いつか夢見た夢の跡

佐々木篠

第七話 少年少女前を向けッ

【神社、境内・正午】
「んのわぁっと!!!」
 奇声を上げて飛び起きる。
 今、俺は布団の中にいる。精神内で起きたことはまだ大体覚えてる。
 えぇと確か・・・そうだ!本は!と右手に収まってた良かったぁ、これで奴らと対等に戦える・・・はず。
「い、生きていたなら返事位しなさいよ・・・ばか」
「・・・一応、心配したんだからね。感謝しなさい」
「マジカ・・・一瞬死んだかと思ったぜ」
「まぁ、これ位じゃないとやってられないわねぇ」
 それぞれ口々で生還を喜ぶ声が聞こえる、とても温かくて、嬉しかった。
「意識が戻ったようで何よりね、紫苑。これは借りにしとくから」
 と、灰色の女医師が紫苑さんを見るなり、ちょっと物騒なことを言ってくる
「わかったわよぉ、ありがとうね。澪」
 ミオ、と呼ばれた女医師はクールに踵を返して外へ出た。
 ふと、思い出したかのように俺に向かって呟いて来る。
「まだ、意識が戻ってあまり経ってないから無茶はしない事ね。何かあったら"濃霧の竹林"にいらっしゃい。矢幡 澪やはた みお。私の名前を出せば、私が経営している診療所に案内してくれる奴がゴマンといるわ。安心して来なさい」
「あ、はい。ありがとう御座います」
 ホントにクールな人だった。後ろ姿がとても輝いて周りに清廉な風が吹いていた気がした。
『あの医師の加護、何だか分かったかい?』
「加護?ってあの」
『そう、ヤシロが思い浮かべたそのままの意味さ。あの医師、矢幡 澪は"清風の加護"の所持者。人それぞれに加護は存在するけど、彼女の加護は君と同じ位イレギュラーなんだ。
その能力は、"周囲2キロ圏内の異質の浄化"。』
「まじか!?掃除要らずじゃん!」
『・・・』
 何故だろうか、とても白い目で見られている気がする。
「社・・・お前、誰と話しているんだ?」
 どうやらまわりには、独り言として聞こえるらしい、周りからは訝しげな白い目で見られていた。
「!?いや、独り言だよ!」
 手をブンブン振り回して精一杯に否定する。
「ふーん、まぁいいけど。所で、その本いつから持ってたの?」
 お、おう。急に来たな。
 紫芳が、俺の右手の中にある本について興味を持ったようなので、取り敢えず説明する。
「この本は・・・なんと言うか魔導書みたいな感じだと思う」
 我ながら、なんか曖昧になってしまった
「自分の本なのに分かって無いのね」
「うぅ、返す言葉も無い」
「いや、それはおかしい」
 と、茉莉愛が否定する。
 なんでだろう?なんか違いがあるのかな?
「なんでだ?」
「魔導書って言うのは、大体決まった属性と魔力の質を持っているんだぜ。なのにその本からは何も感じない。って事は必然的にその魔導書には属性も決まった魔力の質も無いって事だ。魔導書が存在するためには、定期的に保持者の魔力を徴収しなげればいけない。なのにその本からはそんな必要がないと来たものだ」
 とても詳しく魔導書について説明してくれる。
 なるほど、魔導書ってのはいわば植物みたいな物か・・・勉強になる。
「・・・ねぇ茉莉愛。」
「どうしたんだぜ?」
 紫苑が珍しく諭すように茉莉愛に向い直る。
「もしかしたら、社クンが持っているのは魔導書でも魔術書でもない。かと言って読書用の本にしては、何かしらのその本に眠る力が大きすぎる」
「・・・じゃぁ、何だってんだよ」
 茉莉愛がしびれを切らしたのか不満げさを顔いっぱいに表現している。可愛い。
「そうねぇ・・・じゃぁ、回答をお願いするわね。"錺"?」
「うぇ!?」
 なんで、紫苑さんが錺の事を・・・あ、いや思い出してみればそうだ、錺は紫苑さんの事を知っている風な口振りだった。 
 まぁでも錺は精神世界の中にいるから早々出てくる筈はないだろう。と思った束の間。
「・・・自分で言えばいい話じゃないか」
 いつの間にか俺の隣には錺が超至近距離で立っていた。
「・・・なんでこっちに来れるんだよ」
 開いた口が塞がらないってこう言う事なんだろうなぁ
 そんな思いで聞いてみるも、錺は無反応・・・
 あ、いや。反応みっけ。何か気まずそうだ
『・・・ボクだって普段君の中から出られないって言うのに、何故か出られたんだからわけがわからないよ』
