花に願いを
第14話
「まずは君の名前から聞かせてもらおうと思うんやけど、名前は何ていうん?」
不法入国者と思われる男は、一度ゆっくり呼吸をしてから、髪型を整える。
「俺の名前は夜空 竜太郎だ」
「ふむ、名前を確認してもやはりこちらのギルド、テクスタには君が来るいう連絡は届いてへんな。君、嘘ついたやろ?」
フィオーレの顔は笑顔ではあるが、その場にいる全員の体を固める威圧感はそこにはあった。竜太郎もその威圧感に怯んで口を閉じる。
「大丈夫や。君がどんな理由でここに来たのかは知らんけど、今すぐ地球に返すことはないよ」
「……確かに、地球代表ってのは嘘だ。地球代表の奴を殴り飛ばして俺が変わった」
「てめぇ、やっぱり嘘ついたんじゃねーか!」
竜太郎の言葉に、ガンタタが殴りかかろうとするが、軽猫とコロノが掴みかかってそれを止める。
「いい判断や軽猫ちゃん、コロノ君。そのままガンタタを止めといて。さて、竜太郎。君は検査ゲートというのを知ってるか?」
「あぁ?んだそりゃ?」
「ふむ、検査ゲートの存在を知らんって事は、そのまま通ってきたんやな。検査ゲートというのは、そこを通る者が代表として言い切れる何か特別なものを持っているか審査するゲートで、もしも代表としての能力が無いと判断された場合、その場で殺されるようになっているんや」
「あぁ、もしかして飛行機乗る前に通されたあれか? 金属探知機だと思ってたぜ」
「ところで、その珍妙な恰好について聞いてもええかな? 例えば、さっきガンタタと頭をぶつけ合っていたせいで崩れてるその頭とかな」
「ん……」
言われて竜太郎は、頭に手を当てて髪型を直し始める。竜太郎が直しているその頭はリーゼント、服は何も文字が掛かれていない真っ白な特攻服と地球でいう不良の様な恰好をしていた。アルカリアでは見ない恰好なのだろう、コロノもフィオーレも興味深そうに竜太郎の説明を待っていた。
「まぁ、なんて言うんだろうな……。約束の品っていうか、託された物っていうか……そんなところだ」
「託されたという言い方をするところを見ると、君の用事は未来花やろ?」
「まぁな、何でも願いが叶うっていう嘘くせぇもんだが、騙されてもいいと思ってよ」
「ま、それはええんやけど、何でここにしたん? ギルドなんてここじゃなくてもあるやろ?」
「別にどこでも良かったんだけどな、飛行機降りてから適当に歩いていたらここが見つかったからここで飯でも食おうかと思ってきただけだ。ところがなんだ、でかい図体の割に箒持って玄関掃除している老いぼれクソジジィが俺に掴みかかってくるじゃねぇか」
当然その挑発するような言い方にガンタタがまた暴れそうになるが、コロノの魔法で体の自由が奪われて地面に膝をついた。軽猫がこそこそとフィオーレの背後に移動する。
「まぁ、地球代表を募集したのは確かな事だしいいんだけどな。でも、はいそうですかとこのまま君をギルドの一員と認めるわけにはいかへんのはわかるよな?」
「まぁな、ギルドだってわかった時点でその覚悟は出来てる。で? 俺は一体何をやらされるんだ? 別にここに入れるならなんだってやるけど、やるからには難しいものにしてくれなきゃこっちから願い下げだぜ?」
その言葉にフィオーレは満足そうに頷いた。そして後ろの軽猫を振り返り、何かを企んでいる笑いを顔に浮かべた。何をされるのか予想もできない軽猫は、思わず恐怖に目を閉じる。
その首に鋭い手刀の衝撃が撃ち込まれ、軽猫は意識を失った。
「てめぇ! 何してんだ!?」
軽が倒れるのを、手刀とは逆の手で止めたフィオーレを見てコロノではなく竜太郎が声を荒げて問いただす。コロノはというと、フィオーレの意図を理解しようとしているのか、静かに軽猫とフィオーレの二人を見つめている。
「おや、コロノ君より先に竜太郎、君が怒るのは意外やな。まぁまぁ、この子が起きてるとちょっとあかんから少し寝ててもらうだけや。さて竜太郎、今から君はあそこにいるコロノ=マクフェイルことコロノ君と戦ってもらう」
「あいつと戦って勝てとでもいうつもりか?」
「いやいや、勝てるわけないやろ? 別に勝てとは言わんよ。ただそうやな……あまりに逃げ続けてもつまらんから、逃げるのは無しや。三十分間でええから、コロノ君とまともに戦ってみ? それでまだ立っている事が出来れば正式なメンバーとして認める。これでええかな?」
「面白れぇ……」
竜太郎は満足そうにうなずくと、つま先を引きずって少し大きな円を描いた。目測五メートル程の円だ。その中に日本の線を引いて、片方の線の脇に立つ。
「この円から出たら負けってルールでやってやる。三十分くらい余裕で耐えてやるよ」
やる気満々な竜太郎に、コロノは思わずため息をついてフィオーレの顔を見た。まるで、自分がギブアップでいいからという目だ。
しかし、その救いを求めるコロノの視線に対して首を横に振ったフィオーレは、軽猫を背負って言った。
「コロノ君、これが入団試験の三つ目とするわ。三十分以内にこの竜太郎に参ったと言わせるか、戦闘不能にする、もしくはその円から外に出す。このどれかを満たせなかった場合、試験失格とする」
「……はぁ、わかった」
うんざりした顔で、竜太郎の書いた線の内側に入って向き合う。お互いがお互いを警戒して静かになった時、フィオーレがスッと手を挙げて開戦宣言をした。
「それでは、始め!」
