譲ったりと良く出来た人間だ。
そんな彼と鈴木君はすごく仲が良かったように見える。お昼休みは一緒にお弁当を食べてたり、授業中もよく2人で会話してて先生に度々怒られていた。彼の親友である鈴木君がなくなったとなれば、聖都君のショックは計り知れないだろう。
私の方まで心が痛くなるくらいだ。
「聖都君…」
思わず彼の名前をつぶやいていた。
「何ー?また宮藤君の話?好きだね本当、早く告っちゃえばいいんに。手作りのクッキー作ってきたんでしょ?宮藤君の為に」
友達がこれ見よがしに私に話題を振ってきた。
「そうだけど、告白かぁ」
私は聖都君が好きだ。いつから好きなのかはわからない。彼に初めて会った時は、何もかもがつまらなそうな、そんな顔をしていた。でも、ちょっと話をしてみると表情が良く変わり、すごく感情表現が豊かで、良く笑う人だった。そのギャップが私はたまらなく好きだった。でも告白は難しそうだ。正直言って自信がない。仲はとても良いと私自身思っているのだが「付き合う」とはならない気がしてしまう。だから私は修学旅行中に彼ともっと仲良くなりたいと思い、手作りクッキーを持ってきた。
「でもこないだ宮藤君とデートしたんでしょ?もういけるって!」
友達が確証もないことを言う。たしかに私たちは先週にデートをしたのだが、特別何かしたわけでもなく、仲良くなれたのかは未だにわからなかった。
「他人事だと思って言ってるでしょ!そんな話は終わりで、早く着替えて朝ごはん行くよ」
いつもはいい友達なのだが、どうも恋愛話が好きなようで、私が聖都君のことを好きだと知った時からこのようにからかってくる。私は早くこの話を終わりにしたいと思い、朝食会場に早く向かおうと促した。
朝食の会場へ着き、席に座った。私は自然と聖都君の姿を探してしまっていた。しかし彼の姿は見当たらない。
「寧々〜」
後ろから急に声をかけられた。私の心臓がトクンと跳ね上がるのを感じた。良く聞き慣れた声、いやむしろ良く覚えてる声と言った方がいいだろう。聖都君の声だ。さっきの話のせいで少し意識してしまっている。私は振り返り、平静を装いつつ言った。
「なにー?」
私が答えると突然、聖都君の顔がこっち近づいてきて、私に耳打ちした。
「昨日の先生の話だと今日の街散策は中止になるらしい。部屋で待機らしいんだけどさ、2人でちょっとだけ抜け出しちゃわない?外に出たい。少しでも気を紛らわせたいんだよね。」
予想外の出来事にとても驚いた。まさか聖都君の方から誘ってくるだなんて。こんなことが起こるとは予想もしていなかった。もちろん断る理由がないので、私は即答した。
「そうだよね、昨日のことがあったもんね。いいよ、わかった。」
そして私はこのことについて少し考える。
気を紛らわせる為に私を誘うってことは、つまり聖都君も私に何かしらの感情がある?少なくとも嫌われてはいない、それだけは確かだ。
考えていると、聖都君の方がいつ行くかについて話し始めた。
「11:00頃そっちの部屋行く。4回ノックするから。そしたら俺だから出てね。」
「うんわかった!」
またもや即答した。
どうしよう、すごく嬉しい。早く朝食の時間終わらないかなぁ、まぁ早く終わったとしても11時までは全然時間あるから早く終わっても関係ないんだけど、今はなにもしないでそのことだけについて考えていたい。一緒に外に抜け出すだけとは言っても、他にも何かしたいな。でも何かしなくても、一緒に外を喋りながら歩くだけでも良いかも。なるべく長く一緒にいられたらなぁ。
などと既に頭は聖都君のことでいっぱいになってしまい、朝食の時間はそのことだけを考えていた。
すると、皆が朝食を終えたであろうタイミングで、一人の先生が生徒全員の前に立ち、言った。
「皆さん昨日はお疲れ様でした。友達たちといろんなところに行って、いろんなところを見て、とても有意義な時間を過ごせたと思います。」
おそらく今日の予定についての話であろう。本来であれば今日は街散策であったが、聖都君の話によるとそれは中止される。
「今日の予定なのですが、実は昨日不測の事態が起きてしまい、当初の予定であった街の散策は中止にします。生徒の皆さんは今日は絶対に外出せずに、部屋で待機していてください。」
聖都君の言う通りであった。急な予定変更にもかかわらず、生徒は誰一人として騒ぎ立てることはしなかった。その代わりにみんなヒソヒソと話をしている。きっと皆察しがついているのであろう。鈴木君が昨日、何者かによって殺害されたことを。先生は一切そのことについては言わなかったのだが、昨日の時点で生徒から生徒へと噂が流れている。おそらくこのことについて知らない生徒は誰一人としていないはずだ。
先生が待機命令を出した後、今日の昼食の時間や、その他諸々の予定を話して解散となった。
「ねぇ、寧々。やっぱり昨日のことだよね?」
部屋へと帰る途中、同じ部屋の友達が小さな声で問いかける。
「うん。多分そうだと思うよ」
決して忘れていたわけではなかったのだが、昨日起こった現実を再認識し、さっきまでの嬉しさはどこかへ行ってしまった。
「聖都君が外に出たいって言った気持ち少しわかるかも。」
心の中でそう思い、私たちは部屋の中へと入っていった。
まだ朝だと言うのに友達が昨日起こった非現実的な出来事について問いかける。
「本当にね、なんでなんかな?」
私はその答えを持ち合わせていない。友達の話によると、鈴木君を見つけたのは聖都君という話だった。
聖都君はクラスの中でも一目を置かれる存在だ。特に頭が良く基本何でもできる。ピアノは弾けるし、運動もできるし、数学や物理であれば彼にかなう生徒は同じ学年にはいないだろう。