『そういえば、言葉を介さなくても会話が出来たんだな』
『まぁ、君の魔力をちょいと借りちゃったけどね。でもおかげで外の世界を見る事が出来た。ありがとう』
 とても嬉しい言葉をドストレートで言われ、少しだけ照れてしまう。
「あらぁ、錺と知り合いだったのねぇ」
 意外そうに紫苑さんが問い掛ける
「あぁ、ヤシロとはある場所で会った。」
「確か、貴女。人柱にされたのでしょぉ?まだ恨んでいるの?神裂灰花典弘心の事」
 人柱、という単語に俺と玲華達はギョッとする。
 なんせ目の前に居る儚げな幼女が人柱にされた過去があるなど、誰も予想出来ないからだ。
「もう恨んでないよ、なんせそのおかげでまたここに帰ってこれたんだからね。それに・・・」
 と、俺をチラ見して来る。
 ・・・あっれぇ?俺なんかしたっけ?
「ぱーとなーも見つけられたしね」
 はにかみながら、そう答えた、瞬間。
「あらぁ、そうなのぉ?へぇ、随分と仲がいいのね」
 紫苑さんの目が変わった。
 とても冷たくそれでいて戦慄せざるを得ない。そんな目線が、錺に向けられていた。
「お、お姉ちゃん?」
 あまり見ない姉の姿にたじろぐ紫芳。今までの言動からしてみれば、性格的には紫苑さんは温厚な人物像なのだろう
「あぁ、紫苑がヤシロに目をつける前から一緒だからね。ありとあらゆるヤシロの好みを、君の知らないヤシロをボクは知っている」
「へぇ・・・言ってくれるじゃない」
 直後、両者の間にスパークが走る。何が起こっているのかさっぱりなので、偶然隣りに居た茉莉愛にアイコンタクトすると
「まぁ、女の欲目と妬心が化学反応起こした感じの状況だぜ」
 苦笑いで答えるが俺にとってはサッパリだ。
 なんせ交際経験、それ以前に同性の友達も数人しか居ないため色恋沙汰には多分疎い方だろう。
「あの、錺?だっけ?それと紫苑も騒ぐなら別の所でやって頂戴。」
 凛とした声に、二人の化学反応とやらが収まる。いや、収まったと言うよりも錺が何かに気づいたように玲華の方に顔を向ける
「・・・もしかして、"玲奈れいな"?」
 直後、茉莉愛の顔が強張った。当の玲華はやれやれと言った様子だ
「久しぶりだね!あれからもう16年か・・・元気にしていたかい!」
 まるで、旧友と会ったような感覚で抱き着く錺だが玲華からしてみれば誰?と言う雰囲気だ。
「あのねぇ、玲奈こと私の母は死んだわ。丁度、5年にね」
 母、と言うと父も居るのだろう・・・だが、只の直感だが玲華の両親について聞かない方がいい気がした。
「玲奈が・・・死んだ?」
 だが、当の錺は顔を青くしている
「そ・・・嘘・・・?」
「本当よ。私は生まれてこの方、母を見たことがないわ」
冷酷に真実を突きつける、あまり現実感が無いのか錺が必死になって否定する
「・・・そんな・・・あり得ない!!この世界は死すらも凌駕してきた!何もかも受け入れてくれていた!!なのに・・・なんで今になって!!」
「分からない」
「分からない!?自分身内の死因すら分からないなんて!!!そうだ!あの医師は!?矢幡の血筋なら加護が・・・」
「あの人の加護でもどうにもならなかったんだよ!」
 茉莉愛が激昂する。
 その滲んだ碧玉は雨水を大量に溜め込んで今にも零れそうだ
「・・・ねぇ茉莉愛。澪の治療でも治らなかったのよね」
「あぁ、だから病死でもない。かと言って私がその場所に行ったときには凶器は見当たらなかった、だから未だ誰も判っていないんだ」
 病死でもなく、殺人でもない。
 多分毒殺もあり得ない、なんせ矢幡さんの加護は浄化。
 ありとあらゆる異物を浄化するものらしい。
 ・・・そう考えるとあと一つしか無いけど。これは有り得ない。それじゃぁ
「ぺるそな?」
 ハッとしたようなそんな顔で紫芳が呟く、錺はそれを聞いて「なんでそんな事を今」と言いたげだ
「ぺるそなは、要はその人の一部分なんでしょ?なら可能じゃないの?」
「いや、不可能だと思う。だってそれだと本人すら気が付かない程似ていたって事だろ?オーラとかは似ていたけど、外見は全くの別物だった。夜半に忍び込んだとしても警備の一人や二人。付けている筈だ」