不法入国者と思われる男は、一度ゆっくり呼吸をしてから、髪型を整える。
「俺の名前は夜空 竜太郎だ」
「ふむ、名前を確認してもやはりこちらのギルド、テクスタには君が来るいう連絡は届いてへんな。君、嘘ついたやろ?」
フィオーレの顔は笑顔ではあるが、その場にいる全員の体を固める威圧感はそこにはあった。竜太郎もその威圧感に怯んで口を閉じる。
「大丈夫や。君がどんな理由でここに来たのかは知らんけど、今すぐ地球に返すことはないよ」
「……確かに、地球代表ってのは嘘だ。地球代表の奴を殴り飛ばして俺が変わった」
「てめぇ、やっぱり嘘ついたんじゃねーか!」
竜太郎の言葉に、ガンタタが殴りかかろうとするが、軽猫とコロノが掴みかかってそれを止める。
「いい判断や軽猫ちゃん、コロノ君。そのままガンタタを止めといて。さて、竜太郎。君は検査ゲートというのを知ってるか?」
「あぁ?んだそりゃ?」
「ふむ、検査ゲートの存在を知らんって事は、そのまま通ってきたんやな。検査ゲートというのは、そこを通る者が代表として言い切れる何か特別なものを持っているか審査するゲートで、もしも代表としての能力が無いと判断された場合、その場で殺されるようになっているんや」
「あぁ、もしかして飛行機乗る前に通されたあれか? 金属探知機だと思ってたぜ」
「ところで、その珍妙な恰好について聞いてもええかな? 例えば、さっきガンタタと頭をぶつけ合っていたせいで崩れてるその頭とかな」
「ん……」
言われて竜太郎は、頭に手を当てて髪型を直し始める。竜太郎が直しているその頭はリーゼント、服は何も文字が掛かれていない真っ白な特攻服と地球でいう不良の様な恰好をしていた。アルカリアでは見ない恰好なのだろう、コロノもフィオーレも興味深そうに竜太郎の説明を待っていた。
「まぁ、なんて言うんだろうな……。約束の品っていうか、託された物っていうか……そんなところだ」
「託されたという言い方をするところを見ると、君の用事は未来花やろ?」
「まぁな、何でも願いが叶うっていう嘘くせぇもんだが、騙されてもいいと思ってよ」
「ま、それはええんやけど、何でここにしたん? ギルドなんてここじゃなくてもあるやろ?」
「別にどこでも良かったんだけどな、飛行機降りてから適当に歩いていたらここが見つかったからここで飯でも食おうかと思ってきただけだ。ところがなんだ、でかい図体の割に箒持って玄関掃除している老いぼれクソジジィが俺に掴みかかってくるじゃねぇか」
当然その挑発するような言い方にガンタタがまた暴れそうになるが、コロノの魔法で体の自由が奪われて地面に膝をついた。軽猫がこそこそとフィオーレの背後に移動する。
「まぁ、地球代表を募集したのは確かな事だしいいんだけどな。でも、はいそうですかとこのまま君をギルドの一員と認めるわけにはいかへんのはわかるよな?」
「まぁな、ギルドだってわかった時点でその覚悟は出来てる。で? 俺は一体何をやらされるんだ? 別にここに入れるならなんだってやるけど、やるからには難しいものにしてくれなきゃこっちから願い下げだぜ?」
その言葉にフィオーレは満足そうに頷いた。そして後ろの軽猫を振り返り、何かを企んでいる笑いを顔に浮かべた。何をされるのか予想もできない軽猫は、思わず恐怖に目を閉じる。
その首に鋭い手刀の衝撃が撃ち込まれ、軽猫は意識を失った。
「てめぇ! 何してんだ!?」
軽が倒れるのを、手刀とは逆の手で止めたフィオーレを見てコロノではなく竜太郎が声を荒げて問いただす。コロノはというと、フィオーレの意図を理解しようとしているのか、静かに軽猫とフィオーレの二人を見つめている。
「おや、コロノ君より先に竜太郎、君が怒るのは意外やな。まぁまぁ、この子が起きてるとちょっとあかんから少し寝ててもらうだけや。さて竜太郎、今から君はあそこにいるコロノ=マクフェイルことコロノ君と戦ってもらう」
「あいつと戦って勝てとでもいうつもりか?」
「いやいや、勝てるわけないやろ? 別に勝てとは言わんよ。ただそうやな……あまりに逃げ続けてもつまらんから、逃げるのは無しや。三十分間でええから、コロノ君とまともに戦ってみ? それでまだ立っている事が出来れば正式なメンバーとして認める。これでええかな?」
「面白れぇ……」
竜太郎は満足そうにうなずくと、つま先を引きずって少し大きな円を描いた。目測五メートル程の円だ。その中に日本の線を引いて、片方の線の脇に立つ。
「この円から出たら負けってルールでやってやる。三十分くらい余裕で耐えてやるよ」
やる気満々な竜太郎に、コロノは思わずため息をついてフィオーレの顔を見た。まるで、自分がギブアップでいいからという目だ。
しかし、その救いを求めるコロノの視線に対して首を横に振ったフィオーレは、軽猫を背負って言った。
「コロノ君、これが入団試験の三つ目とするわ。三十分以内にこの竜太郎に参ったと言わせるか、戦闘不能にする、もしくはその円から外に出す。このどれかを満たせなかった場合、試験失格とする」
「……はぁ、わかった」
うんざりした顔で、竜太郎の書いた線の内側に入って向き合う。お互いがお互いを警戒して静かになった時、フィオーレがスッと手を挙げて開戦宣言をした。
「それでは、始め!」
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