花に願いを
第16話
「……くそっ」
自分の足を見て、事実を受け入れた竜太郎は悔しそうに下を向く。コロノはそんな彼を見つめながら、自分の顔を撫でる。そこには既に赤い鎖が戻っていた。
「フィオーレ、あと何分?」
「ん……あと一分やな」
「分かった」
時計を確認して言ったフィオーレに頷き、ゆっくりと竜太郎の元へ近づいた。竜太郎は受け入れた様に下を向いたまま悔しそうに唇を噛む。
「動かないで」
「たりめーだ。もう覚悟は出来てる。好きなようにしろ」
両手の力を抜いて、何をされても構わないと言いたげに立っている竜太郎をコロノは静かに見つめている。
何もしないままフィオーレの言った一分が過ぎた。
「そこまで! 勝者、夜空 竜太郎!」
「……あ?」
勝敗の結果を聞いて、拍子の抜けた顔でコロノとフィオーレを見比べる。周りで見ていたガンタタも大半のギルドメンバーもあっけにとられた顔でフィオーレを見ている。
「いやぁ、コロノ君は理解が早くて助かるわぁ……」
「ちょ、ちょっと待てよ。なんだそりゃ? 俺は確かに円の外から出ているから俺の負けだろ。んな同情の様な勝利いらねぇよ」
竜太郎は勝ったにもかかわらず、納得いかないという顔でフィオーレに詰め寄る。そんな竜太郎の怒った顔を涼しげな顔でフィオーレは受け流し、
「うち、いつ君が円から出たら負けだなんて言った?」
「は? ……あ?」
記憶をたどり、フィオーレが言わんとしている事を理解した竜太郎はまた拍子抜けた顔になる。
「言ってないで? うちが言ったのは三十分立っていろって言ったんや。円が云々は君が勝手に言ったルールであり、コロノ君の勝利条件の一つってだけやろ? 君の敗北条件じゃないで?」
「ちょっ、ちょっと待てや。そしたらお前、二人共勝ちって事になるじゃねぇか」
「……もし君を負けにしたところで、わざわざ地球代表を倒してまでここに来た君が、素直に母国に帰るわけないやろ? って言っても、ここから一番近いギルドに行くって言っても一週間はかかるで?」
「一週間くらいなら余裕で耐えられると思うし、そんな勝利を望んでねぇよ。勝ったのはあいつだろ」
「ふむ、アルカリアの一日は地球の二倍って言われてるんや。つまり二週間、何も持たずに行く事になるんやけど……行くつもりなん? それに、その恰好で次のギルドに行って、入れてもらえると思ってるん?」
「そ、それは……」
いつの間にか、次のギルドではギルド申請の許可が出ると思い込んでいた竜太郎は、冷や汗をかいて下を向く。その竜太郎の肩に手を置き、フィオーレは優しい笑顔を顔に浮かべ、言い聞かせる様に言った。
「この誘いに乗っかるのが一番利口やで? 大丈夫や、君に嫌な思いをさせるつもりは無いから、むしろ君みたいな人が来てくれるのを待っていたんや」
「俺みたいな……?」
「魔法を体にうけてもほとんど無傷の耐久力、冷静な分析力は是非ともうちに欲しい人材やね。なんならあれや、君の出す条件を一つ飲むから入ってくれって、そう言いたくなるレベルやな。どうや? 考えてみてくれんかな?」
フィオーレの言葉を聞いて、竜太郎はフィオーレの手を払う。払った手をポケットに入れると、今度は二人のやり取りを唖然として見ていたガンタタに顔を向ける。
「……おい肉だるま」
「てめっ、誰がにくだ――」
「悪かったな」
「る……あ?」
腕を振り上げたガンタタは、意外な竜太郎の言葉に感情と共にどこへぶつけるべきか分からなくなった拳を静かに下へと下ろす。
「フィオーレとか言ったよな。じゃあ一つだけ条件がある」
「ほぉ、言ってみ?」
「見る限り、そこの猫女とマクフェイルとかいう奴は仲間なんだろ? じゃあ、俺もその仲間に入れてくれよ。誰が何と言おうと俺は負けだ。だから、俺はそいつの下で強くなってやる」
「……やって。コロノ君に任せるで?」
「……分かった。歓迎する」
「おう、足は引っ張らねぇからよ」
こうして、地球からの不法入国者こと桜田竜太郎は、コロノ達の仲間となった。