 もしも、玲華のお母さんがあの女医師のもとで入院していたらと考える。その病院の事を何も知らないが、さっきの話だと随分と女医師と玲華のお母さんは慕われているようだ。そんな人の職場と神社の管理者兼探偵を護るのは当然の事だろう。
「いいや、あそこには警備が張られていないぜ。なんせあそこの前にある竹林は言わば難攻不落の城壁。とにかくでっかい上に濃霧が掛かっている物だから道案内が無けりゃ通り抜ける事なんて大体は不可能だ」
「・・・茉莉愛なんでそれ知っているの?」
 まるで、夜半に潜りこんだような言い方だ
「え!?いや、そりゃ。まぁ、何だ・・・そのぉ」
 あ、目を逸らした!余程の事を・・・一体何したんだ茉莉愛よ。
「何がともあれ、外からの侵入は無理ね。あと可能となると、紫苑の能力[空間転移]位かしら」
「あぁ!俺をここに送ったときのあのあの穴か!」
「うふふ、えぇ、正解よ社クン。私は境界の管理人。故に境界を扱う能力を持っているわぁ」
 おっとりと首肯する。
 しかし、紫苑さんが奴らと裏で結託しているとなると怪しいが・・・多分無いだろう、なんせ俺みたいな境遇の奴を呼ぶような人だ。
「となると、境界を操れる紫苑のペルソナって訳ね。あの時敵対したのが、私と社のペルソナで良かったわ。視界の外を取られたら、致命傷もあり得るからね」
「待て、玲奈・・・いや、玲奈の娘。ヤシロのペルソナ?本当にそれが出たのか!?」
 さっきまでの鬱はまだ残っているようだが、大体は錺の中で整理がついたらしい。
 迫真に迫ったように、疑問を投げかける。
「え、えぇ見たわ。あと、その呼び方やめて頂戴。私は、玲華よ。」
 あまりにもその迫力にたじろぐ玲華だったが、すぐに調子が戻ったようで、何時ものクールキャラになった
「そうか・・・ならば玲華よ。本当にヤシロのペルソナと君のペルソナが一緒に出てきたんだね」
「あぁ、それは俺が保証する。その時一緒に居たからな」
 確認するような問に、割って答える。その回答に満足したか、「ありがとう」と言われた。
「しかし、これで解った。あとは、玲華。そのヤシロのペルソナは"周囲に紙片を纏っていたかい?"」
「えぇ、纏っていたわ。でもそんなこと聞いて何になるの?」
 紫芳が興味深そうに頷いて話を促してくる
「玲華お姉ちゃんの言うとおりだよ。その証言だけで何か分かるわけじゃない。」
「事情を知らないだろうから話すよ。それが、彼女の答えにもなるだろうしね」
 茉莉愛の方を横目に写しながら錺が説明を始める
「まず初めに、気付いているだろうけどヤシロは魔術師でも魔道士でもない、"媒体術師"だ。媒体術は、媒体を用いてその力を行使する。ヤシロの場合持っている本が媒体って事だ。そんで、力を行使するに当たって必要なのがさっき言った媒体と、術者の中にいる"別人の魂"、あと1つは"血"」
「血?」
 魔術ではあまり血を行使しないのか純粋な好奇心で充たした茉莉愛の緑の宝玉がこちらを覗いてくる
「血とは言っても、血統の事だ。先代の人間の中に媒体術師が1人居れば充分。そして、ヤシロはその名家と言うか"本家"の末裔なんだ」
「本家・・・てことは」
「次期当主は社になるって事ね・・・現実世界に帰ればの話だけど」
 玲華と紫芳がうわ言の様に呟く。
「え!?まじで!?俺の家本家とか分家がある様な所だったの!?」
「・・・自分の家の事なのに何も知らないのね」
 紫芳が呆れたように呟く。呆れられてもなぁ
「仕方ないさ、なんせ奴は末代まで秘密を隠そうとしていたんだ。知らないのも無理はない」
微笑みながら、有り難いフォローを貰うと
「なぁ、社。・・・やっぱり戻りたいか?」
「そうさなぁ・・・」
 悲しげな声で茉莉愛が問う。あの世界でやり残した事は沢山あるし、やりたい事、やれる事とあと相棒であるレフカメラと数少ない友達と家族を置いて来てここに呼ばれた。
 多くのものを捨てて来て数少ない刺激と安寧を求めて来たのだ。窮屈と退屈を編んだ籠で出来た世界より、この開放と未知と景色で満たされた世界を望む事が今の俺が、ここにいるために力を使う理由になる。
「いや、戻らないよ。俺はこれからはこの世界で生きていく。あんな鳥籠よりもここは心地いいからな」
「そうか・・・なら良かった」
 その答えを聞いて、心なしかみんなが笑顔になった気がした。
 うん、やっぱり笑顔は可愛い!!