そして何より彼はとても親切でいろんなことに気づく。授業前に前の授業の跡が残っていれば当番でなくても、率先して消しに行ったり、この前聖都君と2人で一緒に遊び行った時も、老人に電車の中で席を譲ったりと良く出来た人間だ。
そんな彼と鈴木君はすごく仲が良かったように見える。お昼休みは一緒にお弁当を食べてたり、授業中もよく2人で会話してて先生に度々怒られていた。彼の親友である鈴木君がなくなったとなれば、聖都君のショックは計り知れないだろう。
私の方まで心が痛くなるくらいだ。
「聖都君…」
思わず彼の名前をつぶやいていた。
「何ー?また宮藤君の話?好きだね本当、早く告っちゃえばいいんに。手作りのクッキー作ってきたんでしょ?宮藤君の為に」
友達がこれ見よがしに私に話題を振ってきた。
「そうだけど、告白かぁ」
私は聖都君が好きだ。いつから好きなのかはわからない。彼に初めて会った時は、何もかもがつまらなそうな、そんな顔をしていた。でも、ちょっと話をしてみると表情が良く変わり、すごく感情表現が豊かで、良く笑う人だった。そのギャップが私はたまらなく好きだった。でも告白は難しそうだ。正直言って自信がない。仲はとても良いと私自身思っているのだが「付き合う」とはならない気がしてしまう。だから私は修学旅行中に彼ともっと仲良くなりたいと思い、手作りクッキーを持ってきた。
「でもこないだ宮藤君とデートしたんでしょ?もういけるって!」
友達が確証もないことを言う。たしかに私たちは先週にデートをしたのだが、特別何かしたわけでもなく、仲良くなれたのかは未だにわからなかった。
「他人事だと思って言ってるでしょ!そんな話は終わりで、早く着替えて朝ごはん行くよ」
いつもはいい友達なのだが、どうも恋愛話が好きなようで、私が聖都君のことを好きだと知った時からこのようにからかってくる。私は早くこの話を終わりにしたいと思い、朝食会場に早く向かおうと促した。
朝食の会場へ着き、席に座った。私は自然と聖都君の姿を探してしまっていた。しかし彼の姿は見当たらない。
「寧々〜」
後ろから急に声をかけられた。私の心臓がトクンと跳ね上がるのを感じた。良く聞き慣れた声、いやむしろ良く覚えてる声と言った方がいいだろう。聖都君の声だ。さっきの話のせいで少し意識してしまっている。私は振り返り、平静を装いつつ言った。
「なにー?」
私が答えると突然、聖都君の顔がこっち近づいてきて、私に耳打ちした。
「昨日の先生の話だと今日の街散策は中止になるらしい。部屋で待機らしいんだけどさ、2人でちょっとだけ抜け出しちゃわない?外に出たい。少しでも気を紛らわせたいんだよね。」
予想外の出来事にとても驚いた。まさか聖都君の方から誘ってくるだなんて。こんなことが起こるとは予想もしていなかった。もちろん断る理由がないので、私は即答した。
「そうだよね、昨日のことがあったもんね。いいよ、わかった。」
そして私はこのことについて少し考える。
気を紛らわせる為に私を誘うってことは、つまり聖都君も私に何かしらの感情がある?少なくとも嫌われてはいない、それだけは確かだ。
考えていると、聖都君の方がいつ行くかについて話し始めた。
「11:00頃そっちの部屋行く。4回ノックするから。そしたら俺だから出てね。」
「うんわかった!」
またもや即答した。
どうしよう、すごく嬉しい。早く朝食の時間終わらないかなぁ、まぁ早く終わったとしても11時までは全然時間あるから早く終わっても関係ないんだけど、今はなにもしないでそのことだけについて考えていたい。一緒に外に抜け出すだけとは言っても、他にも何かしたいな。でも何かしなくても、一緒に外を喋りながら歩くだけでも良いかも。なるべく長く一緒にいられたらなぁ。
などと既に頭は聖都君のことでいっぱいになってしまい、朝食の時間はそのことだけを考えていた。
すると、皆が朝食を終えたであろうタイミングで、一人の先生が生徒全員の前に立ち、言った。
「皆さん昨日はお疲れ様でした。友達たちといろんなところに行って、いろんなところを見て、とても有意義な時間を過ごせたと思います。」
おそらく今日の予定についての話であろう。本来であれば今日は街散策であったが、聖都君の話によるとそれは中止される。
「今日の予定なのですが、実は昨日不測の事態が起きてしまい、当初の予定であった街の散策は中止にします。生徒の皆さんは今日は絶対に外出せずに、部屋で待機していてください。」
聖都君の言う通りであった。急な予定変更にもかかわらず、生徒は誰一人として騒ぎ立てることはしなかった。その代わりにみんなヒソヒソと話をしている。きっと皆察しがついているのであろう。鈴木君が昨日、何者かによって殺害されたことを。先生は一切そのことについては言わなかったのだが、昨日の時点で生徒から生徒へと噂が流れている。おそらくこのことについて知らない生徒は誰一人としていないはずだ。
先生が待機命令を出した後、今日の昼食の時間や、その他諸々の予定を話して解散となった。
「ねぇ、寧々。やっぱり昨日のことだよね?」
部屋へと帰る途中、同じ部屋の友達が小さな声で問いかける。
「うん。多分そうだと思うよ」
決して忘れていたわけではなかったのだが、昨日起こった現実を再認識し、さっきまでの嬉しさはどこかへ行ってしまった。
「聖都君が外に出たいって言った気持ち少しわかるかも。」
心の中でそう思い、私たちは部屋の中へと入っていった。
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