いつか夢見た夢の跡

佐々木篠

第五話 出会いの物語

【???・???】

「・・・ここ何処?」
 いつの間にか、違う場所に来たらしい俺は・・・・・・とりあえず
 状況を整理する。
「えーと、ここ何処だよ。確か俺は気を失ったんだよな、そんでこんな本だらけの場所に」
 白んだ世界に本棚だけが並ぶ儚い場所。だけど・・・
「ラノベとかあるかな?」
 手を気持ち悪い位わしゃわしゃと動かして欲望に満ちていた。それ位に俺は本が好きだった。愛してさえいる。
 もともと陰キャ勢の俺には本は友達みたいなものだ。
 取り敢えず歩いてみる。
 そこはどう言う訳かあちらこちらに本が浮遊している。ぐるっと見回した所、階段らしき物は無く。絶壁の様にそそり立つ本棚と奥に小さな椅子が有る位だった。
 ふと、椅子の上に乗っている本に目が向いた。丁寧に設えた本に鍵が掛かって中を見ることは叶わなそうだ。ちくせう!
 と思ったら、手に取った瞬間錠前が弾けるようにその場に落ちた。
 不思議な事に落ちた錠前は砂のように消えていった。取り敢えず中を見てみると
「なんじゃ、こりゃ。」
 白紙だった。不審に思い本の名を見てみると
「『幻想の先に見た故郷』?厨二臭ムンムンだな・・・えぇと、著者はと・・・『辿月 千遥せんづき ちはる』?何で何も書いていないのに著者と題名が明白なんだ?・・・わけがわからないよ」
 でもまぁここが夢では無い事はなんとなく悟った。
 感覚がハッキリしている。これを夢と言うのなら現実そのものが夢である。と言う位はっきりしている
「さて、んじゃ帰り方を考え・・・!?」
 振り返るとさっきまで大きな道だった場所に巨大な本棚と椅子があった。
 そこには儚げな銀髪碧眼の少女。いや、幼女がいた。
 も一度振りかって見るとそこに椅子と巨大な本棚しかなかった場所には大きな道が・・・まるで
『"構造が反転しているみたい"・・・かな?』
 と少々ノイズが入った幼い声が椅子に腰掛けた幼女から発せられた事に気づき身構える。
『・・・怖い顔をしないでくれ、ボクは敵じゃない。むしろ仲間さ』
「・・・根拠は?」
『根拠なんて無価値。空想の判断材料を信頼するなんて愚の骨頂。ヤシロ、君ならまず泳がせる。もしくは身の内を晒させるかして相手を判断する。そうだっただろう?』
「・・・よくご存知で」
『勿論さ。只、今は違う判断の仕方になったようだね、残念だ。』
「・・・どこまで掴んでいる?」
『"全部"。君のことなら何でも知っている。紫苑が知らない君の事も知っている』
「紫苑さんの事・・・何で知っている?」
『そりゃ知っているとも。だってあの娘は・・・っとこれ以上はネタバレだね』
「おい!それ有耶無耶にされたらモヤモヤする奴!」
 煮え切らない程に疑念が湧く。
 え、紫苑さんってホント何者?ぬっと音もなく現れるし。
「ってか何で俺の事知ってるって言える?ホント、君に会ったのはこれで初めてだ」
『まぁ確かにそうだね。"会ったのは"初めてだ、ただ・・・"自覚していないしヤシロ自身が望まない"ただそれだけの事』
「どう言うこっちゃ?」
 余計、頭が混乱してきた。それじゃぁまるで
「俺が多重人格の持ち主って事になるのか?」
 一応、警戒を解く。
 緊張状態で話しても疲れるだけだ
『お、やっと警戒を解いてくれたね。ボクは嬉しいよ!でまぁさっきの質問だけど大体当たり。人格ではないけど、端的に言うと"ボクはヤシロで、ヤシロはボク"』
 席を立って、こっこっと歩く。
『同じ存在の中で共に過ごしている。"ペルソナ"って聞いた事ある・・・と言うかさっき話していたよね。意味は概念的同質系統のイレギュラー。多重人格。そして・・・』
 立ち止まり、こちらを振り向く。
 そして告げた。
 彼女と、敵の存在の核心を。
『"具現化した自身の感情"』
「・・・っ!?」
『そう、ボクは奴らと同じ存在。だけど、観念的な差がある。ボクは人の希望等のぷらすの感情で出来ているなら、奴らはまいなすの感情で出来ている。』
「・・・なるほど、それを知らせる為にここへ呼び出したのか?」
『それだけじゃ無いし、第一ここへ来たのは君の無意識が望んだ事であってボクは受け入れただけだよ』
「俺が無意識に望んだ事?」
『そうだよ、ヤシロは一度願った筈だ。"力が欲しい"と』
「まぁそうだけど。それって修行とかする必要は・・・・・・」
『おいおい、何言っているんだいみすたー。ヤシロはこちらに来たイレギュラーだぜ?ちーとよろしくな力をポンっと与えるに決まっているだろう』
 幼女は往年のアクションスター風に言った。
 この子にアメリカンなノリは似合わないと思った。
「・・・このノリやりたいが為にそのキャラ作っただろ」
『おぉ、メタイメタイ』
「・・・と、そいやさ一つ聞いていいかい?」
『なんだい?』
「この"辿月 千遥"って一体どう言う人―――――」
 言葉の途中に幼女の目つきが変わった。
 厳しい目、と言うよりこれ以上先を聞いたらいけない気がした。
「いや、何でもない。忘れてくれ。」
『・・・ヤシロは"聖灰星戦"って知っているかい?』
「いや、知らん」
 なにその、Fa○e。セイバーとかアーチャーとか出そう。
『・・・そうかい、チハルについては君自身が調べてくれ。・・・その本』
「ん?あぁ返すよ」
『いや、いい。本のタイトルだけ教えてくれ』
「"幻想の先にある故郷"だけど」
『そっか、ではそのままあちらに戻れ。そこの大きな道が帰り道まっしぐらだ』
 さっきまでの厳しめな雰囲気はどこへやらそこには信頼に満ちた少しだけ寂しげな碧玉がこちらをじっと見据え、送り出す。

