いつか夢見た夢の跡

佐々木篠

第十五.五話 明るい話と暗い陰

【???・???】
「ありゃ、意外に早かったね?」
 そこは酷く荒れていた、屋根と窓が半分ごっそり削られでもしたのかとも思える建造物の中は長椅子が散開しており、生臭い匂いと、硝煙と焼け焦げた肉の匂いが蔓延っていた。
 雑乱とした部屋に寝袋を敷いた上にあぐらをかいた少年が独り言のようにポツポツと呟く。
「さてと、つぎは何処が動くかなぁ?」
嬉々として霧が晴れた夜空を眺めて呟く少年の瞳には確かな狂気を孕んでいた。












【霊創法御館大社・朝・後日譚】
「まだ紅華館は工事かぁ・・・」
  白米を口に運ぶ、うむしっとりしてて旨し!
 今日の献立は、鰤の甘露煮、各種野菜のお浸し、カブと豆腐の味噌汁、白米、お好みでひき割り納豆。
「そうねぇ・・・このままだとあと二、三日はかかるでしょうね」
「でもその間私達を養ってくれるのでしょう?なら思う所ないわ」
「あ、お姉様。そこのお醤油とってくれませんか?」
「えぇ、はい」
「ありがとうお姉様!」
 ・・・いつも通りの朝ではないな、うん。
「所で・・・なんでアンタ達がいるのよ・・・!?」
 そこには見知った、と言うか先日の事件の首謀者であるお姉さんことエミリアとフランの姿が並んで食卓を囲んでいた。
 てか名前外国人なのに箸の使い方綺麗でびっくり!
「言ったでしょう?館がボロボロだから工事の途中なの。行く宛が無いからここにしたのよ」
「ここは旅館でも旅籠でも無いわよ!!てかアンタ最初に私とあった時と口調変わって無い?」
 それを聞いてかエミリアはギクリとした、箸で掴んでいた甘露煮の一部分が見事落下し白米の上に着陸した。
 あ、甘露煮のタレってご飯につけて食べると美味しいよね。
「・・・ソンナコトハナイワヨ?」
「じゃぁなぜに片言になるんだよ、墓穴掘ってんじゃねぇか」
「・・・・・・」
「よし、わかった。玲華、ちょっと」
 お茶碗を置き玲華に耳を貸すよう促す。
聞こえないように小声で。
 あくまで推測の域を超えないが口調が変わったのは
「なによ?」
「多分だが・・・ラスボス感出したかったんじゃね?」
 あぁとその一言で納得したのか晴れやかな顔で・・・いやニマニマとエミリアを覗きながら再度箸を動かし始める。
「な、何を教えたのよ・・・」
「お姉様、またあの変な口調をしたのですか?」
「ふぇぁ!?フ、フラン!変って言わないでよ!!あれは変じゃ無くてカッコイイって言うの!!――――ってなんでフランが知ってるのよ!?」
「わたしには変にしか聞こえませんし、それに十五の時にずっとその口調で何週間か過ごしていたじゃないですか」
「そんな昔の事を蒸し返さないでよ〜!!」
 ・・・ふむ、どうやら見た限りでは仲直りしているのだろう、二人の中にある空気みたいな物が軽くなっている気がする。
「モグモグモグモグ」
 そんな団欒をよそに、紫芳は顔を悔しそうにしながらマイペースにモグモグしていた。
 と言うか結構な数お代わりしているけどあの小さな体に一体どれだけの白飯と甘露煮が入ったか検討もつかない。
「厄介事はもう起こさないでよ?私はこうやって納豆かき混ぜてる平凡な日常が好きなんだから。」
「分かったわよ、それにお兄・・・ヤシロ様の術があれば日光だって平気だし」
「だから、迷惑はかけないわ。お兄様のお手をこれ以上煩わせるわけにはいかないもの!」
 エミリアは毅然と、フランは箸を置いて俺の片腕に抱きつく。
  それを見たエミリアが悔しそうにしているが・・・正直どうにも出来ないので苦笑いするしかない。
「モグモグ・・・んくっ。ふぅ・・・そういえば玲華お姉ちゃん。」
「ん?どうしたの錺、味に問題あった?」
「ううん、全くそう言ったのは無いから安心して。・・・今日、茉莉愛まりあお姉ちゃんは?」
「あぁ、茉莉亜は・・・そうね、いつもならもう時期来るはずだけど・・・・・・今日はどっかふらついているのかもね」
「だと・・・いいけど・・・」
 そういえば・・・玲華曰く朝飯は毎日と言っていい程来るらしいもう一人の仲間の姿が見当たらない。
 その時、背中に薄ら寒さを感じた。
 振り返って見るがそこには何もなく、仏様が仁王立ちしている事しか分からなかった。
「お兄様?」
「あ、あぁうん何でもない!」
 その様子に不安げな瞳を上げたフランに対し、安心させる為笑顔を作って貼り付ける。
 そんな様子に多少不安を顔に浮かばせたフランだったが、「お兄様が言うなら」と視線を戻し、俺の腕にくっつきながら食べると言う非常に食べにくそうな格好で器用に食べ始める。
 こんな非常識もこの世界では常識となり、非日常は看過され日常の一部となる。たとえ、今ここにある平穏が何者かに破壊されたとしても、それは変わらない。












【???・???】
そこは廃教会のような場所だ、なんだろうか硝煙と生臭さと肉が焼けるような匂いが鼻を刺して顔を顰めさせる。そんな私こと、霧醒茉莉愛の目の前に灰色ローブを羽織った少年が嬉しそうに立つ
「やぁ、近代の魔女クン!きみに会えてとても嬉しいよ!!」
「チっ・・・よく言うぜ」
 私は目の前で巫山戯ているヤツを一瞥し舌打ちをする、ついでにツバを吹きかけようと思ったが・・・こう言うヤツは大体そんな挑発に乗ったりしない。
「おやぁ・・・?あまり嬉しくなさそうだぁね?」
「ホンキで言ってんのか?処刑台みたいな物に繋がれて喜ぶマゾじゃねぇぜ私は。」
 目線を上に向けると、お日様に反射した刃が死を告げるように悠々と佇んでいる。
「おっと!こりゃ失礼、だぁけどねこうしなきゃおいらの目的は達成出来ない。」
「・・・へぇ、ついでに教えちゃくれないか?アンタの目的っての」
「もちろんいいよぉ!!むしろ冥土の土産に聞いてってくれ!!――――平たく言えば"魔女狩り"さぁ・・・!!」
 その笑みを見て悟った、目の奥には狂気、語る言葉は悦楽、身振り手振りは夢を語る幼子のようで嫌悪感を感じさせる。
「あの喝采をもう一度!!背教者達に公正を!!魔女と魔王に鉄槌を!!穢れた血潮は断頭台で雨となれ!!汚れた魂は浄化せよ!!ハハハハハッ!!!」
 狂気に侵されこちらの話には最早見向きもしないだろう、諦めて脇を視る。
 木陰に隠れる、裏切りの匂いが知り合いの形を取って微笑んでいた。

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