「話を戻すよ、ヤシロのペルソナは多分他のペルソナとは少し違うと思う。既存のペルソナは、オリジナルをその時そのまま映し出した物で弱体化はあっても強化は無いと思う。一方、玲華が言った事が本当なら今すぐにでも媒体とヤシロの強化を行わなければならない。」
「媒体の強化ってなんだ?」
 純粋に聞いてみる。媒体って強化出来たんだな、ソシャゲみたい。
「そうだね・・・簡単に言えばその空白の本に書き込むんだ。ただ、書き込めるのは術者では無く"聖霊"。媒体術師は本の中に封じた聖霊を扱って術を使うからね」
「ほへぇ、んでその聖霊ってどこに居るん?」
「"霊媒"と呼ばれる本や、パワースポットに行けば会える・・・けど。霊媒が今どこにあるか所在が分からないんだ」
「霊媒ってのはどんな形なんだ?」
「そうだね。霊媒は術者の媒体によって形を変えるから本が密集している所にあるかもしれない」
「了解。知り合いに貸本屋を営んでいる奴がいるんだ。多分あるかもしれない。」
 茉莉愛がない胸を張って答える。
 なんと言うか・・・子供っぽい事を最近わかってきた。精神的な面で。
「それじゃぁ、行きましょうか。貸本屋って言うとすずの所ね」
「スズ?」
基織 芒もとおり すずよぉ。人里で貸本屋を営んでいる女の子でぇ、知識豊富な文学少女と、言った所かしらぁ」
「なるほど、人物像は把握した。けど貸本屋って何するんだ?」
 あまり聞きなれない店の種類に疑問を抱く
「貸本屋ってのは本を一時的に貸して貰って返すまでの期間の長さによって料金を変える。貸出期間を超えずに返した場合はお金を取らない。」
 なるほど、DVDレンタルの本バージョンって事か
「外の世界には貸本屋は無いの?」
 紫芳が蜜柑を頬張りつつ聞いてくる
「あぁ、外・・・って言うか現実世界に貸本屋っていう概念自体無かったな」
「ふーん、なんで?」
「さぁ?値段の差じゃ無いか?」
 こちらの本の価格がどのくらいなのかは知らないが、予想だとあまり現実世界とは違いはないと思うけど、機械技術の問題なのかと、心中で唸っている。
「どのくらいなんだ?外の世界の本の値段って」
「ん?普通に誰でも買える金額だけど?」
 その言葉を聞いて疑問を投げかけた紫芳と茉莉愛、ついでに玲華が信じられないような顔をしている
「・・・やっぱり文化の違いなのか」
 忘れ去られた者たちが集う世界の中で現実世界の文化の違いをどうこう言うのは何だか違う気がする。
「とと、また脱線した。社のペルソナが紙片を纏わせていたのならそれは媒体術を半分は理解している状態でペルソナを作り出さなければならない。つまり」
「アイツは未来の俺の・・・」
「正解だ、ヤシロ。となると必然的に敵の親方はヤシロや媒体術師の事に理解があり、かつ時空の転移が可能となる」
「・・・相当厄介じゃないの」
 呻くように玲華が呟く、その頬には一筋の汗が流れていた。
「もしかしたら、私のペルソナもいるかも」
 挙手し、思いついた様に呟く。
 錺がどうぞ続きをと言わんばかりに小さな蒼玉を見つめる。
「私の能力は[時空編纂]、制限と代償が大きいから使わないけど過去や未来を覗いたり、実際に行くこともできる」
 あまり、説明慣れしていないのか緊張して頬も真っ赤だが、充分事はやりきったのか錺が納得したような顔つきになると同時に安心した様にリラックスした姿勢を取った。