【???・社が去った後】

 輪郭が薄い手を組む。佇む様に。
『ボクの名前。言えばよかったかなぁ』
 死にかけた自分に一定の器を与えてくれた一族の末代に、面と向かって自らの名前を言う機会を見失ったのは割と悲しい。
『・・・ボクの名は"辿月 錺せんづき かざり"、辿月 千遥の義理の妹』
 一人、うわ言のように呟く。
 正直今でも姉とは思っていないが、関係上は事実姉妹となっていた。
『ヤシロ、ボクらは出会うべくして出会ったんだ。
神裂家は隠された"媒体術師"の名家。魂に埒外の存在を最初に作り出した"神裂灰花典弘心かんざきかいかのりひろのしん"の末裔で、ボクは継がれる魂。君の先祖の代からボクは君を待っていたんだ・・・君が作り出したこの埒外の世界。名前くらいボクがつけていいかな?』
 確認した訳でもない、だけど確かに風は声になって聞こえた。
 [カッコよくしろよ]
 と。
『ありがとう、名前はもう決まっているから。大丈夫、厨ニ病っぽくカッコイイ感じになったと思うよ』
 唱える。風と共に。掠れた、酷く耳障りな声。
 だけどヤシロは優しくて何も言わない。
 でも、この世代を通して来たこの信頼は、永遠だから。
 たとえ、見た目が違ってもボクは君だから
 いま、伝えよう。この先の物語へ。





 際限亡き架空の智識ノットリミットノーレッジ













 風に乗って、あの子の・・・錺の声が聞こえる。
「ノットリミットノーレッジ・・・かっけぇや」
 無限の知識、無限の書物。
 その名を冠するにふさわしい場所だ!
「所で、どっかで聞いたことある気がするんだよなぁ、錺の声って・・・・・・どこだったかなぁ・・・・・・?」
 思い出せずうーーん、と唸ってみても思い出せないものは思い出せない。
「ま、いっか!」
 思考停止だろうがどうでも良い。
 これからは、この先の物語を書き綴ろう!
 俺らの物語を!!

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