自分の足を見て、事実を受け入れた竜太郎は悔しそうに下を向く。コロノはそんな彼を見つめながら、自分の顔を撫でる。そこには既に赤い鎖が戻っていた。
「フィオーレ、あと何分?」
「ん……あと一分やな」
「分かった」
時計を確認して言ったフィオーレに頷き、ゆっくりと竜太郎の元へ近づいた。竜太郎は受け入れた様に下を向いたまま悔しそうに唇を噛む。
「動かないで」
「たりめーだ。もう覚悟は出来てる。好きなようにしろ」
両手の力を抜いて、何をされても構わないと言いたげに立っている竜太郎をコロノは静かに見つめている。
何もしないままフィオーレの言った一分が過ぎた。
「そこまで! 勝者、夜空 竜太郎!」
「……あ?」
勝敗の結果を聞いて、拍子の抜けた顔でコロノとフィオーレを見比べる。周りで見ていたガンタタも大半のギルドメンバーもあっけにとられた顔でフィオーレを見ている。
「いやぁ、コロノ君は理解が早くて助かるわぁ……」
「ちょ、ちょっと待てよ。なんだそりゃ? 俺は確かに円の外から出ているから俺の負けだろ。んな同情の様な勝利いらねぇよ」
竜太郎は勝ったにもかかわらず、納得いかないという顔でフィオーレに詰め寄る。そんな竜太郎の怒った顔を涼しげな顔でフィオーレは受け流し、
「うち、いつ君が円から出たら負けだなんて言った?」
「は? ……あ?」
記憶をたどり、フィオーレが言わんとしている事を理解した竜太郎はまた拍子抜けた顔になる。
「言ってないで? うちが言ったのは三十分立っていろって言ったんや。円が云々は君が勝手に言ったルールであり、コロノ君の勝利条件の一つってだけやろ? 君の敗北条件じゃないで?」
「ちょっ、ちょっと待てや。そしたらお前、二人共勝ちって事になるじゃねぇか」
「……もし君を負けにしたところで、わざわざ地球代表を倒してまでここに来た君が、素直に母国に帰るわけないやろ? って言っても、ここから一番近いギルドに行くって言っても一週間はかかるで?」
「一週間くらいなら余裕で耐えられると思うし、そんな勝利を望んでねぇよ。勝ったのはあいつだろ」
「ふむ、アルカリアの一日は地球の二倍って言われてるんや。つまり二週間、何も持たずに行く事になるんやけど……行くつもりなん? それに、その恰好で次のギルドに行って、入れてもらえると思ってるん?」
「そ、それは……」
いつの間にか、次のギルドではギルド申請の許可が出ると思い込んでいた竜太郎は、冷や汗をかいて下を向く。その竜太郎の肩に手を置き、フィオーレは優しい笑顔を顔に浮かべ、言い聞かせる様に言った。
「この誘いに乗っかるのが一番利口やで? 大丈夫や、君に嫌な思いをさせるつもりは無いから、むしろ君みたいな人が来てくれるのを待っていたんや」
「俺みたいな……?」
「魔法を体にうけてもほとんど無傷の耐久力、冷静な分析力は是非ともうちに欲しい人材やね。なんならあれや、君の出す条件を一つ飲むから入ってくれって、そう言いたくなるレベルやな。どうや? 考えてみてくれんかな?」
フィオーレの言葉を聞いて、竜太郎はフィオーレの手を払う。払った手をポケットに入れると、今度は二人のやり取りを唖然として見ていたガンタタに顔を向ける。
「……おい肉だるま」
「てめっ、誰がにくだ――」
「悪かったな」
「る……あ?」
腕を振り上げたガンタタは、意外な竜太郎の言葉に感情と共にどこへぶつけるべきか分からなくなった拳を静かに下へと下ろす。
「フィオーレとか言ったよな。じゃあ一つだけ条件がある」
「ほぉ、言ってみ?」
「見る限り、そこの猫女とマクフェイルとかいう奴は仲間なんだろ? じゃあ、俺もその仲間に入れてくれよ。誰が何と言おうと俺は負けだ。だから、俺はそいつの下で強くなってやる」
「……やって。コロノ君に任せるで?」
「……分かった。歓迎する」
「おう、足は引っ張らねぇからよ」
こうして、地球からの不法入国者こと桜田竜太郎は、コロノ達の仲間となった。
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