「なるほど、これで奴さん等のロジックは解った。あとは目的だ。これは現状どうにもならない。なにせペルソナは話せない。私の声にノイズが掛かっているのはもとはこの世界に存在するはずがないからだ。それでも話せるのは媒体のおかげなんだよ」
「そう考えると・・・奴らの親方は媒体を所持していない可能性があるって事だな」
「あぁ、そういえば君は・・・」
「私は霧醒 茉莉愛。霧醒 亜里沙きりさめ ありさの娘って言ったほうがわかりやすいか」
 すると、見るからに嫌っそうな顔をして茉莉愛から一歩下がる
「ハジメマシテ、マリアサン」
『何か昔にあったのか?』
 テレパシーで話しかける。思念出できた存在だからこそ、こう言う芸当ができて便利だ。
『・・・ちょっと、ね。あの人はなんて言うかうん。同性愛者だったんだよ。事ある毎に私に抱きついて来て大変だった・・・けど』
『・・・けど?』
『あの人は・・・ボクがここに居たときに海外に行ったんだ。だから、今どこにいるかわかんないけど多分他の女の子捕まえてデレデレしているんじゃないかな』
 そこには、古き温かい彼の時を懐かしむ気持ちの他にも迷惑そうな気持ちもある。
 或いはそれに隠れていて俺が気づかない何かしらの物を抱えた顔をしていた。
『元気だといいな』
『・・・あぁ』
「母から色々聞いているぜ。家の馬鹿な母親が迷惑掛けたようで・・・」
 と、茉莉愛が申し訳なさそうに畏まる
「いや、 別にいいさ。なんだかんだで病床にいたボクにお土産話をしてくれたからね。楽しかったから大丈夫。」
 錺がそう答えると茉莉愛は、ホッとしたような微笑を浮かべた
「それじゃぁ、ペルソナって一体どうやって出来ているんだ?」
 挙手し、質問を述べる。
 俺が聞きたいのは製造方法だ。対処を考えるためにもそこは重要だし、大抵敵の目的もそこら辺に関わってきそうだ。
 その意図を感じ取ったのか錺が顎に手を置き考える。他の皆も思い思いに考えていた
「んー・・・ん?」
「どうした!?なんか思いあたりが・・・」
「あぁ、たしかに有る・・・けど」
 言い淀む茉莉愛に詰め寄るが確信が無さ気だ
「・・・あぁなるほど、茉莉愛言いたい事は何となく解ったわ、確かにあの人のペルソナなら可能ね」
 幼馴染の考えていた事に検討がついたのか納得したような声が巫女の口から零れ落ちた。それに思い当たった様子で紫芳が声をあげる
「もしかして・・・"アリスさん"の事?」
「あぁ、あの人形遣いの子ね。確かにあの娘のペルソナならば可能ね」
 神妙そうにそう、紫苑は応える。アリスと言えばあの童話に出てくるアリスだろうか、或いは・・・
「マーガレト家・・・」
 意味は知らないが、するりと口から零れ出た。
 途端胸の中で"ナニカ"が丸々消えた様な感覚が起るが特に不快感は無かった。
 ただ、とても名残惜しい物がどこかで燻っている。そんな俺を見て女の勘と言う奴でも働いたのであろう紫芳が、少し重たげな声を俺にかけた
「なんか・・・嫌なことでもあったの?」
「いいや、なんでも」
 と気丈に応えるがなおも疑わしげな目線を送られる「何でもないっば」と努めて明るくするがまだ晴れないのか少し視線が重たげだが、一応何かしらの形で納得したのだろう「まぁ、いっか」と残して山のようにある蜜柑に再び手を伸ばした。

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